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鏡の中の欲望

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服を完全に脱ぐことすら待ちきれなくて、お互いに脱がせあいながらバスルームにもつれ込む。
シャワーを浴びながら逞しい身体に濡れて張り付いた布を放り投げた。
服を着たままお風呂に入るなんてどうかしてる。

だけど、車の中から煽られ続けた熱はもう限界だった。
早く互いの素肌に触れたくて仕方がない。

噛みつくようなキスの間に下着を外された。露になった胸の丸みを大きな掌が包み込む。そのまま頂を指に引っ掻くように刺激されて、それだけで快楽がジワリと滲んだ。

すがり付くように首に腕を回してより深く舌を絡める。
お腹に当たる熱い塊が硬度を増すのがわかる。

「もうヌルヌル……。ここ、洗ってあげる」
レースをずらして忍び込んだ指が入り口を浅く掻き出した。
お湯以外の液体が太ももを伝う。

「んっ、もっと。もっと累さんの指、ください……っ」
むず痒い感覚がもどかしくて腰を揺らしてねだる。
「……上手に自分から言えてエライね」
微笑んだ累さんが二本の指で奥を激しく突いてくれた。
待ちわびていたように体内が軽く痙攣する。

興奮していた。
慣れないアルコール。洋服のままお風呂場でする行為の背徳感。
累さんの体臭。
視覚から嗅覚から感触から。あらゆることに興奮していた。

全てを脱がされて累さんの膝の上に座らせられる。
後ろから抱えられて想像以上に鍛えられた胸板が背中に当たる。
そして広いバスルームに相応しい大きな鏡にソコが全て映るように太ももを開かれた。

欲情して上気した顔。潤んだ灰色の瞳。成長して女性らしい曲線を描いた肢体。ツンと立ったピンクの乳首。
噛み跡の残る柔らかそうな白い太もも。淡い茂み。
そして累さんの人差し指と中指に広げられた充血した媚肉。
はち切れそうな粒は触れられるのを待っているかのように存在を主張している。

「駄目だよサーヤの可愛いとこ全部見なきゃ」
思わず顔を背けると、許さないと言うように顎を固定された。
「これから、うんとサーヤのこと気持ちよくしてあげるから」
だから全部見てるんだよ?
囁きと共に熱い舌で耳の中までねぶられて同時に茂みの中の粒を押し潰される。花弁が収縮して愛液がドロリと溢れた。

「サーヤが自分がとっても気持ち良くなって、たくさんイッちゃう顔いっぱい見たらベッドに行こうね」
その言葉通りに何度も絶頂を迎えるまで累さんは私をバスルームから出してくれなかった。


*


ギシギシと揺れる広いベッド。頬に当たる高そうなシーツ。
昨日と同じうつ伏せの体勢。
──だけど、だけど今日は私も累さんも裸で。
パンパンと肉同士がぶつかる音が寝室に響く。

「……サーヤが、寝てる、間に用意しといて、良かった」
振動に合わせて言葉を区切りながら累さんが笑う。
でも私は子宮口を突かれて甘ったるい嬌声をあげることしかできない。

累さんが用意して、私の手で着けた薄い膜。
男性に自分で着けてあげるなんて前世でもしたことがなかったけれど、上手にできたと累さんは褒めてくれた。
嬉しい。累さんに褒められるのはどんなことでも嬉しい。
そして、こうして身体を繋げることができて本当に嬉しい──

腰を穿つ動きが速くなる。空気が濃厚な甘いものに変わる。
「……っ」
累さんが私の中で震えた瞬間、お腹が温かいもので満たされた気がした。




*




私が日本に来てから2ヶ月。季節は本格的に秋になって夜は冷え込む日も出てきた。

あの初めてのデートの日以来私と累さんは毎晩同じベッドで寝ている。『食事』も毎日させて貰って空腹を抱えることもなくなった。
──体調に障りがある日以外は最後まで抱かれてしまうことが多いから、別の意味で体力が持たない日は多いけれど。

現在のサーヤの外見は二十歳前後の158センチ。
外見年齢と身長は2か月前から変わっていない。
181センチの累さんと並ぶとヒールを履いてもかなり身長差があるけど、累さんはちゃんと歩幅を合わせて歩いてくれる。

胸はなんとビックリEカップ。
最初の1ヶ月で3回もブラジャーを買い替えることになるほど何度も成長したけどそれも最近は落ち着いた。
「もっとサーヤのおっぱい大きくしてみようか?」なんてイタズラっ子みたいに囁く累さんを思い出して頬が熱くなる。

キッチンで大根の皮を剥いていると下腹部に鈍い痛みを感じた。
累さんは私に何もしなくて良いと言ってくれたけど、衣食住全てをお世話になるのはあまりにも申し訳なくて、累さんの食事の用意と寝室の掃除だけはさせて貰っていた。

「あ、もうそろそろ来る頃だ……」
カレンダーを確認すると鈍痛の原因がわかる。
──そう。淫魔であるサーヤの身体にも生理があったのだ。

「ナプキン買ってこないと足りないよね」
今は昼の2時前。今日の累さんはどこかの会社の会長さん?と打ち合わせだって言ってたから夕方まで帰って来ない。
今から買い物に行けば累さんの帰宅に余裕で間に合う。
欲しいものがあったら笠井さんにお願いするように言われてるけど、こればかりは自分で買ってきたい。

念のため始まってしまっても大丈夫なように準備をしてから着替える。
ドラッグストアに行くだけだから飾り気のない黒いニットにタイトなジーンズだ。
だけど累さんに貰ったチョーカーを着けるのは忘れない。

大きなピンクパールの付いた黒いチョーカー。初デートの次の日に累さんがプレゼントしてくれた思い出の品。
腕時計も、左手の薬指の指輪も、累さんが開けてくれたホールに光るピアスも。全部累さんに貰ったものだけどこのチョーカーは特別だった。


コンシェルジュさんのいるエントランスを出てドラッグストアへ歩き出す。風が冷たい。
(最初に日本に来た時はまだ夏の気配もしたのになぁ)
──なんて空を見上げていたのがいけなかったのか。


背後から急に視界と口を塞がれた。


驚いて振り返ろうとする私を数人の気配が拘束する。
抱えられ、ドン! と突き飛ばされると同時にエンジンのかかる音がした。


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