星の子ども

秋野 木星

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第一章 NICU

生後26日目 心配そうな目

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今日、ネムルーがリノの沐浴をしている時に、リノが突然目を開けて心配そうな目でお母さんを見つめたそうです。
「そんな目で見ないで。お母さん、頑張ってるんだからぁ~。リノも協力してね」
と頼んだと言っていました。

リノの協力のおかげか、今日は看護士さんに免許皆伝を貰ったそうです。
良かったね、新米ママ。


リノは順調に体重が増えているらしく、三日前よりも100gは太ったそうです。
EDチューブの成果が出ていますね。

ネムルーは、昨日リハビリの先生にもらった運動計画の用紙を見ながら、リノの関節をしっかりと動かしてきたそうです。口の刺激も続けていて、吸啜きゅうてつ反射を促してみたそうですが、こちらはまだ成果が出ていないようです。
嚥下えんげ機能というのは、歳を取ると一番にダメージが出てくるところなので、多くの脳細胞の連携を必要とするのかもしれませんねぇ。

ネムルーがそろそろ帰ろうと思って席を立った時に、部長先生がいらして「抱っこはいいですか?」と聞いてくれたそうです。
いつから見られていたのかわからなかったと言っていました。
リノは珍しい症例なので、先生方も心配してくださっているのかもしれませんね。
NICUにいる赤ちゃんは、ほとんどが低体重児みたいだし、リノのような大きな治療用ベッドに寝ている子はいないとネムルーも言っていました。

産科病棟のため、ラクーが待合室で栄養の勉強している間に多くの幼児や乳幼児に出会います。
今日はお母さんに抱っこしてもらいたくて、グズっている女の子がいました。昨日は「おじぎり(おにぎり)おいちぃです」と大人のような口調で可愛らしくおしゃべりする男の子がいました。
そんな子ども達を見るたびに、リノもこんな風に成長する予定だったのに……と小さなため息をついてしまいます。
事故に遭ったようなものなので、if(もし)を考えても仕方がないんですけど。
やっぱりどうしても考えてしまいますねぇ。
リノの見た目は五体満足の申し分のない身体なので、あの時、あとちょっとのタイミングがずれてたら……と思ってしまいます。

逆子だったら、予定日前に予定帝王切開で無事に生まれてたかしら……?
実際、リノが生まれた四日後に、ムコーの妹はそうやって無事に出産しています。
従姉弟同士の運命を分けたのは、ネムルーの「順調な妊娠」という皮肉。世の中、ちょっとのことがどう転ぶかわかりませんね。

リノは最後の関門を越えられなかったという運命だったのでしょう。

今回の事全部を丸のまま受け止めようと、一旦割り切ったばあばが、まだこんなことをグチグチと考えているとリノが知ったら、ばあばのことも心配そうな目で見てくれるのかしらん? (笑)
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