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……
「待ってたのよ~」
訪ねるなり、長身のイケメンのお兄様?にギュッと抱きしめられる熱烈歓迎を受けて目を白黒させているうちに、あれよあれよと採寸からデザイン画まで仕上がっていた。
「エリカちゃん、これでいいかしら?」
「うわぁ、ステキ。私が着こなせるでしょうか?」
「もちろんよ。私がエリカちゃんに似合うようにデザインしたんだもの」
「ありがとうございます。カイお姉様」
思わず言ってしまって、アッと口を抑えると、カイがとろけるような笑みで
「もう一度言って?」
「カイお姉様?」
「んーもう、ホント可愛い。あの、悪魔のようなルアンの妹とは思えないわぁー」
またもや、ギュッって抱きしめられ目を白黒させるエリカだったが、呼び方を間違わなかったことにホッともしていた。
「ねぇエリカちゃん、あのローズウォーターもいいんだけど、私が使うにはちょっと匂いが甘すぎるのよ。何か良いものはないかしら?」
「カイお姉様用のブレンドを考えてみますね」
カイお姉様とのファション女子トークは、マーガレットお姉様達とはまた違った楽しさがあった。
お互いに仕事の刺激をし合えるってすばらしいよ。そうだ、この前仕入れた布地とかカイお姉様の所に持ってきてみよう。きっと布地を生かしたデザインを考えて貰えるかもとか、もう、考えているだけでワクワクしてくる。
「エリカちゃんはデビューしないのかしら?」
「ないんじゃないかなー」
女の子の憧れ社交界のデビュー。これをしないと子爵家に嫁いでいても、世間的にはなかったことになってしまう。どんなに王からの結婚承認があったとしても。
だから、本来ならデビューしてから結婚になるわけなのだけれど、待っていられないくらい財政が破綻していたってことよねと、今なら分かる。
「ルアンが心配していてね。何とかならないかって相談されてて」
「お兄様が?」
「ええ、そう。それでねドレッジャーリー夫人に相談してみたのよ」
ドレッジャーリー夫人って公爵夫人よね。そんな雲の上の人に話したってどうしようもないと思うんだけど。なんだか怖い。
「エリカちゃんって、なんだかんだと強力なカードを引き当てるのよね」
「強力なカード?」
カイお姉様が何を言おうとしているのか、さっぱり分からない。
「最初はマーガレット嬢。そして今回はエマ嬢のお茶会。この2人のカードを引いたのは社交界の中では凄いことなのよ」
「お姉様達って、そんなに力がある方達だったんですか?」
「決まっているじゃない。私のデザインしたドレスを着こなせる子達なのよ」
可愛いものとか、美味しい甘いものとか、恋とか愛とか、そんなことが好きなお姉様達じゃなかったんだ。へー。イマイチよく分からない力関係なので適当に相槌を打っていると
「それでね夫人がエリカちゃんに会ってみたいって言っているのよ」
「えっ?ムリムリ、公爵夫人でしょー。無理ですって」
尻込みしていると
「エリカちゃん、人の出会いってその時にガって掴みとらないと二度と掴めなくなったりするのよ。特に有り得ないような人の場合は」
「公爵夫人がそれですね...分かりました。お会いしてみたいです」
「それじゃ今から行くわよ」
「えっ?」
カイお姉様に首根っこを掴まれて、あっという間に普段着のまま公爵夫人の前に立たされていたエリカ15歳だった。
「待ってたのよ~」
訪ねるなり、長身のイケメンのお兄様?にギュッと抱きしめられる熱烈歓迎を受けて目を白黒させているうちに、あれよあれよと採寸からデザイン画まで仕上がっていた。
「エリカちゃん、これでいいかしら?」
「うわぁ、ステキ。私が着こなせるでしょうか?」
「もちろんよ。私がエリカちゃんに似合うようにデザインしたんだもの」
「ありがとうございます。カイお姉様」
思わず言ってしまって、アッと口を抑えると、カイがとろけるような笑みで
「もう一度言って?」
「カイお姉様?」
「んーもう、ホント可愛い。あの、悪魔のようなルアンの妹とは思えないわぁー」
またもや、ギュッって抱きしめられ目を白黒させるエリカだったが、呼び方を間違わなかったことにホッともしていた。
「ねぇエリカちゃん、あのローズウォーターもいいんだけど、私が使うにはちょっと匂いが甘すぎるのよ。何か良いものはないかしら?」
「カイお姉様用のブレンドを考えてみますね」
カイお姉様とのファション女子トークは、マーガレットお姉様達とはまた違った楽しさがあった。
お互いに仕事の刺激をし合えるってすばらしいよ。そうだ、この前仕入れた布地とかカイお姉様の所に持ってきてみよう。きっと布地を生かしたデザインを考えて貰えるかもとか、もう、考えているだけでワクワクしてくる。
「エリカちゃんはデビューしないのかしら?」
「ないんじゃないかなー」
女の子の憧れ社交界のデビュー。これをしないと子爵家に嫁いでいても、世間的にはなかったことになってしまう。どんなに王からの結婚承認があったとしても。
だから、本来ならデビューしてから結婚になるわけなのだけれど、待っていられないくらい財政が破綻していたってことよねと、今なら分かる。
「ルアンが心配していてね。何とかならないかって相談されてて」
「お兄様が?」
「ええ、そう。それでねドレッジャーリー夫人に相談してみたのよ」
ドレッジャーリー夫人って公爵夫人よね。そんな雲の上の人に話したってどうしようもないと思うんだけど。なんだか怖い。
「エリカちゃんって、なんだかんだと強力なカードを引き当てるのよね」
「強力なカード?」
カイお姉様が何を言おうとしているのか、さっぱり分からない。
「最初はマーガレット嬢。そして今回はエマ嬢のお茶会。この2人のカードを引いたのは社交界の中では凄いことなのよ」
「お姉様達って、そんなに力がある方達だったんですか?」
「決まっているじゃない。私のデザインしたドレスを着こなせる子達なのよ」
可愛いものとか、美味しい甘いものとか、恋とか愛とか、そんなことが好きなお姉様達じゃなかったんだ。へー。イマイチよく分からない力関係なので適当に相槌を打っていると
「それでね夫人がエリカちゃんに会ってみたいって言っているのよ」
「えっ?ムリムリ、公爵夫人でしょー。無理ですって」
尻込みしていると
「エリカちゃん、人の出会いってその時にガって掴みとらないと二度と掴めなくなったりするのよ。特に有り得ないような人の場合は」
「公爵夫人がそれですね...分かりました。お会いしてみたいです」
「それじゃ今から行くわよ」
「えっ?」
カイお姉様に首根っこを掴まれて、あっという間に普段着のまま公爵夫人の前に立たされていたエリカ15歳だった。
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