僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ

文字の大きさ
上 下
77 / 83
部活はハーレムじゃありません!!

#76 休日デートで意外な出会い

しおりを挟む
 六月ももう終わろうかという最終土曜日、ボクは麻琴とショッピングモールにお買い物にやってきた。陸上部の活動は雨でお休みということらしい。最近の麻琴はボクのことを第一に考えて動いているっぽいから、本当は体育館でトレーニングとか、そういった活動があるんじゃないかとすごく気にしたんだけど、それは明日らしいので、今日は麻琴を信じて荷物持ちに連れてきてしまった。
 まぁ、麻琴も麻琴で欲しいものがあるらしい。……で、それがこれってわけね。

「このシリーズ、それこそ中学生の頃にやったけど、ちょっと苦手なんだよねぇ」
「大丈夫だって、あれからもう三年も経ってるんだよ。操作性というか、まあ爽快感がすっごくなってるんだって」

 麻琴が見せてきているのはゲームソフト。アクションゲームで、主人公は狩人になって大型の怪獣みたいなモンスターを討伐して、肉とか皮とか牙とか、素材を手に入れるゲームだ。シリーズの二作品目くらいを中学生の頃にプレイした(その時はクラスメイトの男子に誘われて、ボクから麻琴を誘った。結局、麻琴の方がはまったらしい)が、その五作品目がゴールデンウイークくらいに発売されて、麻琴は春の大会の成績が良かったから、これを買ってもらう約束を親としていたらしい。

「私が悠希に遊んでほしいから、買ってプレゼントするの」
「え、いいよ。だった自分で買う」
「いいの。私がそうしたいんだから、その……彼女として」

 はにかむ麻琴にきゅんとしてしまったので、おとなしく麻琴に買ってもらうことにした。
 このゲームの配信は見てないけど、最近推しのヴァーチャル動画配信者、ネノちゃんもこれをプレイしているし、ひょっとしたら夏希も遊ぶかもしれないし、ちょっとやってみようかな。
 「で? 悠希も家電で何か買いたいものがあるんでしょう?」

 ゲームソフトを買う時って、我が家はもっぱら通販で済ませてしまうのだけど、麻琴は昔からおもちゃ屋さんとか家電量販店で買うことが多いらしい。ポイントとの兼ね合いらしい。というわけで、ここからはボクが欲しい調理家電のコーナーを見ることにした。
 ブレンダーとか炭酸水メーカーとか欲しいものはあるんだけど、最近はお菓子を作る機会が増えつつあるのでハンドミキサーを新調しようと思っている。大型家電は通販の方が便利だけど、手持ちするアイテムについては実際に店舗で大きさとか重さを体験してから買いたいと思っている。
 そんな話を麻琴にしながら、ゲーム機器が置いてあるコーナーからオーディオのコーナーを経由して調理家電のコーナーを目指すと、見覚えのある長身が目についた。

「あれ、静真さん?」
「あ、姫宮先輩。おはようござ……うぅん、こんにちは?」

 部活の時は夕方なのに何故かおはようございますで調理室に入ってくるから、流石に今はお昼過ぎだし校外なので、こんにちはでいいと思う。

「こんにちは、なんだか本格的なヘッドセットだね」

 静真さんがしげしげとみていたのはヘッドセット。ヘッドフォンにマイクもついた、なんかのオペレーターさんがしてそうな本格的なものだ。

「悠希、この人は?」
「あれ? 会ったことなかったっけ? 料理部の後輩、宗森静真さんだよ。静真さん、こっちは幼馴染の雛田麻琴」
「初めまして雛田先輩。一年二組の宗森です。姫宮先輩には料理のこと本当に一から教わっていて、すごくお世話になってます」

 静真さんが長身をくっと折り曲げて麻琴に挨拶する。麻琴は礼儀正しく挨拶されてちょっと緊張したのか、へこへこと頭を下げる。

「えっと、こちらこそ悠希がお世話になってまして」
「……麻琴」

 なんかかっこわるかったので、お尻を軽くたたいて落ち着かせる。

「静真さん、そういうの好きなの?」
「はい。そろそろ新調しようかと思ったんですけど、ちょっとこれは高いのでやめようかなと」

 静真さんが振り向いてヘッドセットをディスプレイに戻す時、当然彼女はボクらに背中を向けるのだが彼女の背負っているリュックに気になるものがついていた。

「静真さんこれ、ネノちゃんの缶バッジだよね? え、こんなグッズいつの間に……? ていうか、こっちのストラップも、うわぁ。可愛い。見覚えなーい。個人で配信してる人のグッズってそんなに出る? 缶バッジの立ち絵は見覚えあるけど……ストラップは見覚えないや。こんな立ち絵あったっけ。ファンメイド?」
「……先輩、いっきに喋られても。というか、ネノご存じなんですか?」
「うん。春頃からちょうど見てて、それこそ登録者数が二桁の頃から見てるよ」

 なんのきっかけか忘れたけど、オススメ動画に表示されていたので見始めた。そのころ登録者数はもう少しで百人って感じだったが、ちなみに今は二千人前後を増減しているはず。狩人のゲームを配信した頃から着実に伸びだしたっぽい。古参アピールしておかねば。

「あ、あの……先輩、今度またお話しするお時間いただいてもいいですか? できれば来週の土曜に私の家で、なんて」
「え? うーん。でも大丈夫? テストシーズン始まるけど。部活も水曜でいったん休止だし」
「そうですよね……お忙しい時期にお時間割いていただくのも申し訳なくて。あの、じゃあ夏休みの初日とか!」

 静真さんの家で、ということで困惑していた麻琴も、流石に夏休みという単語には聞き逃せないとばかりに反応した。

「ちょいちょい、私というものがありながらそりゃちっと聞き逃せないね」
「え……?」

 静真さんがぽかんとした表情を浮かべるが、まぁ当然と言えば当然……かな? ボクと麻琴が付き合っているっていう認識がなければ、このリアクションの意味は分かるまい。

「まぁ真剣は話でしょうから、聞くわ。じゃあ、またその時に。行くよ麻琴」
「お、おうん……悠希になにかしたらただじゃおかないから!」
「麻琴っ!!」

 静真さんからわりと衝撃的な話をされるのは、もうちょっと後の話。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

処理中です...