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結婚式は最悪だった。実際年上の夫は顔がいいだけのオッサンだし、なんだか男爵家のご令嬢を愛人にして本宅で暮らすっていう腐れたヤツだった。義父母もゴミを見るように睨んでいるし、離れの別宅で一人でくらせと言われた時はホッとした。

一応、貴族との婚姻が決まっまた時から、貴族のマナーは勉強したし、落ちぶれているらしい財政も立て直そうと意気込んで来たけど、必要だったのは持参金だけだったのかと笑ってしまった。

財政建て直し案をいそいそと考えて準備していた自分を冷たい目で見ていた父は無駄なことを馬鹿にしていたんだね。

離れとは言っても物置小屋のようなひと部屋だけの建物に案内され、どうやらこの家の人達は主人だけでなく、使用人も自分を歓迎していないことを悟ったエリカは、泣きたくなった。

政略だろうと、その後親しくなれたらと思っていた自分が惨めだった。しょせん平民の私が受け入れられるわけはなかったのだ。

泣くのは今日だけだ。
一人の暗い部屋で、思いっきり泣いていたうちにいつしか眠っていたらしく、目が覚めると朝だった。

現金なもので、こんな状況なのにお腹は空くんだなーと、笑ってしまうエリカだったが、昨日は緊張で何も食べていなかったし、式が終わったあとは、そのままここに閉じ込められたし、ここの人達は自分に無関心で、どうやら食事を出そうなんて思ってもいないらしいことに気づく。

昨日の態度から見るに、子爵達は、自分のことは使用人に任せたから、見えないところにいてくれれば、後はどうでもいいらしいし、使用人達は、言われた事以上のことをするつもりは一切ないのだろう。

「お腹すいたなー」

そんなことを言ったところで、目の前に食事が現れるわけもなく、残された道は二つだけ。子爵家の人にお願いするか、実家に泣きつくか。どっちも嫌だなと思うものの15の娘に出来ることなど何も無い。

この家にいる限り、未来は真っ暗だよねと、少しでも未来の選択を増やすには実家の方がまだマシと判断してからは早かった。

嫁入り道具も沢山持ってきたのに、それらはこの部屋にはない。唯一、洋服だけがところ狭しと置かれていたのだけが救い...なのかな?とフッと笑みがこぼれる。
自分の気に入ったデザインのドレスは、いくら新品と言えど愛人のお気に召さなかったというより、胸か?胸が入らなかったのか?と、思わず自分の胸を見て『いやいや、これから発達するのよ』と励ましてみた。

とりあえず、ウエディングドレスのままだったので、一番地味な服に着替えて、この物置から脱出することにする。

誰の関心もないというのは便利だなと思った。裏口からあっさりと出ることがてきて、かえって怖かった。
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