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聖女じゃなくて嫁召喚?

聖女じゃなくて嫁召喚?−5−

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……

支度が整い私はチョコに乗せられ、後ろにレオンハルト様が跨る。そして自分が着ているマントの中に私を入れてくれる。

「寒くはないですか」
「暖かいです」

シャツの上にガウン、さらにレオンハルト様に包まれたらポッカポカです。すっごく心地いいです。
お兄様も、いつもこんな感じだったな。お兄様の体温を感じていると安心できるんだ。
!!
そうだ!
レオンハルト様に密着してる!!
幼児じゃなきゃ鼻血出るシーンだよコレ。
それを意識して、急に心臓がドキドキしてきた。
どうやらレオンハルト様に気づかれてしまったみたいで心配されてしまった。

「高くて怖いですか?」
「大丈夫です。平気です」
「もし、気分が悪くなったら言ってください」
「はい」
「急いで領内に戻らないとならなくて。馬に慣れていないのに申し訳ない」

いろいろと気遣って貰ったのだけれど、初めて乗るのに全然怖くないし、まるで乗り方を知っているように自然とチョコの動きに合わせることが出来た。
なんだろう。夢で乗り方を覚えてきたのだろうか。
それよりも、どちらかと言うと、レオンハルト様のイケボが頭上からして、それがくすぐったくて仕方がない。

レオンハルト様は私の様子を見ながら、少しずつ速さを上げていく。街を抜けたところでレオンハルト様に声をかけられる。

「もっとスピードを上げても平気だろうか」
「はい」

ビュンビュンと風の音が空気を切り裂いていく。どんどんと風景が飛ぶように変わっていく。チョコの揺れが心地よくて、目が閉じかかってきた。

何だか疲れた。
寝てもいいかな。
そう言えば、向こうの世界から数えて丸一日くらい起きているんじゃないだろうか。元々、徹夜とかには苦手なので、こんなに起きていたことはなかったな。
うん。寝よう。疲れて具合が悪くなったら迷惑をかけちゃうもんね。そうしよう。
もぞもぞと、顔もマントの中に入れて、寝やすい体制を探していると、レオンハルト様は私を抱え直してくれた。
お兄様と遠出をした時と同じ体勢だったから安心して直ぐに瞼が合わさり夢の中に引き込まれてしまった。

フワリと暖かいものが私を包んでくる。
大好きなお兄様の気配。お兄様の側はいつも暖かくて心地よくて·····
「おやすみなさい。お兄様」

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