上 下
38 / 55
聖女じゃなくて嫁召喚?

聖女じゃなくて嫁召喚?−10−

しおりを挟む
……

突然、抱きしめられて目が覚めた。レオンハルト様が泣いている。どうしたのだろう。

「レオンハルト様。どうしましたか?」
「申し訳ない。起こしてしまったか」

振り返ってレオンハルト様の顔を見たけど、泣いていたわけではなさそうでホッとした。
周りを見回すと、景色が一変していた。寝る前はチラホラと家が建っていたが、今は家ひとつ見当たらず、背丈の短い草が生い茂る草原が続いていた。所々に巨木が見える。
やがて、昇ってきた日が草原を照らし草木が金色に染まる。

「綺麗」

勝手に呼ばれてきた地ではあるけれど、こんなに綺麗な風景をみることが出来るのはいいね。チョコもラルも黄金色に輝いていて格好いいし、エンゾさんもキリッとして格好いい。そして、一番格好いいだろう人が後ろにいる。なんだかイケメンを従えているみたいで、剣兄に自慢したい気分。

「レオンハルト様。もしかして、一晩中、走られていたのですか?」
「お疲れになられましたか?」
「いえ。無理な体勢を続けさせてしまいましたよね。ごめんなさい」
「ご心配には及びません。それにアン様のお陰で疲れもありませんので」
「私の?」

レオンハルト様は何を言っているのだろうと思ったとき
ぐぉぉぉ!!と、巨大な音がする。
ぎゃーーー。私の腹の虫、もう少し、お上品に鳴こうよ!
恥ずかしくて、顔を真っ赤にしていると、隣から、ゲラゲラと笑っている人がいる。エンゾめ!本人が恥ずかしがっているんだから、ここはスルーするところでしょうが。乙女心のわからないヤツだ。あ、乙女じゃなくて幼女だったっけ。

「アン様もお元気なようで何よりです」

笑いながらエンゾさんが言うので、ギッと睨んだら、また、お腹が抗議をあげた。そんなことよりも飯くれって言っているよ。このお腹のヤツは。
すると、レオンハルト様もつられて、クックと笑い出した。
恥ずかしすぎて、穴があったら入りたい。

「ちょうど、泉が近くにありますから、そこで朝食にしましょう」

レオンハルト様は道をそれ、草原の中に入っていく。いつの間にか、黄金に輝いていた風景も緑色に戻っていた。また、レオンハルト様と見ることが出来るといいな。
そんなことを思っていたら、前方の方で、朝日に反射した光がキラっと輝く。

「この世界は光で溢れているんですね。とっても綺麗」

レオンハルト様はマントを敷くと、私をチョコから降ろしてくれる。さりげなく出来ちゃう所が凄い。

「チョコ、ラル、一晩中ありがとう」

私が手を差し出すと、2頭は頭を下げてアホ毛を差し出してくるので、ポリポリとかいた後、モフりたくなったので、ぎゅっとすると、2頭の羽に包まれてしまった。モフモフ、フワフワで幸せです。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

貧乏神と呼ばれて虐げられていた私でしたが、お屋敷を追い出されたあとは幼馴染のお兄様に溺愛されています

柚木ゆず
恋愛
「シャーリィっ、なにもかもお前のせいだ! この貧乏神め!!」  私には生まれつき周りの金運を下げてしまう体質があるとされ、とても裕福だったフェルティール子爵家の総資産を3分の1にしてしまった元凶と言われ続けました。  その体質にお父様達が気付いた8歳の時から――10年前から私の日常は一変し、物置部屋が自室となって社交界にも出してもらえず……。ついには今日、一切の悪影響がなく家族の縁を切れるタイミングになるや、私はお屋敷から追い出されてしまいました。  ですが、そんな私に―― 「大丈夫、何も心配はいらない。俺と一緒に暮らそう」  ワズリエア子爵家の、ノラン様。大好きな幼馴染のお兄様が、手を差し伸べてくださったのでした。

双子の妹に全てを奪われた令嬢は訳あり公爵様と幸せになる

甘糖むい
恋愛
同じ父と母から生まれたシャルルとミシャル。 誰もがそっくりだと言った2人は瞳の色が違う以外全て瓜二つだった。 シャルルは父の青と、母の金を混ぜたエメラルドのような瞳を、ミシャルは誰とも違う黒色。 ミシャルの目の色は異端とされ、彼女は家族からも使用人からも嫌がられてしまう。 どれだけ勉強しても刺繍に打ち込んでも全ての功績はシャルルのものに。 婚約者のエドウィンも初めこそミシャルに優しかったが、シャルルの方へと心動かされ、婚約者をシャルルに変更したいと望む。 何もかもが嫌になったミシャルは身体ひとつで呪われた屋敷と噂の公爵邸に足を踏み入れ、 行方知れずになってしまう。 ミシャルが行方不明となって死んだと思っていたシャルル達の前にミシャルが再び姿を現した時。 ミシャルはシャルルが欲しいものを全て手にして幸せそうに微笑んでいた。 このお話は、嫌われていた令嬢が新しい場所でたくさんの人に愛され、幸せになって妹と家族を見返すお話。

ヤケになってドレスを脱いだら、なんだかえらい事になりました

杜野秋人
恋愛
「そなたとの婚約、今この場をもって破棄してくれる!」 王族専用の壇上から、立太子間近と言われる第一王子が、声高にそう叫んだ。それを、第一王子の婚約者アレクシアは黙って聞いていた。 第一王子は次々と、アレクシアの不行跡や不品行をあげつらい、容姿をけなし、彼女を責める。傍らに呼び寄せたアレクシアの異母妹が訴えるままに、鵜呑みにして信じ込んだのだろう。 確かに婚約してからの5年間、第一王子とは一度も会わなかったし手紙や贈り物のやり取りもしなかった。だがそれは「させてもらえなかった」が正しい。全ては母が死んだ後に乗り込んできた後妻と、その娘である異母妹の仕組んだことで、父がそれを許可したからこそそんな事がまかり通ったのだということに、第一王子は気付かないらしい。 唯一の味方だと信じていた第一王子までも、アレクシアの味方ではなくなった。 もう味方はいない。 誰への義理もない。 ならば、もうどうにでもなればいい。 アレクシアはスッと背筋を伸ばした。 そうして彼女が次に取った行動に、第一王子は驚愕することになる⸺! ◆虐げられてるドアマットヒロインって、見たら分かるじゃんね?って作品が最近多いので便乗してみました(笑)。 ◆虐待を窺わせる描写が少しだけあるのでR15で。 ◆ざまぁは二段階。いわゆるおまいう系のざまぁを含みます。 ◆全8話、最終話だけ少し長めです。 恋愛は後半で、メインディッシュはざまぁでどうぞ。 ◆片手間で書いたんで、主要人物以外の固有名詞はありません。どこの国とも設定してないんで悪しからず。 ◆この作品はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆過去作のヒロインと本作主人公の名前が丸被りしてたので、名前を変更しています。(2024/09/03) ◆9/2、HOTランキング11→7位!ありがとうございます! 9/3、HOTランキング5位→3位!ありがとうございます!

ヒロインのシスコンお兄様は、悪役令嬢を溺愛してはいけません!

あきのみどり
恋愛
【ヒロイン溺愛のシスコンお兄様(予定)×悪役令嬢(予定)】 小説の悪役令嬢に転生した令嬢グステルは、自分がいずれヒロインを陥れ、失敗し、獄死する運命であることを知っていた。 その運命から逃れるべく、九つの時に家出して平穏に生きていたが。 ある日彼女のもとへ、その運命に引き戻そうとする青年がやってきた。 その青年が、ヒロインを溺愛する彼女の兄、自分の天敵たる男だと知りグステルは怯えるが、彼はなぜかグステルにぜんぜん冷たくない。それどころか彼女のもとへ日参し、大事なはずの妹も蔑ろにしはじめて──。 優しいはずのヒロインにもひがまれ、さらに実家にはグステルの偽者も現れて物語は次第に思ってもみなかった方向へ。 運命を変えようとした悪役令嬢予定者グステルと、そんな彼女にうっかりシスコンの運命を変えられてしまった次期侯爵の想定外ラブコメ。 ※話数は多いですが、1話1話は短め。ちょこちょこ更新中です! ●3月9日19時 37の続きのエピソードを一つ飛ばしてしまっていたので、38話目を追加し、38話として投稿していた『ラーラ・ハンナバルト①』を『39』として投稿し直しましたm(_ _)m なろうさんにも同作品を投稿中です。

実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」 氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。 「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」 ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。 成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。

【完結】騎士団長の旦那様は小さくて年下な私がお好みではないようです

大森 樹
恋愛
貧乏令嬢のヴィヴィアンヌと公爵家の嫡男で騎士団長のランドルフは、お互いの親の思惑によって結婚が決まった。 「俺は子どもみたいな女は好きではない」 ヴィヴィアンヌは十八歳で、ランドルフは三十歳。 ヴィヴィアンヌは背が低く、ランドルフは背が高い。 ヴィヴィアンヌは貧乏で、ランドルフは金持ち。 何もかもが違う二人。彼の好みの女性とは真逆のヴィヴィアンヌだったが、お金の恩があるためなんとか彼の妻になろうと奮闘する。そんな中ランドルフはぶっきらぼうで冷たいが、とろこどころに優しさを見せてきて……!? 貧乏令嬢×不器用な騎士の年の差ラブストーリーです。必ずハッピーエンドにします。

処理中です...