星の子ども

秋野 木星

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第二章 家での生活 1

5/19 運動会は砂漠探検の様相

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今日は孫のハシルンの運動会です。
ハシルンは初孫なので、ラクー家全員から注目され、可愛がられています。

小学校に入学したてのピカピカの一年生。
母親のノンビリーにとっては、我が子の晴れ姿をシャカリキで応援したいところでしょう。

ノンビリーは朝5時に起きて、9人分のお弁当を作ってくれていました。プロ並みの美味しいお弁当だったんですよ。 お姉ちゃん、ごちそうさま!☆彡
今日はセンセーも参加できていました。今年から日曜日の部活は試合以外は休みになったそうです。よかったね。(^o^)/
積極的に町内対抗の綱引きにも出場して、勇姿を見せてくれました。

実をいうとラクーは、大失敗をしてしまったのです。

一度、ばあばだけで小学校を見に行ってから、来年、リノたちを誘ったほうが良かったのです。
そうすれば、色々と対策を考えられますからね。
けれど、リノのようなリスクを抱えている子は来年の保証が100%ありません。まぁ、普通の人でも同じことですが……
そこでついつい、無理押しをしてリノとムコーとネムルーを運動会に誘ってしまいました。

ばあばは、ハシルンを応援に行くことはもちろんですが、最近、外界に反応を見せ始めたリノが「ヨーイドン」のピストルを聞いて、どんな顔をするのかちょっと見てみたかったのです。
運動会独特のウキウキした雰囲気も味合わせてやりたいと思っていました。

ネムルーとムコーにまだ子どもがいなかった時、二人はハシルンが幼稚園に入る前のプレ参加の時も、年少さんの時も、ラクーたちと一緒に運動会を観に行きました。
ムコーとハシルンは男同士の絆で結ばれた大親友なので、ムコーの顔を見ただけでハシルンは喜びに飛び上がります。
去年の秋はネムルーが臨月だったので、二人ともハシルンの年長さんの運動会に行けませんでした。
ムコーを連れていったら、ハシルンが喜ぶだろうなとも思ったのです。

そんな軽い気持ちで応援に行った運動会でしたが、とんでもないことになってしまいました。


ハシルンの通う小学校は、山と山に挟まれた切りとおしに建っています。
そのため「土ぼこりが舞うことが多いよ」とノンビリーは心配していました。姪のリノの人工鼻のカフが目詰まりするのではないかと思ったようです。

ネムルーはラクーに似て、大雑把な性格をしています。
「人口鼻はちょっとの土ぼこりぐらい、大丈夫よ」
笑ってそう言っていました。
確かに、その点ではネムルーの言う通りだったのです。

けれど今日の風と土ぼこりは「ちょっと」どころではありませんでした。

歩けないぐらいの突風と、巻きあがる竜巻状の砂嵐だったのです。
石つぶてのような砂がピシピシと飛んできました。そして目も開けていられないほどの砂煙がずっと舞っていました。

運動場に張り巡らされていた20以上のテントを、大人がすべての柱を持って押さえつけていないと、飛んで行きそうになった時、とうとう運動会の一部中止が発表されました。
この時は午前中の部が終わっていたので、かろうじて一年生のリレーやダンスは観覧できていました。
六年生は組体操などが残っていたので、観客が減って本当に気の毒でした。(^_^;)

そして敵は砂嵐だけではなかったのです。

今の時期は毛虫の繁殖期です。
そうです、山から何百匹何千匹という毛虫たちが、な・ぜ・か全員、運動場を目指して降りてくるのです。
自前で持って行っていたテントのタープの陰に座っていようとも、安心できません。

ラクーの背中を毛虫がはっているところを、ポポが見つけて「ばあばん、危ない!」と言ってくれましたし、ポポの膝をはっている毛虫を、ばあばはヒヤリとしながら退治しました。
そして2歳のポッチャリが自分の靴を持ちあげたら、そこには毛虫がいたのです。(;´Д`)

カバンやテント、敷物をはっているところなんて見慣れてしまい、紙皿やうちわで撃退していくうちに、運動会を観に来ているのか、毛虫を退治しに来ているのかわからなくなってしまいました。(;´Д`)(;´Д`)

身体中にずっと鳥肌が出て粟立っていて、その時には気づいていませんでしたが、かなりのストレスだったらしく、帰って来た時には頭がガンガンして疲れ果てていました。
(;´Д`)(;´Д`)(;´Д`)

つまり、砂漠を探検しに行って砂嵐に遭い、サソリにも遭遇し続けていた気分なのです。

この運動会は、違った意味で後世の家族史に残るものとなりました。

「ここの小学校の運動会に、これから12年来ることになるのか……」

ポツリともらしたノンビリーの言葉に、同情と共感のため息をついてしまったラクーでした。


そんな中、気をつけていたのにもかかわらず、リノも頭からずっぽりと砂ぼこりをかぶってしまいました。
髪の毛の中や、目や口の方にまで砂がついてしまったんです。
機械類も身体を張ってかばっていましたが、砂で真っ白になってしまいました。

早めに退散しようとして、リノのベビーカーを押して車に急いでいたばあばが、大きな砂嵐の渦の中で足止めされてしまった時です。

「後ろが開いてるが!!」
焦ったノンビリーに大声で怒られてしまいました。

よく見ると、ベビーカーの後ろのホックが止まっていなかったのです。
幌をいっぱいに、リノの上にかぶせていたのですが、頭隠して尻隠さずの状態になっていました。

リノは、酷い目に遭い続けて何日目でしょう。(^_^;)
この家族に付き合うのは骨が折れると、密かに思っているでしょうね。

一時間以上かかる帰り道の間中、生きた心地がしませんでしたが、リノは少し心拍を上げたぐらいで、無事に家に帰還できました。

振り返ってみると、リノが一番、冷静で強かったかもしれません。

ごめんね、リノ。
明日はいつもの、のんびりした日に戻るから。

そして、テントや食べるものを用意してくれて、面倒をかけてしまった長女の一家にも、この場を借りて謝っておこう。
ありがとう、お世話になりました。<(_ _)>

さっき交代でシャワーを浴びて、やっと人心地がつきました。ε-(´∀`*)ホッ
探検隊レポーター、ラクーからの現場報告は以上です。
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