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……

痛すぎるし、動くと他の人とぶつかりそうだし、無様な姿をさらしてしまっている。
小さなざわつきが聞こえてくる。今期売り出す予定の布地にカイお姉様のデザイン、一流のパートナー達で目だっていたのが悪かった。
悔しい。


痛みからなのか、悔しさからなのか、目頭が熱くなってきた。
泣くな。

このままでは公爵家のお父様達とカイ様に迷惑をかけてしまう。
考えろ。

ざわめきがやけに大きく聞こえてくる。
笑え。


突然、フワリと足元に暖かい風が舞ったかと思うと、足が床から離れ、続きのダンスが始まった。
目の前には青い目の青年が手を取ってくれていた。
魔法?足が浮いていて、ステップを踏む必要もないため痛みが少し和らぐ。

「曲が終わるまで続けられますか?」

優しく声をかけてくれる。途中で止めるわけにはいかないので、好意に甘えて最後までお願いすることにした。

「はい。ありがとうございます。助かりました」

ようやく曲が終わり、カイお姉様の所まで連れて行って貰おうとすると、あっという間に横抱きされていて、青年が足速に会場を後にする。

え、
これは夢にまで見たお姫様抱っこと言うやつではと、ちょっと現実逃避しそうになったところでハッとして声をかける「あの、どこへ」

「大丈夫ですよ。お連れの方もすぐに来ますから」

随分、奥まった部屋にまで運ばれてしまったような気がするんだけど。大丈夫なのかな?痛みが酷くなってきたし、考えることを放棄した。

気づくとソファにそっと下ろされていた。

「医者を呼んで来ますから」
そう青年が言ってドアに手をかけると、バンとドアが開いてカイお姉様が入ってきた。

「助けてくれてありがとう。後は大丈夫だから、出ていってくれるかしら」

青年はカイお姉様に押されお辞儀(ボウ・アンド・スクレープ)をすると出ていってしまう。

「あ、お名前を聞くのを忘れてしまいました」
「いいのよ。名前なんか知らなくても。勝手に部屋に連れ込んだんだから」
「助けてくれて、お医者様を呼びに行ってくれようとしていたんですよ」
「それでも、エリカちゃんに悪い噂が立つような真似をしたからダメ」

「それよりもごめん。あそこまでダメな男だったなんて。ダンスを受けるんじゃなかったわ」
「私もびっくり。ホント助けて貰って良かった」


青年が呼んでくれたのだろう。医者がすぐにやって来て、骨には異常はないと思うけど、しばらく安静にと言われ、足を固定されてしまった。思っていたよりも重症だったみたい。

店に帰っても世話をしてくれる人もいないし、どうしようかと思っていたら、王家の使いの人がやって来て、治るまで王宮に滞在するように言われてしまい、カイお姉様もそうしなさいと言って、さっさとお姫様抱っこをされて他の部屋へ運ばれてしまった。
居心地が悪いから帰りたいって言ってはダメかな?

なんだか、物凄い高待遇を受けていて、困ってしまった。
黒バラ姫様が連れて帰ると言っているのと、治るまでここでと言い争っているのを聞きながら、薬が聞いたのか寝てしまう、結構図太いエリカ17歳だった。


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