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エマお姉様のお茶会に参加出来るお姉様方は、それだけで箔が付くので、良縁に恵まれて嫁いで行かれたり、新しいお姉様が参加されたりしている。
エマお姉様にとっても、このお茶会は人脈作りなんだろうなと察せられた。
「エリカちゃん、バーン家は今年、幼妻をデビューさせるってホントですの?」
支店長の部屋で、試作のお菓子をつまみながらマーガレットお姉様が聞いてくる。
「なんですって?今頃、エリカちゃんの可愛らしさに気づいたとでも言うんですの?」と、エマお姉様がすかさず聞いてくる。
お二人のお姉様は、ちょくちょく、ここで油を売っていらっしゃる。試作のお菓子やお茶会の評価をして下さる有難い方々だ。
お礼は新製品を一番にお届けということになっている。こちらとしては、インフルエンサーのお二人に真っ先にお渡しした時の効果が絶大なので、願ったり叶ったりなので、とっても有難い話である。
「黒バラ姫様が王家に私の事を話してくれた時、とりあえず、バーン家が私をデビューさせるつもりがないのか分かったら、黒バラ姫様の話に乗るって事になったみたいで」
それで、王家からバーン家にデビューしていない妻をデビューさせなさいって連絡が入ったのだ。
さすがに王家の意向を無視することは出来ず、すっかりエリカの事を忘れていたバーン家の面々は大慌てで物置小屋に駆けつけると、当然、そこはもぬけの殻。
勝手に実家に帰ったのだと文句を言いに乗り込んできたところ、食べ物も与えられず、何も無い物置小屋に放置しておいて、発見するのが遅かったら死んでいた。慰謝料を請求したいくらいだとお父様に言われて、エリカの安否確認もせず帰って行ったらしい。
「ホント、どうしようもない人達というか」
子爵家のしかも平民出の妻のデビューのことなんか王家が気にするわけなないのにね。何かあるって普通なら勘ぐるよね。ホントどうしようもない人達なんだからとため息が出る。
「そしたら、アン様が、私が代わりに出るとかって騒いだらしくって」
「「えつ!王家を騙すの?」」
二人同時に試作品に伸びていた手が止まる。
「まー、そこは常識があったというか」
エリカの事は重い病気のため実家で療養中のため妻は欠席するが、知り合いの男爵家の娘を連れていくみたいな返事を出して許可されたらしい。
「凄いわね。今シーズン最初の由緒ある王家の舞踏会に愛人って」
「そして本妻は上席からそれを眺めるのよ。茶番でしょ」
なんの罰ゲームだとため息を着いていると、お姉様方はふふふっと笑っている。この笑いが怖い。
社交界開催を宣言するもっとも重要な王家開催の舞踏会は、夫婦揃っての参加が決まりだ。あまりにも当たり前のことで、他の人と参加するなんて、誰も考えない。どんなに仮面夫婦であろうとも、この日ばかりは仲良がよさそうに参加するのだ。
そして、今年デビューする娘がいる家は、社交界へ参加する許可を王から得、また去年、婚約や結婚した人達は王への挨拶となるわけだ。
例外もある。デビューする歳の娘の後見を家格が上の者がする場合だ。それは、この娘が、後見の家にとって大切な人物であることを示すためのものだ。
つまり、人々にとって、カイお姉様の遠縁の娘という立場は、婚家に見捨てられた可哀想な幼妻を公爵夫人が見兼ねて後見になっていると案に示しているものだ。王姉の公爵夫人が後見ということは王家がそれを了承していることに他ならない。
そして、既に、事業成功し女実業家として渡り歩いているエリカの後ろに公爵夫人が居ても不思議ではないという評価でもあった。舞踏会で、大々的に公表することによって、若いくせにとか、女のくせにとかと侮られていたエリカの評判を塗り替えてもくれる。ああ、お父様とお兄様のニンマリ顔が目に浮かぶ。
しかし、アン様の場合は違う。エマお姉様やマーガレットお姉様達の布教活動?によりエリカが白い結婚をしていること、バーン家にアン様が愛人として本宅に居ることは暗黙の了解だった。知らないのは当の本人たちだけである。
「なんでもアン様はデビューしていなかったらしくて、私が王家から出席命令が届いたことが気に入らなかったらしくて、ごねたらしいの」
さすがに子爵夫妻は大反対したらしいのだが、したくない結婚をしたから、今の生活が出来ているんだという旗印と、家格が上の家が後見するのはOKという暗黙のルールを回曲した息子が押し通したらしい。
よく気位の高い子爵夫妻が、アン様を伴って出席するのを許したなー。と、驚いた。王家主催の舞踏会に愛人を伴うことの意味くらい子爵夫妻も理解出来るだろうにと不思議に思っていると
「そうそう、バーン家に初孫が生まれるかもっていう噂もあるわよ」
と、ニコニコしながらマーガレットお姉様が教えてくれた。
!!
それか、あの人達がアン様を認めた理由は!!
その情報は無かった。
新情報にびっくりするエリカ17歳だった。
エマお姉様のお茶会に参加出来るお姉様方は、それだけで箔が付くので、良縁に恵まれて嫁いで行かれたり、新しいお姉様が参加されたりしている。
エマお姉様にとっても、このお茶会は人脈作りなんだろうなと察せられた。
「エリカちゃん、バーン家は今年、幼妻をデビューさせるってホントですの?」
支店長の部屋で、試作のお菓子をつまみながらマーガレットお姉様が聞いてくる。
「なんですって?今頃、エリカちゃんの可愛らしさに気づいたとでも言うんですの?」と、エマお姉様がすかさず聞いてくる。
お二人のお姉様は、ちょくちょく、ここで油を売っていらっしゃる。試作のお菓子やお茶会の評価をして下さる有難い方々だ。
お礼は新製品を一番にお届けということになっている。こちらとしては、インフルエンサーのお二人に真っ先にお渡しした時の効果が絶大なので、願ったり叶ったりなので、とっても有難い話である。
「黒バラ姫様が王家に私の事を話してくれた時、とりあえず、バーン家が私をデビューさせるつもりがないのか分かったら、黒バラ姫様の話に乗るって事になったみたいで」
それで、王家からバーン家にデビューしていない妻をデビューさせなさいって連絡が入ったのだ。
さすがに王家の意向を無視することは出来ず、すっかりエリカの事を忘れていたバーン家の面々は大慌てで物置小屋に駆けつけると、当然、そこはもぬけの殻。
勝手に実家に帰ったのだと文句を言いに乗り込んできたところ、食べ物も与えられず、何も無い物置小屋に放置しておいて、発見するのが遅かったら死んでいた。慰謝料を請求したいくらいだとお父様に言われて、エリカの安否確認もせず帰って行ったらしい。
「ホント、どうしようもない人達というか」
子爵家のしかも平民出の妻のデビューのことなんか王家が気にするわけなないのにね。何かあるって普通なら勘ぐるよね。ホントどうしようもない人達なんだからとため息が出る。
「そしたら、アン様が、私が代わりに出るとかって騒いだらしくって」
「「えつ!王家を騙すの?」」
二人同時に試作品に伸びていた手が止まる。
「まー、そこは常識があったというか」
エリカの事は重い病気のため実家で療養中のため妻は欠席するが、知り合いの男爵家の娘を連れていくみたいな返事を出して許可されたらしい。
「凄いわね。今シーズン最初の由緒ある王家の舞踏会に愛人って」
「そして本妻は上席からそれを眺めるのよ。茶番でしょ」
なんの罰ゲームだとため息を着いていると、お姉様方はふふふっと笑っている。この笑いが怖い。
社交界開催を宣言するもっとも重要な王家開催の舞踏会は、夫婦揃っての参加が決まりだ。あまりにも当たり前のことで、他の人と参加するなんて、誰も考えない。どんなに仮面夫婦であろうとも、この日ばかりは仲良がよさそうに参加するのだ。
そして、今年デビューする娘がいる家は、社交界へ参加する許可を王から得、また去年、婚約や結婚した人達は王への挨拶となるわけだ。
例外もある。デビューする歳の娘の後見を家格が上の者がする場合だ。それは、この娘が、後見の家にとって大切な人物であることを示すためのものだ。
つまり、人々にとって、カイお姉様の遠縁の娘という立場は、婚家に見捨てられた可哀想な幼妻を公爵夫人が見兼ねて後見になっていると案に示しているものだ。王姉の公爵夫人が後見ということは王家がそれを了承していることに他ならない。
そして、既に、事業成功し女実業家として渡り歩いているエリカの後ろに公爵夫人が居ても不思議ではないという評価でもあった。舞踏会で、大々的に公表することによって、若いくせにとか、女のくせにとかと侮られていたエリカの評判を塗り替えてもくれる。ああ、お父様とお兄様のニンマリ顔が目に浮かぶ。
しかし、アン様の場合は違う。エマお姉様やマーガレットお姉様達の布教活動?によりエリカが白い結婚をしていること、バーン家にアン様が愛人として本宅に居ることは暗黙の了解だった。知らないのは当の本人たちだけである。
「なんでもアン様はデビューしていなかったらしくて、私が王家から出席命令が届いたことが気に入らなかったらしくて、ごねたらしいの」
さすがに子爵夫妻は大反対したらしいのだが、したくない結婚をしたから、今の生活が出来ているんだという旗印と、家格が上の家が後見するのはOKという暗黙のルールを回曲した息子が押し通したらしい。
よく気位の高い子爵夫妻が、アン様を伴って出席するのを許したなー。と、驚いた。王家主催の舞踏会に愛人を伴うことの意味くらい子爵夫妻も理解出来るだろうにと不思議に思っていると
「そうそう、バーン家に初孫が生まれるかもっていう噂もあるわよ」
と、ニコニコしながらマーガレットお姉様が教えてくれた。
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それか、あの人達がアン様を認めた理由は!!
その情報は無かった。
新情報にびっくりするエリカ17歳だった。
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