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第二話 能力発揮
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「えと……気持ちよかった、ですか……?」
事後同然のまったりとした心持ちで暫らくの間、天井を眺めていると隣から鈴を転がしたような愛らしい声が聞えてきた。
「うん。すごく良かった。あんなに興奮したのは初めてだったよ……って、え!?」
彼女の言葉が理解できる。どことなく英語っぽい部分があるが、それもまとめて日本語同様に理解が出来ている。
「やっとお話できました。改めてお願いします。世界を救ってください、勇者様!」
少女は寝転がった私の上に覆いかぶさり、じっと見つめて言い放った。
「私の名前はレリエと言います」
肌蹴ていたローブを正し、改めて俺の目の前に座った少女はそう名乗った。
「俺は優留。そうだなぁ、ユールって呼んでくれてもいいよ」
「じゃあ、ユールさんで……」
少し控えめに呼んでくれるレリエはすごく可愛い。
「えっとさ、俺がレリエの言葉を理解できるのって――」
「そのぉ……さっき、私と……したから、ユールさんにはこの世界の言葉に関する知識が備わったんです」
俺の言葉の先を読み、レリエが顔を真っ赤にして説明してくれる。
「ユールさんの能力はご自分で理解なさっているようですし……説明はいいですよね? その力で魔王を倒し、世界を救って欲しいのです」
顔を紅潮させつつも真剣な表情で訴えるレリエ。キスで頬を染める時点ですごく初心で可愛い。まぁ、さっき俺がしたのはキスというより……。あぁ、幼い少女になんてことを……今更すぎるが少しだけ罪悪感が募ってきた。
「ユールさん?」
「ん!? 大丈夫だ。魔王を倒すんだろ?」
俺がそう返事をすると、レリエはそれもなのですがと前置いて、
「その口調は……」
言いたいことは分かった。確かに、俺……俺も禁止しよう。私の口調は男のまま残ってしまっている。レリエに悪影響を及ぼしてしまうかもしれない。なんとか矯正しないとな。
「えっと……直すわ。大丈夫、私なら出来る! あ、そういえば――」
おr――私は一つ聞きたいことを閃き、それをレリエに尋ねる。
「この能力は、純粋に知識や経験だけを得るんじゃなくて、言語の場合はこうして使えている。それって、かなり凄いことだって思うんだ。……思うの。で、何か欠点とかデメリットがあるんじゃないかって思うんだけど、どう?」
私の問いにレリエはすぐに答えてくれた。
「あります。まず一つ目は、先天的に備わっている力は貰えないということです。腕力とか魔力は勇者の能力ではどうしようもないです」
……ということは、ヨガの先生にキスをしても、上達するやり方は分かっても、実際に身体が柔らかくなるわけではない、ということだな。……ということなのね。
「二つ目は、相手の同意が必要という事です。相手がユールさんに“知識を与える”ということを意識してないとダメなんです。与えた知識や経験がなくなる訳ではなんですけどね。もう一つは、能力は一人に対して一日一回しか発動しないというデメリットもあります」
無理やり奪うのも不可能だし、キスしまくって即日強化というわけにもいかないらしい。まぁ、人数が制限されていないのが救いだろうか。
「じゃあさ、勇者様の為なら何でもします! っていう女性はいるの?」
「殆どいないでしょう。勇者様の存在を知っている人が少ないですし……」
「まぁ、レリエが可愛いからレリエだけでもいいかな」
私としてはハーレムというのも捨てがたいけど、こんな美少女をずっと独占というのも悪くない。でも、顔を真赤にしながらレリエは頭を横に振った。
「ユールさんには色んな人とキスしてもらわないと困ります。私の持つ知識だけでは、人間としても太刀打ちできません」
まだ私の中のレリエから貰った知識は言語に関するものだけだ。彼女の言いようからすると、レリエの持っている知識は、かなり偏りがあるようだ。
「えっとまぁ、勇者について大体はわかった。……で、その魔王って言うのは?」
「まず魔族の説明をしますね。魔族というのは、我々人間より数が少ない代わりに個々が非常に強い種族です。魔族にもいろいろあるんですけど、口頭での説明は省きます。彼らは単純な腕力も、魔力総量も、生命力も強いんです。そんな強力な魔族の中で最強であるのが魔王なのです」
レリエが説明してくれた内容のほとんどは、私の知識の中にもあった“魔王”という言葉から理解していたが、改めて聞くとその強大さを再認識する。
「魔王という存在は人知を超えています。ですから、我々人類も人類でありながら人類を超える必要があるんです。だからこそ、勇者であるユールさんをお呼びたんです」
「あ。やっぱりレリエが私を呼び出したんだ。いや、それはいい。ただ……私、人間を超えられるの?」
「と、言いますと?」
今いる祭壇のような空間がやはり儀式場であることに納得し、レリエに違う質問をぶつける。質問の意図を理解しきれていない彼女に、私が思ったことを素直に告げる。
「私の力で他人の知識や経験を得たとしても、腕力とか魔力は無理なんだから……私が行き着くのは凄く器用な最強の“人間”なんじゃないかな?」
私の疑問の声に、レリエはかなり困惑している。
「えっと、えぇと……た、確かに……」
表情がみるみる曇っていき、上手く言葉を発せなくなっている。流石にそんなこと言うべきじゃなかったかなぁ。
「ごめんねレリエ。私、できる限りのことはするから、そんな悲しそうにしないで」
「ありがとう、ございます……うぅ……」
泣きそうなレリエを慰めるつもりだったのに、逆に泣き出してしまった。私はどうしたらいいか分からなくて、結局レリエが泣き止むまで頭を撫で続けるのだった。
事後同然のまったりとした心持ちで暫らくの間、天井を眺めていると隣から鈴を転がしたような愛らしい声が聞えてきた。
「うん。すごく良かった。あんなに興奮したのは初めてだったよ……って、え!?」
彼女の言葉が理解できる。どことなく英語っぽい部分があるが、それもまとめて日本語同様に理解が出来ている。
「やっとお話できました。改めてお願いします。世界を救ってください、勇者様!」
少女は寝転がった私の上に覆いかぶさり、じっと見つめて言い放った。
「私の名前はレリエと言います」
肌蹴ていたローブを正し、改めて俺の目の前に座った少女はそう名乗った。
「俺は優留。そうだなぁ、ユールって呼んでくれてもいいよ」
「じゃあ、ユールさんで……」
少し控えめに呼んでくれるレリエはすごく可愛い。
「えっとさ、俺がレリエの言葉を理解できるのって――」
「そのぉ……さっき、私と……したから、ユールさんにはこの世界の言葉に関する知識が備わったんです」
俺の言葉の先を読み、レリエが顔を真っ赤にして説明してくれる。
「ユールさんの能力はご自分で理解なさっているようですし……説明はいいですよね? その力で魔王を倒し、世界を救って欲しいのです」
顔を紅潮させつつも真剣な表情で訴えるレリエ。キスで頬を染める時点ですごく初心で可愛い。まぁ、さっき俺がしたのはキスというより……。あぁ、幼い少女になんてことを……今更すぎるが少しだけ罪悪感が募ってきた。
「ユールさん?」
「ん!? 大丈夫だ。魔王を倒すんだろ?」
俺がそう返事をすると、レリエはそれもなのですがと前置いて、
「その口調は……」
言いたいことは分かった。確かに、俺……俺も禁止しよう。私の口調は男のまま残ってしまっている。レリエに悪影響を及ぼしてしまうかもしれない。なんとか矯正しないとな。
「えっと……直すわ。大丈夫、私なら出来る! あ、そういえば――」
おr――私は一つ聞きたいことを閃き、それをレリエに尋ねる。
「この能力は、純粋に知識や経験だけを得るんじゃなくて、言語の場合はこうして使えている。それって、かなり凄いことだって思うんだ。……思うの。で、何か欠点とかデメリットがあるんじゃないかって思うんだけど、どう?」
私の問いにレリエはすぐに答えてくれた。
「あります。まず一つ目は、先天的に備わっている力は貰えないということです。腕力とか魔力は勇者の能力ではどうしようもないです」
……ということは、ヨガの先生にキスをしても、上達するやり方は分かっても、実際に身体が柔らかくなるわけではない、ということだな。……ということなのね。
「二つ目は、相手の同意が必要という事です。相手がユールさんに“知識を与える”ということを意識してないとダメなんです。与えた知識や経験がなくなる訳ではなんですけどね。もう一つは、能力は一人に対して一日一回しか発動しないというデメリットもあります」
無理やり奪うのも不可能だし、キスしまくって即日強化というわけにもいかないらしい。まぁ、人数が制限されていないのが救いだろうか。
「じゃあさ、勇者様の為なら何でもします! っていう女性はいるの?」
「殆どいないでしょう。勇者様の存在を知っている人が少ないですし……」
「まぁ、レリエが可愛いからレリエだけでもいいかな」
私としてはハーレムというのも捨てがたいけど、こんな美少女をずっと独占というのも悪くない。でも、顔を真赤にしながらレリエは頭を横に振った。
「ユールさんには色んな人とキスしてもらわないと困ります。私の持つ知識だけでは、人間としても太刀打ちできません」
まだ私の中のレリエから貰った知識は言語に関するものだけだ。彼女の言いようからすると、レリエの持っている知識は、かなり偏りがあるようだ。
「えっとまぁ、勇者について大体はわかった。……で、その魔王って言うのは?」
「まず魔族の説明をしますね。魔族というのは、我々人間より数が少ない代わりに個々が非常に強い種族です。魔族にもいろいろあるんですけど、口頭での説明は省きます。彼らは単純な腕力も、魔力総量も、生命力も強いんです。そんな強力な魔族の中で最強であるのが魔王なのです」
レリエが説明してくれた内容のほとんどは、私の知識の中にもあった“魔王”という言葉から理解していたが、改めて聞くとその強大さを再認識する。
「魔王という存在は人知を超えています。ですから、我々人類も人類でありながら人類を超える必要があるんです。だからこそ、勇者であるユールさんをお呼びたんです」
「あ。やっぱりレリエが私を呼び出したんだ。いや、それはいい。ただ……私、人間を超えられるの?」
「と、言いますと?」
今いる祭壇のような空間がやはり儀式場であることに納得し、レリエに違う質問をぶつける。質問の意図を理解しきれていない彼女に、私が思ったことを素直に告げる。
「私の力で他人の知識や経験を得たとしても、腕力とか魔力は無理なんだから……私が行き着くのは凄く器用な最強の“人間”なんじゃないかな?」
私の疑問の声に、レリエはかなり困惑している。
「えっと、えぇと……た、確かに……」
表情がみるみる曇っていき、上手く言葉を発せなくなっている。流石にそんなこと言うべきじゃなかったかなぁ。
「ごめんねレリエ。私、できる限りのことはするから、そんな悲しそうにしないで」
「ありがとう、ございます……うぅ……」
泣きそうなレリエを慰めるつもりだったのに、逆に泣き出してしまった。私はどうしたらいいか分からなくて、結局レリエが泣き止むまで頭を撫で続けるのだった。
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