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そのうちエマお姉様とマーガレットお姉様がやって来て、婚約者様を紹介して頂いた。
「エリ嬢、私とも1曲どうですか?」と、マーガレットお姉様の婚約者が言うと「やめておきなさいよ。カイ様のダンスを相手出来るような子と踊ったらメッキが剥げるわよ」なんて辛辣なことをマーガレットお姉様に言われてシュンとしていた。

「うわー、エリちゃん、何このダンスメンバー、ダンスバトルでもするの?」エマお姉様がカイお姉様から私のダンスパートナー名簿を見て口元を扇子で隠した。
さらにエマお姉様の婚約者様が、うわー、申し込まなくて良かったって言ってる。

「がっぽがっぽ儲けるためには、エリちゃんに頑張ってドレスを見せつけて貰わないと。ダンスが超一流な男しか受けてないわよ」
ひーー。何それ、聞いてないよ。エマお姉様達に助けを求めると「まぁ頑張って」と励まされただけだった。

それじゃ楽しんでと、お姉様達は行ってしまう。婚約の挨拶で今日は忙しいらしいのだ。
そしてエリカとカイがまだ入口付近で粘っているのは、今日、立場上、どうしても挨拶しておかなければならない人がいるから。それは黒バラ姫様の命令。

子爵家なので、なかなかやってこない。もう、疲れたよ。と、零しそうになっていると、足元で「にゃー」と鳴く声がした。
「お猫様も飽きちゃいました?私もなんです」と、かがんでお猫様を撫でていると「エリ、来たわよ」
とカイお姉様が言うので、入口を見やると、2年ぶりに見る夫とアン様と義父母。アン様やっぱり胸が大きいな。と思いつつ、どうやって声をかけようかと悩んでいたら

「あら、あなた、どこかでお会いしたことあるかしら?」と、アン様が声をかけてきた。瞬間、場の空気がサッと凍る。下のものから声をかけてはマナー違反なのだ。
さすがに子爵家の面々はオドオドしている。エリカの隣にいる人が誰なのか知っているからだ。
でも、これは天の助けだ。これに乗じて挨拶をしてしまおう。

「カイ様の遠縁のエリと申します」
スっと夫に手を差し出すと、夫は妻だと気づきもせず真っ赤になりながら挨拶をしてくる。

多分、あれだ、カイお姉様の遠縁とはいえ上位貴族から声をかけられて喜んでるんだろう。
どれくらいの人達が自分たち夫婦の事を知っているのかは知らないけれど、知っている人なら、それなりに察した事だろう。
別にどうでも良いんだけど、所詮、一般人だしって言ったら黒バラ姫様に仕事に影響するのよって言われたから頑張って立っているだけ。

とりあえず、目的は終わったので、その場を去ろうとしたら「もしよろしければ1曲」などと言ってくる。アレか?アン様が声をかけても怒られなかったし、自分も挨拶させて貰えたしと、調子に乗ってるのか?

断ろうと思ったら「そうね7曲目はまだ空いてるから御相手しても大丈夫よ」とカイお姉様が言う。えーやだよってカイお姉様を見たら睨まれたので「はい。カイお姉様がそういうのなら」と、受けるしかない。

「わ、私も」と、アン様がカイお姉様に申し込んでくる。この人、綺麗なのにホント残念、本当に貴族なの?って言うか、貴族なのにカイお姉様が何者かご存知ないの?目はカイお姉様をロックオン?してるし。肉食系女子って怖い。

「あー。ごめんなさいね。私はこの子としか踊らないのよ」と、カイお姉様がものすごく睨んで答えてた。
カイお姉様、子爵家の皆さんに挨拶すらしていないのに、凄いなー。怖いもの知らずって凄い。

カイお姉様の冷気に当てられ、子爵夫婦が慌てて、その場からアン様を連れ出したのは正解だよね。どんどんバーン家の評判が悪くなる一方だったし、引き際は重要。
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