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聖女じゃなくて嫁召喚?

聖女じゃなくて嫁召喚?−4−

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……

「アン様、申し訳ございません。普段は大人しい子なのですが」

レオンハルト様やエンゾさんのことを忘れて、モフモフを満喫していると、レオンハルト様が駆け寄ってきて、チョコを私から離そうとする。何故かチョコはそれを嫌がってレオンハルト様を蹴り飛ばす始末だ。いいの?ご主人を蹴り飛ばして。ほら、レオンハルト様が愛馬に裏切られて唖然としてるじゃない。
チョコの首にそっと手を伸ばすと、チョコが私の手が届く位置まで顔を下げてくれた。夢の中のチョコが好きな場所、アホ毛の根元をポリポリと 掻いてあげた。すると、うれしそうに目を細める。
よかった、これで落ち着いてくれそう。

「私、アンっていうの。仲良くしてね」

すると、チョコはちょっと不思議そうな顔をして私を見ながら首をかしげたけれど、またアホ毛を掻いてもらおうと頭を下げてくる。

「驚きましたね。知らない人に懐かないチョコがここまで懐くなんて。それじゃ、私はラルを連れてきますね」

チョコが落ち着いたのを見て、エンゾさんはレオンハルト様に声をかけると、行ってしまう。レオンハルト様はというと、チョコが満足するまで待つつもりらしく、少し離れたところで私たちのことを見守ってくれていた。

「チョコ、そろそろ鞍を付けたいのだがいいだろうか」

エンゾさんは、もう一頭の馬をつれてきていて、鞍をレオンハルト様に渡すと自分の馬の支度を始めていた。
レオンハルト様に声をかけられたチョコは、私の方を振り返る。

「私も一緒に乗せて下さいね」

チョコにお願いすると、嬉しそうに一鳴きすると、今度は大人しくレオンハルト様に鞍を付けてもらっていた。エンゾさんの方が先に支度が終わったようなので、エンゾさんの愛馬ラルにも同行させてもらう許可を取った。それを見てエンゾさんが聞いてくる。

「アン様は馬の扱いをご存じなんですか」
「いえ、挨拶した方がいいような気がしただけです」
「面白い方ですね。姿は4~5歳の子なのに、話し方も仕草も大人のものですし」
「…。」

エンゾさんの冷ややかな視線を受けながら、なんて答えて良いモノなのかわからず、思わず黙り込んでしまった。話し方を幼児のようにするのは抵抗があって、変えなかったことは失敗だったかもしれない。
馬と仲良くする方法は、夢の中のお兄様に教わっていた。夢の中で、お兄様とチョコに乗って野山を駆けたりもした。
あれ?夢の中の事だよね。夢の中のお兄様が大人になったらきっとこんな風になっているんだろうなというレオンハルト様に、お兄様の愛馬と同じ名前のチョコ。偶然だよね・・・。それとも私は夢の中の世界に召喚されたのかな?

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