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聖女じゃなくて嫁召喚?

聖女じゃなくて嫁召喚?−11−

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……

私が、呑気に2頭に癒してもらっているうちに朝食の支度が終わっていた。堅パンと紅茶。質素なメニューから察するに、私が居なければ、食事を取る予定はなかったのではないだろうか、足でまといになっているようで申し訳ない。

堅パンに四苦八苦していたら、レオンハルト様がパンを一口大にちぎってくれた。
一生懸命、口を動かすが、堅パンは強敵で、顎が痛くなってきた。
それでも、せっかく時間を割いてまで用意してくれたのだ。お残しは許されません。

視線を感じて見ると、レオンハルト様がじっと私を見ていた。恥ずかしい。パンを食べられなくなるから、見ないで欲しい。
レオンハルト様達は、もう食べ終えて紅茶をゆっくりと飲んでいる。
絵になる。
うっとりだ。
ハッ!
うっとりしている場合じゃないよ。急いで食べないと。

「焦らずとも大丈夫だ。ゆっくり食べなさい」
「この感じだと、聖女様のご加護は広範囲に影響しているようですね」
「この分なら、領地もだいぶ落ち着いているだろう」
「残してきた者達だけでも、なんとかなりそうですね」
「ああ、召喚の儀は反対だが、聖女様には感謝しかない」

なんだか、よくわからないけれど、ユイちゃんの聖女の力で、レオンハルト様達の懸念していたことが心配なくなってきていて、それで、二人もゆっくり腰を落ち着けているようだった。ユイちゃんすごいね。二人の話を聞きながら、ともかく、堅パンと格闘していた。

「エンゾ・・・今回、召還された聖女様はお二人で、アン様は魔力がないということでお預かりすることになったんだ」
「…。」
「それからな、アン様のお名前が破滅の魔女と同じだ」
「そうですか。フィリオンに恩を売っているつもりなんでしょうか。勇者の時といい、アン様といい、人を見る目がないですね」

なんだかエンゾさんから、黒いものが溢れているような?笑顔だけど黒い。なんだか、怖い。黒エンゾの時は、逆らわないのが良さそう。
それよりも、私の名前かぁ。二人には本当の名前を教えてもいいような気もしたけれど、それは剣兄の許可が下りてからかなと、ちょっと後ろめたく感じながら、黙っていた。

「アン様。名前を聞かれたら、お名前だけを言うように約束してもらえないだろうか」
「それがいいですね。お小さいからそれでも問題ないでしょう」

二人がそう言うので、とりあえず、コクンと頷いてみたけど、私、いつまでこの姿でいるんだろう。なんとなく、そんなに長くこの姿でいるような気はしないんだけど。
このことを、どうやってレオンハルト様に話したら良いのか。



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