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エリカが始めた事業は順調だった。元々、兄に相談しながら企画を進めていた事も良かったのだが、やはり貴族の客が増えていたのも良かったらしい。

ある日、いつものように店に商品を並べていると貴族のご令嬢が声をかけてきた。

「あなた、ここの娘ってホント?」

勝気そうな綺麗なお姉さんだななんて思いながら「はい」と返事をすると、ご令嬢は頭の先から足の先まで値踏みをするように見たあと、ニッコリと笑いかけてくる。なんだか知らないけど気に入られたようで良かったなどと思っていたら

「どうしてバーン家に嫁いだ貴方がこんな事をしているの?バーン家の人達は知っているの?」
と、詰め寄られた。

嫁として扱われていない存在を消された嫁だしと、すっかり開き直っていたエリカは、正直に説明する。

「そういうわけで、食べる分を稼がなくてはならなくなりまして。」
「まぁ、こんな可愛い子をほおっておくなんて」
なんだか同情されてしまったらしい。

「それよりお嬢様、こちら、新商品でございます」
と、新しく開発した化粧水のセールスをするエリカに、同情心からか試しもせず大量に購入しようとするお嬢様の勢いに負けそうになりながら、開封したら1~2週間くらいしか使えないことや、肌に合わないかもしれないのでサンプルで試してから買って欲しいと可愛くお願いしてみた。

とりあえずと、1滴自分の手に落としてお嬢様に差出した。
「あら?バラの香り?」
「はい。ようやくローズオイルの生産が出来るようになりました。まだ少量生産なのでお値段は高めなのですが」

お嬢様は、すっかりバラの香りが気に入ったらしく、化粧水に試供品を合わせて使えると説明したら、いつも使っている化粧水を購入してくれた。いつもは侍女が購入に来ていてくれたらしいけど、侍女が売り子がバーン家の嫁じゃないかと言っていたのを聞いて興味が出て直接エリカを見に来たらしい。気に入って貰えて良かったと思ったエリカだった。

「私はマーガレットよ。マーガレット・アルノー」
「マーガレット様...私はエリカ・バーンです」
「お姉様と呼んでやよろしくってよ」
「え?お姉様でございますか?」
さぁ、さぁ、呼びなさいという無言の圧力に負けてマーガレットお姉様と呼ぶと、お嬢様が嬉しそうにギュッと手を握りしめ「いいこと?何か困ったことがあったらお姉様に相談しなさい」それから敬語はなしと約束させられてしまった。

1週間後、マーガレットは友人達を連れて商品を買いに来てくれたので、さすがに貴族のご令嬢達を店先でもてなすわけにも行かないから屋敷内で接待しなさいと兄から忠告が入って反省した。順調すぎて、浮かれていたけど、まだまだ未熟者なんだと気を引き締めるエリカ15歳だった。
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