1 / 7
【1】
しおりを挟む
「ルミティア。ここに段差があるみたいだから、俺の手に掴まって」
「ありがとうございますアルバ様」
さすが、聖騎士であるアルバはどんな時も紳士だ。
そう思いながら聖女ルミティアは彼の大きな手のひらに自分の手を重ねる。
どんなに素早い魔獣でも、どんなに数の多い魔物の群れでも。まるで踊るように、けれど瞬く間に敵を斬り伏せる剣技の持ち主アルバ。この国の聖騎士団の団長を務める彼は、剣聖とも呼ばれている。
圧倒的な強さを誇るだけでなく、長身で容姿端麗な彼は国中の乙女たちの憧れの的で。ルミティアが聖女として彼と共に魔族討伐の旅へ行くことが決まった時には、神殿の神子たちの嫉妬と羨望の視線が全身に突き刺さった。
(でも! どれだけ神子たちに羨ましがられたって、アルバ様と旅をする権利は絶対に譲れなかったわ……! だって、私にとってもアルバ様は憧れの騎士様だもの……!)
サラサラの金の髪に慈愛に満ちた蒼玉の瞳。スッと通った鼻梁に薄い唇。屈強な男たちを束ねる騎士団長という役職に就いていても、彼はいつも涼やかな空気をまとっていてニキビなどとは無縁の肌は陶器のよう。
スラリとした長身で繊細な美貌のアルバは、武器を握るよりも楽器を奏でる方が似合っているのではないかとさえ思ってしまう。体臭だって、汗の臭いよりも石鹸やミントの香りがしそうだ。
けれど、彼がいるのといないのとでは国の防衛力は何倍も違うだろう。彼は優美な外見に反して恐ろしく強い。更には王太子と幼なじみで、この国でかなりの影響力も持っているらしい。
そのうえ21歳で独身。彼に近づきたいと願っている女性はいくらでもいて。
アルバと長期間一緒に寝食を共にし旅をする仲間に選抜されたルミティアが羨ましがられるのも当然だった。
(でも、私、選ばれるために血の滲むような努力をしたもの……!)
魔族討伐の一行に参加する神子――聖女に求められる能力は決して低くない。
瞬時に怪我や状態異常を回復させる治癒魔法、呪いのアイテムや解呪に関する知識、様々な薬の調合法。過酷な長旅に耐えられるだけの体力と気力。
それらを身につけるため、神子時代のルミティアは本当にありとあらゆる訓練を試みた。
「ありがとうございますアルバ様」
さすが、聖騎士であるアルバはどんな時も紳士だ。
そう思いながら聖女ルミティアは彼の大きな手のひらに自分の手を重ねる。
どんなに素早い魔獣でも、どんなに数の多い魔物の群れでも。まるで踊るように、けれど瞬く間に敵を斬り伏せる剣技の持ち主アルバ。この国の聖騎士団の団長を務める彼は、剣聖とも呼ばれている。
圧倒的な強さを誇るだけでなく、長身で容姿端麗な彼は国中の乙女たちの憧れの的で。ルミティアが聖女として彼と共に魔族討伐の旅へ行くことが決まった時には、神殿の神子たちの嫉妬と羨望の視線が全身に突き刺さった。
(でも! どれだけ神子たちに羨ましがられたって、アルバ様と旅をする権利は絶対に譲れなかったわ……! だって、私にとってもアルバ様は憧れの騎士様だもの……!)
サラサラの金の髪に慈愛に満ちた蒼玉の瞳。スッと通った鼻梁に薄い唇。屈強な男たちを束ねる騎士団長という役職に就いていても、彼はいつも涼やかな空気をまとっていてニキビなどとは無縁の肌は陶器のよう。
スラリとした長身で繊細な美貌のアルバは、武器を握るよりも楽器を奏でる方が似合っているのではないかとさえ思ってしまう。体臭だって、汗の臭いよりも石鹸やミントの香りがしそうだ。
けれど、彼がいるのといないのとでは国の防衛力は何倍も違うだろう。彼は優美な外見に反して恐ろしく強い。更には王太子と幼なじみで、この国でかなりの影響力も持っているらしい。
そのうえ21歳で独身。彼に近づきたいと願っている女性はいくらでもいて。
アルバと長期間一緒に寝食を共にし旅をする仲間に選抜されたルミティアが羨ましがられるのも当然だった。
(でも、私、選ばれるために血の滲むような努力をしたもの……!)
魔族討伐の一行に参加する神子――聖女に求められる能力は決して低くない。
瞬時に怪我や状態異常を回復させる治癒魔法、呪いのアイテムや解呪に関する知識、様々な薬の調合法。過酷な長旅に耐えられるだけの体力と気力。
それらを身につけるため、神子時代のルミティアは本当にありとあらゆる訓練を試みた。
12
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
泡風呂を楽しんでいただけなのに、空中から落ちてきた異世界騎士が「離れられないし目も瞑りたくない」とガン見してきた時の私の対応。
待鳥園子
恋愛
半年に一度仕事を頑張ったご褒美に一人で高級ラグジョアリーホテルの泡風呂を楽しんでたら、いきなり異世界騎士が落ちてきてあれこれ言い訳しつつ泡に隠れた体をジロジロ見てくる話。
騎士団長のアレは誰が手に入れるのか!?
うさぎくま
恋愛
黄金のようだと言われるほどに濁りがない金色の瞳。肩より少し短いくらいの、いい塩梅で切り揃えられた柔らかく靡く金色の髪。甘やかな声で、誰もが振り返る美男子であり、屈強な肉体美、魔力、剣技、男の象徴も立派、全てが完璧な騎士団長ギルバルドが、遅い初恋に落ち、男心を振り回される物語。
濃厚で甘やかな『性』やり取りを楽しんで頂けたら幸いです!
無表情いとこの隠れた欲望
春密まつり
恋愛
大学生で21歳の梓は、6歳年上のいとこの雪哉と一緒に暮らすことになった。
小さい頃よく遊んでくれたお兄さんは社会人になりかっこよく成長していて戸惑いがち。
緊張しながらも仲良く暮らせそうだと思った矢先、転んだ拍子にキスをしてしまう。
それから雪哉の態度が変わり――。
ただの政略結婚だと思っていたのにわんこ系騎士から溺愛――いや、可及的速やかに挿れて頂きたいのだが!!
藤原ライラ
恋愛
生粋の文官家系の生まれのフランツィスカは、王命で武官家系のレオンハルトと結婚させられることになる。生まれも育ちも違う彼と分かり合うことなどそもそも諦めていたフランツィスカだったが、次第に彼の率直さに惹かれていく。
けれど、初夜で彼が泣き出してしまい――。
ツンデレ才女×わんこ騎士の、政略結婚からはじまる恋のお話。
☆ムーンライトノベルズにも掲載しています☆
ブラック企業を退職したら、極上マッサージに蕩ける日々が待ってました。
イセヤ レキ
恋愛
ブラック企業に勤める赤羽(あかばね)陽葵(ひまり)は、ある夜、退職を決意する。
きっかけは、雑居ビルのとあるマッサージ店。
そのマッサージ店の恰幅が良く朗らかな女性オーナーに新たな職場を紹介されるが、そこには無口で無表情な男の店長がいて……?
※ストーリー構成上、導入部だけシリアスです。
※他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる