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淫魔、正式に拾われる
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「時任グループ……ですか」
「そう。けっこう色んなとこで名前が出てると思うんだけど、聞いたこと無いかな……って昨日日本に来たばかりだから無いよね」
ある。
前世の記憶によれば時任グループの名前は至るところで聞いたことがある。
累さんの言うそれと私の知ってるそれが同じなら、時任グループは世界的大企業だ。
「輸入業とか駄菓子屋経営とか節操無く色んなことに手を出してるんだけど、その中にエクソシストの派遣業も有るんだ」
私の横に座った累さんがさらりと異端な単語をぶち込んでくる。
「エクソシスト……」
「うん。だから俺もちょっと不思議な現象には耐性が有るんだよね」
「なるほどー。だから私のこともそんなに驚かなかったんですね」
……って納得して良いんだろうか。
今、私と累さんは彼の所有する車に乗っていた。
だけど運転するのは累さんじゃない。なんと専属の運転手さんだ。
「デートしようよ」
そう笑った累さんは、これからうちの執事が君の着替えや靴を持ってくるから。となんでもないことのように告げた。
……そう。時任グループ総帥のお孫さんであり、本家の長男である累さんのお家には運転手さんだけじゃなくて執事さん(&メイドさん)も普通に存在するらしい。
そして累さんの言葉から数十分後、正にドラマで見るような執事さん! と言った感じの燕尾服を着た白髪眼鏡のお爺さん──笠井さんが玄関に現れた。
当家の大事なお坊ちゃまのところにどこの馬の骨ともわからない謎の女がっ! とか言われないかビクビクしたけど、笠井さんはドアから顔だけを出して挨拶した私(だってまたしても累さんのTシャツしか着てなかったから)を見ても微笑んでいるだけだった。
「──え? 君が俺の家に居ることを笠井が怒ると思った?」
「はい……。私、顔だけでしか笠井さんにご挨拶できませんでしたし、着る服が無いとか凄い怪しかったですし」
今は人間でもないですし。
「こーら。サーヤのあんな格好を見るのは俺だけで良いんだからそこは気にしなくても良いの。笠井とは今後いくらでも会う機会は有るから」
ね? と首を傾げる累さんの視線は甘い。
「それに笠井のあの表情は、俺の家に女性が居るのを面白がってたしね」
何をどう面白がられていたんだろうか。
でもそれも気になるけど──
「今後も、会う機会が有る……んですか?」
「え? だってサーヤはうちに住むんでしょ?」
「………………ふぇっ?」
何を今さら。という顔で言われて返事に時間がかかった。
「だってサーヤは日本に来たばかりで住む所決まってないんでしょう? だったら俺の家に住めば良いよ」
「それは物凄くありがたいんですけど……」
そんなに簡単に人外家に住まわせちゃって良いの?
「幸いうちは部屋なら余ってるし。あ、掃除とか君にさせるつもりはないから安心して? ちゃんと専門のスタッフが入ってくれてるんだ」
出た。セレブ発言。
「うちでは自由に過ごしてくれて構わないから。三食昼寝つき。……食事内容は俺」
どう?
柔らかく微笑まれて私には断る理由が無かった。
「あのっ! ふつつかな淫魔ですがこれからよろしくお願いします!」
私が頭を下げると同時に乗っていた車が静かに停まる。
「さ、今日はここで君が一緒に暮らすために必要なものを揃えよう。凛……妹が選んだ服を着たサーヤも可愛いけど、服も君が好きなものを買うと良いよ」
運転手さんにドアを開けて貰って、累さんに手をとられて、私は久しぶりに日本での買い物に踏み出した。
「そう。けっこう色んなとこで名前が出てると思うんだけど、聞いたこと無いかな……って昨日日本に来たばかりだから無いよね」
ある。
前世の記憶によれば時任グループの名前は至るところで聞いたことがある。
累さんの言うそれと私の知ってるそれが同じなら、時任グループは世界的大企業だ。
「輸入業とか駄菓子屋経営とか節操無く色んなことに手を出してるんだけど、その中にエクソシストの派遣業も有るんだ」
私の横に座った累さんがさらりと異端な単語をぶち込んでくる。
「エクソシスト……」
「うん。だから俺もちょっと不思議な現象には耐性が有るんだよね」
「なるほどー。だから私のこともそんなに驚かなかったんですね」
……って納得して良いんだろうか。
今、私と累さんは彼の所有する車に乗っていた。
だけど運転するのは累さんじゃない。なんと専属の運転手さんだ。
「デートしようよ」
そう笑った累さんは、これからうちの執事が君の着替えや靴を持ってくるから。となんでもないことのように告げた。
……そう。時任グループ総帥のお孫さんであり、本家の長男である累さんのお家には運転手さんだけじゃなくて執事さん(&メイドさん)も普通に存在するらしい。
そして累さんの言葉から数十分後、正にドラマで見るような執事さん! と言った感じの燕尾服を着た白髪眼鏡のお爺さん──笠井さんが玄関に現れた。
当家の大事なお坊ちゃまのところにどこの馬の骨ともわからない謎の女がっ! とか言われないかビクビクしたけど、笠井さんはドアから顔だけを出して挨拶した私(だってまたしても累さんのTシャツしか着てなかったから)を見ても微笑んでいるだけだった。
「──え? 君が俺の家に居ることを笠井が怒ると思った?」
「はい……。私、顔だけでしか笠井さんにご挨拶できませんでしたし、着る服が無いとか凄い怪しかったですし」
今は人間でもないですし。
「こーら。サーヤのあんな格好を見るのは俺だけで良いんだからそこは気にしなくても良いの。笠井とは今後いくらでも会う機会は有るから」
ね? と首を傾げる累さんの視線は甘い。
「それに笠井のあの表情は、俺の家に女性が居るのを面白がってたしね」
何をどう面白がられていたんだろうか。
でもそれも気になるけど──
「今後も、会う機会が有る……んですか?」
「え? だってサーヤはうちに住むんでしょ?」
「………………ふぇっ?」
何を今さら。という顔で言われて返事に時間がかかった。
「だってサーヤは日本に来たばかりで住む所決まってないんでしょう? だったら俺の家に住めば良いよ」
「それは物凄くありがたいんですけど……」
そんなに簡単に人外家に住まわせちゃって良いの?
「幸いうちは部屋なら余ってるし。あ、掃除とか君にさせるつもりはないから安心して? ちゃんと専門のスタッフが入ってくれてるんだ」
出た。セレブ発言。
「うちでは自由に過ごしてくれて構わないから。三食昼寝つき。……食事内容は俺」
どう?
柔らかく微笑まれて私には断る理由が無かった。
「あのっ! ふつつかな淫魔ですがこれからよろしくお願いします!」
私が頭を下げると同時に乗っていた車が静かに停まる。
「さ、今日はここで君が一緒に暮らすために必要なものを揃えよう。凛……妹が選んだ服を着たサーヤも可愛いけど、服も君が好きなものを買うと良いよ」
運転手さんにドアを開けて貰って、累さんに手をとられて、私は久しぶりに日本での買い物に踏み出した。
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