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第四章 胃瘻造設・胃の噴門部結索 手術
7/3 さらなる受難は見落としだと思う
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デンジャラスなD看護師に、規定の五倍の空気を突っ込まれて、リノが目を覚ました時、心拍が200を超えました。
このD看護師は、心拍が200以上になる意味をわかっていなかったのかもしれません。
またはわかっていても、起きたから上がったなとしか思わなかったのでしょう。
気づいてもいなかった、側で私たちが言っていることも聞いていなかったのなら、厳しいようですがこの人には看護師の適性がありません。
ベテランの人ならリノの様子を確認して「お母さん、起きた時はいつもこんな風に心拍が高いの?」と聞くでしょう。
ネムルーはたぶん「いいえ、最近はそんなことはありません。痛み止めが切れてきたんでしょうか?」と答えるでしょう。
こんなやりとりができていたら、この後に起こったことは防げていたと思います。
D看護師はちっともリノの痛みのことを気にしていない。
ラクーとネムルーもD看護師の手技を見張ることに注目していて、リノの痛み止めが切れかかっていることに気づいていたのに、言い出すタイミングがなかったのです。
リノは痛みが酷くなってきているのに、お腹の中にはかつて経験したことがない量の液体がドンドン入ってきていてパニックになっていました。
寝ている時にはずっとおとなしかった気切部の喘鳴がひっきりなしに聞こえてきます。
ネムルーは「通常営業に戻ったね」と笑いながら痰の吸引を始めましたが、和やかな時はそこまででした。
痰が硬くて白い塊が引けてきます。
取っても取っても出てくるので、吸引ポンプはずっと動き続けていました。
ネムルーとラクーはだんだん心配になってきて、ミルクの逆流を疑い始めました。
その時、リノの顔がかつてないぐらい赤黒くなって、心拍は240近くなったのです。
これはおかしい。
ラクーはナースコールを押して「気切が閉塞しそうです!」と叫びました。
ネムルーは必死で吸引を続けます。
すぐに来てくださったのは、大人しそうな知らない看護師さんでした。
その人がリノを見た時には、少し落ち着きが出てきていました。
しかしリノの様子を看て、すぐにネムルーに痛み止めを使った最終時間を尋ねました。
痛み……そうだよ。
痛み止めをした後で、ミルクに挑戦していたら、この難関をクリアできていたかもしれません。
いつもの何分の一かのほんのポッチリのミルクの滴下が、ドクターの判断で中止になりました。
起きたばかりで痰が硬かった。
手荒い扱いに驚いた。
痛みの調整ができていなかった。
そんな悪い条件がタイミング悪く重なってしまいました。
看護師の仕事は地味なようですが、一番身近なところで患者の命を握っているのです。
患者の退院を遅らせる看護師もいれば、患者を早く癒して退院させる看護師もいるでしょう。
リノの退院は一日延びたなとネムルーとラクーは言い合いました。
「運が悪かったんだから、仕方がないよ。また最初からゆっくりいくしかないね」
ネムルーはそう言っていましたが、ラクーとしては人災としか思えませんでした。
どうして術後初日に、あのD看護師をリノの担当にしたんでしょうね。
もっと後なら、大らかな気持ちで受け入れられたのに……たぶん(笑)
その後、D看護師がミルクボトルを取りに来た時にも、雑にチューブを引っ張って、機械を壊しそうになっていました。持続ポンプのチューブを挟む蓋も開けっぱなしだったので、ラクーが閉めに行きました。
やれやれ。(;´Д`)
この機械はうちがレンタルしている物なので、壊されてはたまりません。
リノはずっと怒って震えていたので、オシッコのチューブや何かで抱っこ出来ないけれど、ネムルーはずっとリノの身体に手を入れて、支えていたのです。ラクーもリノの手をさすっていました。
その時ネムルーが気づきました。
「あの人、MDチューブに水を入れるのを忘れてる。あんなところに水を入れたシリンジを置いとくから、忘れるんじゃないかなと思ってたのよ」
見ると薬のボックスの中に、水が入ったシリンジが突っ込んであります。(~_~;)
「噴門部を縛ってるから、今、詰まったら、胃へのチューブが入れにくいと思うわ。これリノには生命線だから、お母さん看護師さんに言いに行っててくれる?」
やれやれ(;´Д`)
素人の母親にこんなことを言われているようでは、D看護師もプロとしてお金を取れませんよね。
ラクーが病室を出ようとした時に、あのおとなしい看護師さんが痛み止めを持ってきてくれました。
その看護師さんは、規定の五倍以上の水が入っているシリンジを見て不思議な顔をし、ちゃんと加減して1mlの水を入れてくれました。
こうでなきゃ看護師とは言えないよね。
あのD看護師なら、平気で全部入れたことでしょう。
リノは入れてもらった痛み止めが効いてきてウトウトし始めたので、ラクーは家に帰りました。
胃瘻のチューブの固定として、厚めの食器洗い用スポンジを二個重ねてあるのですが、そんなにお腹が盛り上がっていると布が引っ張られるので、リノの70サイズの浴衣では、きつくてお尻のホックが止められません。
今後の予定を聞くと、一か月ぐらいスポンジはそのままだそうです。
一か月後の健診で、やっとボタン式の胃瘻に変わるそうです。
そうなると、今ある二枚の浴衣だけでは洗い替えに困ります。
ラクーは帰りがけにデパートによって、80サイズの大きめの浴衣を買いました。
そうして帰って来たら、ネムルーから追加のエピソードがラインで入ってきていました。
『あれからD看護師がリノの身体を拭きに来た。「ごめんねー」と言いながら拭いてたけど、ものすごい力で雑に拭かれて、リノは半泣きでした。「お母さん、今のうちに売店とか行ってもらっていいですよ」と言われたけど「いえいえ大丈夫です(心の声→あなた一人には怖くて娘を任せられません)」』
なんていうやり取りがあったのだとか。(爆)
おいおい。
ブログ的にはおいしい話題の人物だけど、リノには受難の人材だったね。
ダンナーに今日の出来事を話したら「婦長さんに言うべきだ」と怒り狂っていました。
でも私にはこう言いました。
「リノも違った意味で、世の中にはバアバンよりも怖い人がいるっていうことを学んだな」
……………………え?
このD看護師は、心拍が200以上になる意味をわかっていなかったのかもしれません。
またはわかっていても、起きたから上がったなとしか思わなかったのでしょう。
気づいてもいなかった、側で私たちが言っていることも聞いていなかったのなら、厳しいようですがこの人には看護師の適性がありません。
ベテランの人ならリノの様子を確認して「お母さん、起きた時はいつもこんな風に心拍が高いの?」と聞くでしょう。
ネムルーはたぶん「いいえ、最近はそんなことはありません。痛み止めが切れてきたんでしょうか?」と答えるでしょう。
こんなやりとりができていたら、この後に起こったことは防げていたと思います。
D看護師はちっともリノの痛みのことを気にしていない。
ラクーとネムルーもD看護師の手技を見張ることに注目していて、リノの痛み止めが切れかかっていることに気づいていたのに、言い出すタイミングがなかったのです。
リノは痛みが酷くなってきているのに、お腹の中にはかつて経験したことがない量の液体がドンドン入ってきていてパニックになっていました。
寝ている時にはずっとおとなしかった気切部の喘鳴がひっきりなしに聞こえてきます。
ネムルーは「通常営業に戻ったね」と笑いながら痰の吸引を始めましたが、和やかな時はそこまででした。
痰が硬くて白い塊が引けてきます。
取っても取っても出てくるので、吸引ポンプはずっと動き続けていました。
ネムルーとラクーはだんだん心配になってきて、ミルクの逆流を疑い始めました。
その時、リノの顔がかつてないぐらい赤黒くなって、心拍は240近くなったのです。
これはおかしい。
ラクーはナースコールを押して「気切が閉塞しそうです!」と叫びました。
ネムルーは必死で吸引を続けます。
すぐに来てくださったのは、大人しそうな知らない看護師さんでした。
その人がリノを見た時には、少し落ち着きが出てきていました。
しかしリノの様子を看て、すぐにネムルーに痛み止めを使った最終時間を尋ねました。
痛み……そうだよ。
痛み止めをした後で、ミルクに挑戦していたら、この難関をクリアできていたかもしれません。
いつもの何分の一かのほんのポッチリのミルクの滴下が、ドクターの判断で中止になりました。
起きたばかりで痰が硬かった。
手荒い扱いに驚いた。
痛みの調整ができていなかった。
そんな悪い条件がタイミング悪く重なってしまいました。
看護師の仕事は地味なようですが、一番身近なところで患者の命を握っているのです。
患者の退院を遅らせる看護師もいれば、患者を早く癒して退院させる看護師もいるでしょう。
リノの退院は一日延びたなとネムルーとラクーは言い合いました。
「運が悪かったんだから、仕方がないよ。また最初からゆっくりいくしかないね」
ネムルーはそう言っていましたが、ラクーとしては人災としか思えませんでした。
どうして術後初日に、あのD看護師をリノの担当にしたんでしょうね。
もっと後なら、大らかな気持ちで受け入れられたのに……たぶん(笑)
その後、D看護師がミルクボトルを取りに来た時にも、雑にチューブを引っ張って、機械を壊しそうになっていました。持続ポンプのチューブを挟む蓋も開けっぱなしだったので、ラクーが閉めに行きました。
やれやれ。(;´Д`)
この機械はうちがレンタルしている物なので、壊されてはたまりません。
リノはずっと怒って震えていたので、オシッコのチューブや何かで抱っこ出来ないけれど、ネムルーはずっとリノの身体に手を入れて、支えていたのです。ラクーもリノの手をさすっていました。
その時ネムルーが気づきました。
「あの人、MDチューブに水を入れるのを忘れてる。あんなところに水を入れたシリンジを置いとくから、忘れるんじゃないかなと思ってたのよ」
見ると薬のボックスの中に、水が入ったシリンジが突っ込んであります。(~_~;)
「噴門部を縛ってるから、今、詰まったら、胃へのチューブが入れにくいと思うわ。これリノには生命線だから、お母さん看護師さんに言いに行っててくれる?」
やれやれ(;´Д`)
素人の母親にこんなことを言われているようでは、D看護師もプロとしてお金を取れませんよね。
ラクーが病室を出ようとした時に、あのおとなしい看護師さんが痛み止めを持ってきてくれました。
その看護師さんは、規定の五倍以上の水が入っているシリンジを見て不思議な顔をし、ちゃんと加減して1mlの水を入れてくれました。
こうでなきゃ看護師とは言えないよね。
あのD看護師なら、平気で全部入れたことでしょう。
リノは入れてもらった痛み止めが効いてきてウトウトし始めたので、ラクーは家に帰りました。
胃瘻のチューブの固定として、厚めの食器洗い用スポンジを二個重ねてあるのですが、そんなにお腹が盛り上がっていると布が引っ張られるので、リノの70サイズの浴衣では、きつくてお尻のホックが止められません。
今後の予定を聞くと、一か月ぐらいスポンジはそのままだそうです。
一か月後の健診で、やっとボタン式の胃瘻に変わるそうです。
そうなると、今ある二枚の浴衣だけでは洗い替えに困ります。
ラクーは帰りがけにデパートによって、80サイズの大きめの浴衣を買いました。
そうして帰って来たら、ネムルーから追加のエピソードがラインで入ってきていました。
『あれからD看護師がリノの身体を拭きに来た。「ごめんねー」と言いながら拭いてたけど、ものすごい力で雑に拭かれて、リノは半泣きでした。「お母さん、今のうちに売店とか行ってもらっていいですよ」と言われたけど「いえいえ大丈夫です(心の声→あなた一人には怖くて娘を任せられません)」』
なんていうやり取りがあったのだとか。(爆)
おいおい。
ブログ的にはおいしい話題の人物だけど、リノには受難の人材だったね。
ダンナーに今日の出来事を話したら「婦長さんに言うべきだ」と怒り狂っていました。
でも私にはこう言いました。
「リノも違った意味で、世の中にはバアバンよりも怖い人がいるっていうことを学んだな」
……………………え?
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