5 / 10
【5】
しおりを挟む
『エレナに頼みたいことがあるから、授業が終わったら東の塔の実験室まで来るように』
アヴィディータにそう呼び出された私はどうせいつもの小間使いだろうと、ほいほいと実験室を訪れた。
東の塔の実験室は今は誰にも使われていなくて、アヴィディータが策略をめぐらす時の御用達の場所だ。
そしてそこで待っていたのが、私の裏切りに気がつき怒りに燃えるアヴィディータと、私を犯すためにアヴィディータに雇われた大男だったというわけだ。
(エグい……! やり口がエグいって……っ! 絶対に私が犯されてるとこ記録に残して脅しに使うつもりだったじゃん……!)
逃げなきゃ。何としてでも男とアヴィディータから逃げなきゃ。
淫紋魔法の効力が消えるまで、誰も居ない場所でやり過ごさなきゃ。
(どこかどこかどこか! 誰も居ない、しかもアヴィディータが来ない場所……っっ!)
そんな追い詰められた私の脳裏に走馬灯のように浮かぶ、ある光景。
図書室の奥に隠された、秘密の部屋。
ヒロインがフラグ条件を満たすまで、あの部屋には誰も現れないはずだ。
(セシルが王太子とのエンディングが確定したってことは、隠しキャラのあの人は出現しないはずっ!)
だからあの部屋で淫紋魔法に堪えれば、私が生き残る道はきっとある――――!
(お願い、開いて……っ!)
図書室の中で唯一、リンドブルム王家の紋章が刻まれた本棚。記憶通りに中の王室史の順番を入れ替え力を込めて押すと、重いはずのそれが音もなく動いた。
本棚の後ろに現れたスペースへと身体を滑り込ませ、閉じる。隠し部屋へ続く通路が闇に包まれるとホッとして力が抜けた。
「ダメ、まだここで倒れちゃ、ダメ……っ」
だんだん、淫紋の効力が強くなってきている。
お腹が熱い。身体の奥が疼いて仕方ない。
「もしこの状態で見つかったらさすがにもう逃げられない……!」
アヴィディータより魔力の弱い私が逃げられたのは、強い光魔法でアヴィディータと男の目を眩ませ隙をついたからだ。こんな子供騙しの魔法、二度目は通用しない。
「っ、さすが闇魔法と毒のエキスパート、アヴィディータ。ガンガン淫紋の効果が身体に回ってくるのを感じるわぁっ」
まるでテキーラを連続で飲んだ時のような酩酊感。
頭がフワフワして思考もまとまらなくなってきている。足に、力が入らない。
「着いた……!」
最後の力を振り絞って。
隠し部屋の扉を開ける。
「……………え?」
倒れ込むように部屋へと入った私の視界に映ったもの。
それは、居るはずのない彼――隠しキャラのつま先だった。
アヴィディータにそう呼び出された私はどうせいつもの小間使いだろうと、ほいほいと実験室を訪れた。
東の塔の実験室は今は誰にも使われていなくて、アヴィディータが策略をめぐらす時の御用達の場所だ。
そしてそこで待っていたのが、私の裏切りに気がつき怒りに燃えるアヴィディータと、私を犯すためにアヴィディータに雇われた大男だったというわけだ。
(エグい……! やり口がエグいって……っ! 絶対に私が犯されてるとこ記録に残して脅しに使うつもりだったじゃん……!)
逃げなきゃ。何としてでも男とアヴィディータから逃げなきゃ。
淫紋魔法の効力が消えるまで、誰も居ない場所でやり過ごさなきゃ。
(どこかどこかどこか! 誰も居ない、しかもアヴィディータが来ない場所……っっ!)
そんな追い詰められた私の脳裏に走馬灯のように浮かぶ、ある光景。
図書室の奥に隠された、秘密の部屋。
ヒロインがフラグ条件を満たすまで、あの部屋には誰も現れないはずだ。
(セシルが王太子とのエンディングが確定したってことは、隠しキャラのあの人は出現しないはずっ!)
だからあの部屋で淫紋魔法に堪えれば、私が生き残る道はきっとある――――!
(お願い、開いて……っ!)
図書室の中で唯一、リンドブルム王家の紋章が刻まれた本棚。記憶通りに中の王室史の順番を入れ替え力を込めて押すと、重いはずのそれが音もなく動いた。
本棚の後ろに現れたスペースへと身体を滑り込ませ、閉じる。隠し部屋へ続く通路が闇に包まれるとホッとして力が抜けた。
「ダメ、まだここで倒れちゃ、ダメ……っ」
だんだん、淫紋の効力が強くなってきている。
お腹が熱い。身体の奥が疼いて仕方ない。
「もしこの状態で見つかったらさすがにもう逃げられない……!」
アヴィディータより魔力の弱い私が逃げられたのは、強い光魔法でアヴィディータと男の目を眩ませ隙をついたからだ。こんな子供騙しの魔法、二度目は通用しない。
「っ、さすが闇魔法と毒のエキスパート、アヴィディータ。ガンガン淫紋の効果が身体に回ってくるのを感じるわぁっ」
まるでテキーラを連続で飲んだ時のような酩酊感。
頭がフワフワして思考もまとまらなくなってきている。足に、力が入らない。
「着いた……!」
最後の力を振り絞って。
隠し部屋の扉を開ける。
「……………え?」
倒れ込むように部屋へと入った私の視界に映ったもの。
それは、居るはずのない彼――隠しキャラのつま先だった。
26
お気に入りに追加
519
あなたにおすすめの小説
【R18】婚約破棄に失敗したら王子が夜這いにやってきました
ミチル
恋愛
婚約者である第一王子ルイスとの婚約破棄に晴れて失敗してしまったリリー。しばらく王宮で過ごすことになり夜眠っているリリーは、ふと違和感を覚えた。(なにかしら……何かふわふわしてて気持ちいい……) 次第に浮上する意識に、ベッドの中に誰かがいることに気づいて叫ぼうとしたけれど、口を塞がれてしまった。
リリーのベッドに忍び込んでいたのは婚約破棄しそこなったばかりのルイスだった。そしてルイスはとんでもないこと言い出す。『夜這いに来ただけさ』
R15で連載している『婚約破棄の条件は王子付きの騎士で側から離してもらえません』の【R18】番外になります。3~5話くらいで簡潔予定です。
貧乳の魔法が切れて元の巨乳に戻ったら、男性好きと噂の上司に美味しく食べられて好きな人がいるのに種付けされてしまった。
シェルビビ
恋愛
胸が大きければ大きいほど美人という定義の国に異世界転移した結。自分の胸が大きいことがコンプレックスで、貧乳になりたいと思っていたのでお金と引き換えに小さな胸を手に入れた。
小さな胸でも優しく接してくれる騎士ギルフォードに恋心を抱いていたが、片思いのまま3年が経とうとしていた。ギルフォードの前に好きだった人は彼の上司エーベルハルトだったが、ギルフォードが好きと噂を聞いて諦めてしまった。
このまま一生独身だと老後の事を考えていたところ、おっぱいが戻ってきてしまった。元の状態で戻ってくることが条件のおっぱいだが、訳が分からず蹲っていると助けてくれたのはエーベルハルトだった。
ずっと片思いしていたと告白をされ、告白を受け入れたユイ。
【R18】国王陛下に婚活を命じられたら、宰相閣下の様子がおかしくなった
ほづみ
恋愛
国王から「平和になったので婚活しておいで」と言われた月の女神シアに仕える女神官ロイシュネリア。彼女の持つ未来を視る力は、処女喪失とともに失われる。先視の力をほかの人間に利用されることを恐れた国王からの命令だった。好きな人がいるけどその人には好かれていないし、命令だからしかたがないね、と婚活を始めるロイシュネリアと、彼女のことをひそかに想っていた宰相リフェウスとのあれこれ。両片思いがこじらせています。
あいかわらずゆるふわです。雰囲気重視。
細かいことは気にしないでください!
他サイトにも掲載しています。
注意 ヒロインが腕を切る描写が出てきます。苦手な方はご自衛をお願いします。
色々と疲れた乙女は最強の騎士様の甘い攻撃に陥落しました
灰兎
恋愛
「ルイーズ、もう少し脚を開けますか?」優しく聞いてくれるマチアスは、多分、もう待ちきれないのを必死に我慢してくれている。
恋愛経験も無いままに婚約破棄まで経験して、色々と疲れているお年頃の女の子、ルイーズ。優秀で容姿端麗なのに恋愛初心者のルイーズ相手には四苦八苦、でもやっぱり最後には絶対無敵の最強だった騎士、マチアス。二人の両片思いは色んな意味でもう我慢出来なくなった騎士様によってぶち壊されました。めでたしめでたし。
18禁の乙女ゲームの悪役令嬢~恋愛フラグより抱かれるフラグが上ってどう言うことなの?
KUMA
恋愛
※最初王子とのHAPPY ENDの予定でしたが義兄弟達との快楽ENDに変更しました。※
ある日前世の記憶があるローズマリアはここが異世界ではない姉の中毒症とも言える2次元乙女ゲームの世界だと気付く。
しかも18禁のかなり高い確率で、エッチなフラグがたつと姉から嫌って程聞かされていた。
でもローズマリアは安心していた、攻略キャラクターは皆ヒロインのマリアンヌと肉体関係になると。
ローズマリアは婚約解消しようと…だが前世のローズマリアは天然タラシ(本人知らない)
攻略キャラは婚約者の王子
宰相の息子(執事に変装)
義兄(再婚)二人の騎士
実の弟(新ルートキャラ)
姉は乙女ゲーム(18禁)そしてローズマリアはBL(18禁)が好き過ぎる腐女子の処女男の子と恋愛よりBLのエッチを見るのが好きだから。
正直あんまり覚えていない、ローズマリアは婚約者意外の攻略キャラは知らずそこまで警戒しずに接した所新ルートを発掘!(婚約の顔はかろうじて)
悪役令嬢淫乱ルートになるとは知らない…
【続】18禁の乙女ゲームから現実へ~常に義兄弟にエッチな事されてる私。
KUMA
恋愛
※続けて書こうと思ったのですが、ゲームと分けた方が面白いと思って続編です。※
前回までの話
18禁の乙女エロゲームの悪役令嬢のローズマリアは知らないうち新しいルート義兄弟からの監禁調教ルートへ突入途中王子の監禁調教もあったが義兄弟の頭脳勝ちで…ローズマリアは快楽淫乱ENDにと思った。
だが事故に遭ってずっと眠っていて、それは転生ではなく夢世界だった。
ある意味良かったのか悪かったのか分からないが…
万李唖は本当の自分の体に、戻れたがローズマリアの淫乱な体の感覚が忘れられずにBLゲーム最中1人でエッチな事を…
それが元で同居中の義兄弟からエッチな事をされついに……
新婚旅行中の姉夫婦は後1週間も帰って来ない…
おまけに学校は夏休みで…ほぼ毎日攻められ万李唖は現実でも義兄弟から……
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる