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聖女じゃなくて嫁召喚?

聖女じゃなくて嫁召喚?−10−

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……

突然、抱きしめられて目が覚めた。レオンハルト様が泣いている。どうしたのだろう。

「レオンハルト様。どうしましたか?」
「申し訳ない。起こしてしまったか」

振り返ってレオンハルト様の顔を見たけど、泣いていたわけではなさそうでホッとした。
周りを見回すと、景色が一変していた。寝る前はチラホラと家が建っていたが、今は家ひとつ見当たらず、背丈の短い草が生い茂る草原が続いていた。所々に巨木が見える。
やがて、昇ってきた日が草原を照らし草木が金色に染まる。

「綺麗」

勝手に呼ばれてきた地ではあるけれど、こんなに綺麗な風景をみることが出来るのはいいね。チョコもラルも黄金色に輝いていて格好いいし、エンゾさんもキリッとして格好いい。そして、一番格好いいだろう人が後ろにいる。なんだかイケメンを従えているみたいで、剣兄に自慢したい気分。

「レオンハルト様。もしかして、一晩中、走られていたのですか?」
「お疲れになられましたか?」
「いえ。無理な体勢を続けさせてしまいましたよね。ごめんなさい」
「ご心配には及びません。それにアン様のお陰で疲れもありませんので」
「私の?」

レオンハルト様は何を言っているのだろうと思ったとき
ぐぉぉぉ!!と、巨大な音がする。
ぎゃーーー。私の腹の虫、もう少し、お上品に鳴こうよ!
恥ずかしくて、顔を真っ赤にしていると、隣から、ゲラゲラと笑っている人がいる。エンゾめ!本人が恥ずかしがっているんだから、ここはスルーするところでしょうが。乙女心のわからないヤツだ。あ、乙女じゃなくて幼女だったっけ。

「アン様もお元気なようで何よりです」

笑いながらエンゾさんが言うので、ギッと睨んだら、また、お腹が抗議をあげた。そんなことよりも飯くれって言っているよ。このお腹のヤツは。
すると、レオンハルト様もつられて、クックと笑い出した。
恥ずかしすぎて、穴があったら入りたい。

「ちょうど、泉が近くにありますから、そこで朝食にしましょう」

レオンハルト様は道をそれ、草原の中に入っていく。いつの間にか、黄金に輝いていた風景も緑色に戻っていた。また、レオンハルト様と見ることが出来るといいな。
そんなことを思っていたら、前方の方で、朝日に反射した光がキラっと輝く。

「この世界は光で溢れているんですね。とっても綺麗」

レオンハルト様はマントを敷くと、私をチョコから降ろしてくれる。さりげなく出来ちゃう所が凄い。

「チョコ、ラル、一晩中ありがとう」

私が手を差し出すと、2頭は頭を下げてアホ毛を差し出してくるので、ポリポリとかいた後、モフりたくなったので、ぎゅっとすると、2頭の羽に包まれてしまった。モフモフ、フワフワで幸せです。


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