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後日談
同い年の夫
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「わぁ……っ。綺麗……」
見開きを使って一人だけを大きく写した雑誌のページ。
まるでこちらを射抜くような緑色の瞳に、思わずため息が漏れた。
「ふふ、前髪上げてるの、新鮮」
珍しく後ろに流した金色の髪。美しい身体のラインと脚の長さを際立たせる細身のスーツ。
よく知っているはずのその顔が、紙面を通すと遠い世界の住人に見える。
「あ、こっちはモノクロなんだ。……んー、この写り方だと、ちょっと鷹ちゃんに似てるかも?」
「──ただいま。ナツ」
「! びっくりしたっ。お帰り、詩音」
座っていたソファの背後から急に声をかけられて、バクバクと鳴る自分の心臓の音を聞きながら振り返る。──と、そこには今まさに見ていた雑誌の中にいた人物が立っていた。
写真とは違って前髪は下ろしているし、ラフな格好だけど、いつ見ても詩音は外国のモデルさんみたいだ。
(みたい。じゃなくて実際に自分の会社のブランドのモデルもやってるんだよね)
「何見てんの? ああ、こないだのコレクションのやつか。……俺、これ家に持って帰って来てたっけ?」
「本屋さんで見つけたから買ったの。それより詩音、いきなり後ろからじゃなくて、もっと前から声かけてよ」
「玄関から5回くらい呼んだけど? 返事がないから具合が悪いのかと思って焦ったけど、気づいてなかっただけなら良かった」
しかも俺に夢中になってたってことだもんな。気分いい。
そう言ってただいまのキスをおでこにされた。
「え、そうだったの? ごめんねっ。この家広いから、聞こえなかった」
「四人で住むんだからこれくらい普通だろ」
「詩音、億ションの最上階ワンフロアぶち抜きはたぶんあんまり一般的ではないと思うよ……」
「セキュリティはしっかりしてた方がいいんだよ。……なぁ。ナツからのおかえりのキスは?」
「っ。…………屈んで詩音」
「ん」
私の唇が届きやすいように、正面まで来て屈んでくれた詩音の頬っぺたにキスをする。
「……唇にすればいいのに」
「恥ずかしいの」
「俺たち、新婚さんじゃん」
「でも恥ずかしいのっ! 詩音相手は特に!」
「はぁ? なんで俺相手は特に恥ずかしいんだよ」
「だって詩音は、なんか一番、幼馴染みってイメージが強いんだもん」
「でも今は夫だろ」
そう言いながら触れられた私の左手の薬指は、三色の宝石がはまった指輪で飾られている。
赤、緑、青。
鷹ちゃん、詩音、司くんをイメージした3つの宝石。
赤い石は最初ルビーかと思ったけれど、それはレッドダイヤモンドと呼ばれる宝石で、とても希少で高価なものらしい。
緑と青の石も同様に価値があるものだとか。
(こんな高いの怖くてつけられないって言ったのに、三人とも『無くしたり傷ついたりしたらまた新しく作ればいい』なんて笑うんだから……!)
あの日。朝食後にラスベガスへ連れて行かれたあの日。
カジノのVIPルームで。
三人の中で誰が一番最初に一億円を稼いだかが決定した瞬間。
タキシードに身を包んだ彼らは、彼らの手によってドレスアップされた私に向かって跪いてこの指輪を差し出した。
あれから1ヶ月。
入籍をした相手は一人だけれど、私は事実三人の夫と一緒にこの広い家で暮らしている。
「詩音もうご飯食べる? それともちょっとゆっくりする?」
「んー……今日、兄貴と司は?」
「鷹ちゃんは時任グループの社長さん?との会食で、司くんはお義父さんのお手伝いだって」
「……ってことはしばらく二人は帰って来ないのか。ナツ、俺と風呂入る?」
「恥ずかしいから嫌」
「そう言うと思ったよ。じゃあ俺の膝の上でその本読めよ。撮影の時の話してやる」
「本当? 聞きたいっ」
手招きされて詩音の膝の上に横向きで座る。膝の上に座るのもなかなか照れくさいけれど、一緒にお風呂に入るのに比べれば断然マシだ。
「この写真撮ってくれたのって有名なカメラマンさんなんだよね?」
「そう、撮影のために来日してくれたんだ」
「さすがだよねっ。この睨みながらネクタイ噛んでる写真、ドキドキしちゃった」
「あんま考えてなかったけど、お前の好みなら良かった」
「あとこれ! 猫と写ってるやつ!」
「これは撮るのけっこう大変だったな」
「それから──ひゃあっ?!」
なんの前触れもなく首を甘噛みされて変な声が出てしまった。
「詩音っ?!」
「んー?」
「ちょ、やっ、なに!」
「気にしないで本見てろよ。ほら、これで着けてるピアス、お前の指輪の石と同じやつだぜ」
「見てろって言われても……! ゃ、ぁん──!」
首の後ろをちゅうちゅうと吸いながら、詩音が白い手をスカートの裾から侵入させる。なれた指が下着の上から快楽の芯を刺激する。
「や、だめ詩音。私、まだお風呂入ってな……っ」
「ナツの味がして興奮する」
「だめ、だめだったらぁ……!」
「でも乳首もクリトリスも勃ってんじゃん」
「ひんっ」
いつの間にかずらされていたブラから溢れた先端を、ギュっと強めに摘ままれてそれだけで甘い痺れが全身に広がっていく。
受け入れ始めた身体がグチュグチュとはしたない水音を立てて。蜜を絡めた指が加速する。
「しお、ん……っ」
舌を絡め合いながら名前を呼べば、予想以上に甘ったるい声が出る。
「……ナツ。今は、お前を独占させて」
お風呂にまだ入ってないこととか。ご飯だってまだ食べてないだとか。全部理性と一緒に吹き飛んで。
私たちは鷹ちゃんと司くんが帰ってくるまでソファの上で抱き合った。
見開きを使って一人だけを大きく写した雑誌のページ。
まるでこちらを射抜くような緑色の瞳に、思わずため息が漏れた。
「ふふ、前髪上げてるの、新鮮」
珍しく後ろに流した金色の髪。美しい身体のラインと脚の長さを際立たせる細身のスーツ。
よく知っているはずのその顔が、紙面を通すと遠い世界の住人に見える。
「あ、こっちはモノクロなんだ。……んー、この写り方だと、ちょっと鷹ちゃんに似てるかも?」
「──ただいま。ナツ」
「! びっくりしたっ。お帰り、詩音」
座っていたソファの背後から急に声をかけられて、バクバクと鳴る自分の心臓の音を聞きながら振り返る。──と、そこには今まさに見ていた雑誌の中にいた人物が立っていた。
写真とは違って前髪は下ろしているし、ラフな格好だけど、いつ見ても詩音は外国のモデルさんみたいだ。
(みたい。じゃなくて実際に自分の会社のブランドのモデルもやってるんだよね)
「何見てんの? ああ、こないだのコレクションのやつか。……俺、これ家に持って帰って来てたっけ?」
「本屋さんで見つけたから買ったの。それより詩音、いきなり後ろからじゃなくて、もっと前から声かけてよ」
「玄関から5回くらい呼んだけど? 返事がないから具合が悪いのかと思って焦ったけど、気づいてなかっただけなら良かった」
しかも俺に夢中になってたってことだもんな。気分いい。
そう言ってただいまのキスをおでこにされた。
「え、そうだったの? ごめんねっ。この家広いから、聞こえなかった」
「四人で住むんだからこれくらい普通だろ」
「詩音、億ションの最上階ワンフロアぶち抜きはたぶんあんまり一般的ではないと思うよ……」
「セキュリティはしっかりしてた方がいいんだよ。……なぁ。ナツからのおかえりのキスは?」
「っ。…………屈んで詩音」
「ん」
私の唇が届きやすいように、正面まで来て屈んでくれた詩音の頬っぺたにキスをする。
「……唇にすればいいのに」
「恥ずかしいの」
「俺たち、新婚さんじゃん」
「でも恥ずかしいのっ! 詩音相手は特に!」
「はぁ? なんで俺相手は特に恥ずかしいんだよ」
「だって詩音は、なんか一番、幼馴染みってイメージが強いんだもん」
「でも今は夫だろ」
そう言いながら触れられた私の左手の薬指は、三色の宝石がはまった指輪で飾られている。
赤、緑、青。
鷹ちゃん、詩音、司くんをイメージした3つの宝石。
赤い石は最初ルビーかと思ったけれど、それはレッドダイヤモンドと呼ばれる宝石で、とても希少で高価なものらしい。
緑と青の石も同様に価値があるものだとか。
(こんな高いの怖くてつけられないって言ったのに、三人とも『無くしたり傷ついたりしたらまた新しく作ればいい』なんて笑うんだから……!)
あの日。朝食後にラスベガスへ連れて行かれたあの日。
カジノのVIPルームで。
三人の中で誰が一番最初に一億円を稼いだかが決定した瞬間。
タキシードに身を包んだ彼らは、彼らの手によってドレスアップされた私に向かって跪いてこの指輪を差し出した。
あれから1ヶ月。
入籍をした相手は一人だけれど、私は事実三人の夫と一緒にこの広い家で暮らしている。
「詩音もうご飯食べる? それともちょっとゆっくりする?」
「んー……今日、兄貴と司は?」
「鷹ちゃんは時任グループの社長さん?との会食で、司くんはお義父さんのお手伝いだって」
「……ってことはしばらく二人は帰って来ないのか。ナツ、俺と風呂入る?」
「恥ずかしいから嫌」
「そう言うと思ったよ。じゃあ俺の膝の上でその本読めよ。撮影の時の話してやる」
「本当? 聞きたいっ」
手招きされて詩音の膝の上に横向きで座る。膝の上に座るのもなかなか照れくさいけれど、一緒にお風呂に入るのに比べれば断然マシだ。
「この写真撮ってくれたのって有名なカメラマンさんなんだよね?」
「そう、撮影のために来日してくれたんだ」
「さすがだよねっ。この睨みながらネクタイ噛んでる写真、ドキドキしちゃった」
「あんま考えてなかったけど、お前の好みなら良かった」
「あとこれ! 猫と写ってるやつ!」
「これは撮るのけっこう大変だったな」
「それから──ひゃあっ?!」
なんの前触れもなく首を甘噛みされて変な声が出てしまった。
「詩音っ?!」
「んー?」
「ちょ、やっ、なに!」
「気にしないで本見てろよ。ほら、これで着けてるピアス、お前の指輪の石と同じやつだぜ」
「見てろって言われても……! ゃ、ぁん──!」
首の後ろをちゅうちゅうと吸いながら、詩音が白い手をスカートの裾から侵入させる。なれた指が下着の上から快楽の芯を刺激する。
「や、だめ詩音。私、まだお風呂入ってな……っ」
「ナツの味がして興奮する」
「だめ、だめだったらぁ……!」
「でも乳首もクリトリスも勃ってんじゃん」
「ひんっ」
いつの間にかずらされていたブラから溢れた先端を、ギュっと強めに摘ままれてそれだけで甘い痺れが全身に広がっていく。
受け入れ始めた身体がグチュグチュとはしたない水音を立てて。蜜を絡めた指が加速する。
「しお、ん……っ」
舌を絡め合いながら名前を呼べば、予想以上に甘ったるい声が出る。
「……ナツ。今は、お前を独占させて」
お風呂にまだ入ってないこととか。ご飯だってまだ食べてないだとか。全部理性と一緒に吹き飛んで。
私たちは鷹ちゃんと司くんが帰ってくるまでソファの上で抱き合った。
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