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優しい、おとうと
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玲央くんが義弟になったのは私が13歳の時だ。
中学一年生の冬。
母の再婚相手の息子として紹介された一つ年下の男の子。
よくドラマのお見合いのシーンで使われるようなホテルのロビーに現れたその子は、外国の子役みたいに綺麗だった。
サラサラと光に透けると金色に見える、フランス人だったという彼のお母さん譲りの茶髪。角度によって緑にも茶色にも変わるグリーンブラウンの瞳。女の子かと思うほどツルツルした白い肌。
お義父さんもかなりの美丈夫だけど、私は一瞬で玲央くんに見とれてぽーっとなってしまった。
『初めまして、玲央です。父からお二人の話は聞いていました。母を母と呼んだ記憶が無いので家族になれて嬉しいです。……よろしくね。義姉さん』
お互い年頃の子供たちを連れての義父と母の再婚に、初めは難色を示す人もいたみたいだけど、そんな周囲の心配をよそに私と玲央くんはとても仲の良い義姉弟になった。
しょっちゅう忘れ物をしたりよく転んだり。ちょっと抜けている私が出かける時には必ずついて来て、手を繋いでくれたしっかり者の玲央くん。
転校先の中学校も進学した高等部も玲央くんと一緒だったから、よく2人でお昼を食べたし、登下校も当然一緒だった。
その時も手を繋いでエスコートしてくれて、それを見た同級生に「玲央くんは葵の専属王子様だね」なんてからかわれたのも懐かしい思い出だ。
出会った時に同じくらいだった身長はあっと言う間に20センチ以上抜かされてしまったけど、それでも玲央くんは私の可愛い義弟だったし、玲央くんも「義姉さん。義姉さん」と私に甘えてくれている。
私が実家を出てマンション暮らしをしたいと言った時も「義姉さんを1人になんてできないから俺と一緒に暮らそう」とすぐに提案してくれて、お義父さんの持っているマンションから一番治安の良い物件を選んでくれたのも玲央くんだった。
玲央くんは私と違ってモテるはずなのに、誕生日もクリスマスもバレンタインも「義姉さんといる方が楽しい」と言ってモテない私のために家にいてくれて、それが申し訳ないやら嬉しいやら。……ううん、実はかなり嬉しい。
私もそんな玲央くんが大好きで、……大好き過ぎてよく寝ぼけて彼のベッドに潜り込んでしまうみたいなのだけど、玲央くんは少しも嫌がらずに微笑んで私をギュッと抱きしめてくれるのだ。
毎回、玲央くんのベッドに来てしまった記憶がなくて慌てる私を見つめて蕩けるように細められるグリーンブラウンの瞳は、切なくなるくらい優しくて。
──そのグリーンブラウンの瞳が。
玲央くんの綺麗な瞳が、四つん這いになってバイブとアナルパールで遊ぶ私のあられもない姿を映している。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ?!?!?!」
この部屋が防音のしっかりした角部屋でなければ確実にご近所さんに通報されていたであろう悲鳴をあげて布団の中に潜り込む。
スイッチが入ったままのバイブの音がウィンウィンと部屋の中に響いた。
(やぁ……ん! 擦れちゃう……! でも、この状況でスイッチを止めるのも、抜くのも気まずいよぉ……!)
お願いだからこのまま何も見なかったことにしてドアを閉めて出て行って。
頭から布団を被って震えながらそう願うのに。
私の願いとは逆に玲央くんの気配がベッドに近づいてくる。
「義姉さん? そんなに布団を被ったら暑いでしょう? 顔を出して?」
「やぁ……! もう、恥ずかしくて玲央くんに会わせる顔がないよぉ……っ」
「そんな悲しいこと言わないで。恥ずかしいことなんてないから。ね?」
ベッドに腰かけた玲央くんにぽんぽんと布団の上から頭を撫でられて、そろりと隙間から外を覗く。
「ほら、ギュッてしてあげるから出てきて?」
優しい声。優しい笑顔。
いつもと変わらないグリーンブラウンの色に泣きたくなるくらいホッとして。
私は玲央くんの腕の中に飛び込んだ。
中学一年生の冬。
母の再婚相手の息子として紹介された一つ年下の男の子。
よくドラマのお見合いのシーンで使われるようなホテルのロビーに現れたその子は、外国の子役みたいに綺麗だった。
サラサラと光に透けると金色に見える、フランス人だったという彼のお母さん譲りの茶髪。角度によって緑にも茶色にも変わるグリーンブラウンの瞳。女の子かと思うほどツルツルした白い肌。
お義父さんもかなりの美丈夫だけど、私は一瞬で玲央くんに見とれてぽーっとなってしまった。
『初めまして、玲央です。父からお二人の話は聞いていました。母を母と呼んだ記憶が無いので家族になれて嬉しいです。……よろしくね。義姉さん』
お互い年頃の子供たちを連れての義父と母の再婚に、初めは難色を示す人もいたみたいだけど、そんな周囲の心配をよそに私と玲央くんはとても仲の良い義姉弟になった。
しょっちゅう忘れ物をしたりよく転んだり。ちょっと抜けている私が出かける時には必ずついて来て、手を繋いでくれたしっかり者の玲央くん。
転校先の中学校も進学した高等部も玲央くんと一緒だったから、よく2人でお昼を食べたし、登下校も当然一緒だった。
その時も手を繋いでエスコートしてくれて、それを見た同級生に「玲央くんは葵の専属王子様だね」なんてからかわれたのも懐かしい思い出だ。
出会った時に同じくらいだった身長はあっと言う間に20センチ以上抜かされてしまったけど、それでも玲央くんは私の可愛い義弟だったし、玲央くんも「義姉さん。義姉さん」と私に甘えてくれている。
私が実家を出てマンション暮らしをしたいと言った時も「義姉さんを1人になんてできないから俺と一緒に暮らそう」とすぐに提案してくれて、お義父さんの持っているマンションから一番治安の良い物件を選んでくれたのも玲央くんだった。
玲央くんは私と違ってモテるはずなのに、誕生日もクリスマスもバレンタインも「義姉さんといる方が楽しい」と言ってモテない私のために家にいてくれて、それが申し訳ないやら嬉しいやら。……ううん、実はかなり嬉しい。
私もそんな玲央くんが大好きで、……大好き過ぎてよく寝ぼけて彼のベッドに潜り込んでしまうみたいなのだけど、玲央くんは少しも嫌がらずに微笑んで私をギュッと抱きしめてくれるのだ。
毎回、玲央くんのベッドに来てしまった記憶がなくて慌てる私を見つめて蕩けるように細められるグリーンブラウンの瞳は、切なくなるくらい優しくて。
──そのグリーンブラウンの瞳が。
玲央くんの綺麗な瞳が、四つん這いになってバイブとアナルパールで遊ぶ私のあられもない姿を映している。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ?!?!?!」
この部屋が防音のしっかりした角部屋でなければ確実にご近所さんに通報されていたであろう悲鳴をあげて布団の中に潜り込む。
スイッチが入ったままのバイブの音がウィンウィンと部屋の中に響いた。
(やぁ……ん! 擦れちゃう……! でも、この状況でスイッチを止めるのも、抜くのも気まずいよぉ……!)
お願いだからこのまま何も見なかったことにしてドアを閉めて出て行って。
頭から布団を被って震えながらそう願うのに。
私の願いとは逆に玲央くんの気配がベッドに近づいてくる。
「義姉さん? そんなに布団を被ったら暑いでしょう? 顔を出して?」
「やぁ……! もう、恥ずかしくて玲央くんに会わせる顔がないよぉ……っ」
「そんな悲しいこと言わないで。恥ずかしいことなんてないから。ね?」
ベッドに腰かけた玲央くんにぽんぽんと布団の上から頭を撫でられて、そろりと隙間から外を覗く。
「ほら、ギュッてしてあげるから出てきて?」
優しい声。優しい笑顔。
いつもと変わらないグリーンブラウンの色に泣きたくなるくらいホッとして。
私は玲央くんの腕の中に飛び込んだ。
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