星の子ども

秋野 木星

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第一章 NICU

生後72日目 NICU一泊研修

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NICUから一度出てしまうと、もう戻ってこられないそうです。
そのため小児科に転科する前に、両親が医療的ケアが必要な赤ちゃんをちゃんと世話をすることができるか確認されるのでしょう。

リノの場合は夜だけ呼吸器をつけているので、ネムルーはまず呼吸器の動かし方から習わなければなりません。
呼吸器を常時使用していないため、加温加湿器に入れる精製水の扱い方にも注意が必要です。精製水には水道水のように菌を繁殖させないために入れてあるカルキなどが入ってないそうです。そのため、どのくらいの頻度で水を変えるべきかお医者さんの指示を仰ぐと聞きました。

リノが入院しているNICUのファミリールームは、こういってはなんですが普段使っていない倉庫のようなところです。まず会議室にあるような椅子が20脚ほど置いてあります。端っこにちょっと広い手洗い場があって、ばあばの研修がある日だけ、リノはここで四角い金盥かなだらいで沐浴します。
茶色い合成皮革のソファが一つあります。このソファをベッドにして、家から持っていった布団を敷き、ネムルーとムコーは眠ったそうです。
狭いです。
つまり昨日は、ほとんど完徹状態だったようです。

眠れなかったのは天井の電気を消せなかったのもあるのでしょう。
部屋に三つついている電灯にはスリープモードの明かりがなかったらしく、つけておくか真っ暗にしておくかの選択しかなかったそうです。
リノの気管に水が入ったら溺れてしまいます。そのため夜中に呼吸器のホースについている水滴を落とさなければなりません。その上、ホースの途中で水を溜めておく役割をしている、コップの水を捨てなければなりません。

こんな作業があるため、二人はリノの真上の電灯だけ消して、自分たちの上の電灯はつけたまま夜を過ごしたそうです。
リノも、いつもとは違う空気を感じたんでしょう。両親に付き合って、ほとんど夜じゅう起きていたようです。

一度、夜中に間違ってリノの上の電灯のスイッチをつけてしまったそうですが、その時リノがビクビクッとしたので、二人とも驚いたそうです。
目が光を感じているんでしょうか?
そうだったら、いいなぁ。


いつもと変わったことが一つありました。
リノが一度、心拍を上げ続けて、心拍数が200までになったそうです。
これは心臓に負担がかかっている数値です。普段でも心拍数の高いリノとはいえ、心配になった二人は、吸引をしたり体位を変えたりと手を尽くしたそうですが、下がらなかったそうです。
とうとう看護師さんに助けを求めたと言っていました。

看護師さんに「リノちゃんは熱が上がったら心拍数をあげることがある」と言われ、アイスノンをもらって背中を冷やしたら、心拍が落ち着いてきたそうです。
二人はこの経験から、病院の帰りにすぐにドラッグストアへ寄って、アイスノンを買ってきていました。
(笑)
目で見える数値があるというのは安心なようでいて、対応にも追われそうですね。


ばあばとじいじは、家で植木の枝を切りまくりました。
ウッドデッキの近くにあった紅葉の木は、ほとんど丸坊主になってしまいました。
大勢の人が出入りしても大丈夫なように、庭の入り口付近にあった柏葉紫陽花カシワバアジサイの株を掘り出して、別の場所に移動させました。

温室テラスのちょうどいい製品が、なかなかないので、とうとうじいじが自作で、ウッドデッキと玄関アプローチを繋ぐことにしました。
これだけでもやっておくと、温かくなってリノが散歩に出かけられるようになった時に、部屋から直接ベビーカーで外に出やすくなります。
ラクーは気になっていたウッドデッキ周りのシダを一掃できたので、気分がスッキリしました。

夜、ネムルーが喜び勇んで二階に上がって来ました。
グレーと優しいグリーンのツートンカラーになっている手提げ機械と、例のニ〇リのカバンを手に持っています。
「宅急便で届いてたの、これだったーー!」

ラクーとネムルーが憧れていた吸引器のベベキュアが、そこにありました。

「ちっさい! 思っていたよりも、もっと小さく感じるね」
こんな小さな機械なのに、蓋の裏にチューブを収納できるなど、工夫が凝らされています。
これはやっぱりいいわ。
音は大きかったですが、持っているだけでワクワクしますね。

病院で一泊したネムルーの疲れを、一気に吹き飛ばしてくれたグッドデザイン賞のベベキュアでした。
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