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二年生になりました♪
#73 決意の金曜日
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その週の金曜日、ボクは何となく麻琴と一緒に帰りたいと思い、時間を潰すべく図書館にやってきた。部活のお茶会へ行こうかとも思ったけれど、美星ちゃんとの確執を考えるとなかなか足が向かなかった。月末に行われる実力テストの勉強をするべく手近な席に着いて教科書を広げる。
最近なにかと考えることは麻琴のことか美星ちゃんのことだ。麻琴のことは好きだし、一緒にいられる時間が少ないと寂しい。でも付き合っているわけじゃないし……。いっそボクから……。でもボクは麻琴のことをどう好きなんだろう。
「――さん、姫宮さん?」
「んぁ? あ、島さん」
「はい、島由花菜です。相席失礼します」
そう言ってちょこんと座った小柄な女の子。文学少女然としているが理系で、うちのクラスの委員長。
「なんだかお困りのようだったので。難しい問題でもありました?」
そう言えば島さんって川藤さん明音さんに次いで学年三位だったはず。恋の難問にも答えられたらいいのになんて、ちょっとアニソンの歌詞みたいなこと考えちゃったな。
「島さんは――」
人に聞くことではない、答えは自分の中にしかない。分かる、それは分かるのだけれど……ボクは恋の話題をグッと押し込んで友達について聞いてみることにした。
「島さんって友達いる?」
しまった……めちゃめちゃ失礼なことをほぼ初対面の関係なのに言ってしまった。話題を逸らすことに意識を割きすぎて発言内容にまで気が回らなかった。
「あ、その。ほら、人によく頼られている様子を見ていて、島さん自身が頼れる人はいるんですか? みたいなことで……その、失礼言ってごめんなさい」
「ふふ、いいんです。頼れる人は確かにいません。頼られることで自分が生きていると感じられるんです。そういう中学生でした。中学では生徒会長を任され、高校に入ってクラス委員になり、生徒会選挙に出るよう薦められるがままに出ました。……でも、自分の意思がないと当選出来ないんですね。川藤さんすごいなぁ……。わたしより成績もいいし、足も速いそうですね」
自嘲するように呟く島さん。頼られることで生を感じるというのは何だか、朝にやってる魔法少女アニメの主人公みたいな気質だなぁとオタク的な感想を抱いてしまった。彼女に頼ってと言うことは難しいし、頼った方がいいのかな。
「親友から、恋人になれると思う?」
「姫宮さんは意外と酷な人ですね。親友がいないので分かりません」
思い切り頭を下げた。立場が逆ならボクは三日三晩引きこもりたくなるほどにいたたまれない気持ちになると思う。
「あ、頭を上げてください。すみません、冗談のつもりだったのですが……」
お互いにぺこぺこしていると、図書委員さんからすごく怪訝な目で見られてしまった。
「きっとその悩みは、友達から親友にステップアップする時の悩みなんでしょうね、わたしからすれば。親友から恋人、ですか。うーん、見えている目標を達成すると、今は見えない次の目標が現われますよね。きっとそれが不安なんですよ」
初対面から知り合いに、友達に、親友に。友情を育んでいく。男女なら、その先に恋人や夫婦がある。でも同性だから恋人になっていけないわけじゃない。今、ボクと麻琴は同性で、でもお互いに恋人になりたいと思っている。じゃあ、その先って何だろう?
「一人で悩んでも分からないなら、誰かを頼ればいいと思います。一緒に悩んでくれる人が、いるんじゃありませんか?」
なるほど、確かにそうだ。あぁ、麻琴に会いたい。恋人になったらどうなるかなんて、恋人になってから考えればいいじゃないか。もしかしたら麻琴はもうボクを恋人だって思ってくれているかもしれない。曖昧でうやむやにしていたのはボクだけ。真っ直ぐなのが麻琴の良さなんだから。
「ありがとう島さ――ううん、由花菜ちゃん」
「はい、迷ったら頼ってください。悠希ちゃん。友達、だもんね?」
ボクは頷いて、小さく手を振って図書室を後にした。何も特別な日じゃないけれど……伝えたい。全部、麻琴に。
最近なにかと考えることは麻琴のことか美星ちゃんのことだ。麻琴のことは好きだし、一緒にいられる時間が少ないと寂しい。でも付き合っているわけじゃないし……。いっそボクから……。でもボクは麻琴のことをどう好きなんだろう。
「――さん、姫宮さん?」
「んぁ? あ、島さん」
「はい、島由花菜です。相席失礼します」
そう言ってちょこんと座った小柄な女の子。文学少女然としているが理系で、うちのクラスの委員長。
「なんだかお困りのようだったので。難しい問題でもありました?」
そう言えば島さんって川藤さん明音さんに次いで学年三位だったはず。恋の難問にも答えられたらいいのになんて、ちょっとアニソンの歌詞みたいなこと考えちゃったな。
「島さんは――」
人に聞くことではない、答えは自分の中にしかない。分かる、それは分かるのだけれど……ボクは恋の話題をグッと押し込んで友達について聞いてみることにした。
「島さんって友達いる?」
しまった……めちゃめちゃ失礼なことをほぼ初対面の関係なのに言ってしまった。話題を逸らすことに意識を割きすぎて発言内容にまで気が回らなかった。
「あ、その。ほら、人によく頼られている様子を見ていて、島さん自身が頼れる人はいるんですか? みたいなことで……その、失礼言ってごめんなさい」
「ふふ、いいんです。頼れる人は確かにいません。頼られることで自分が生きていると感じられるんです。そういう中学生でした。中学では生徒会長を任され、高校に入ってクラス委員になり、生徒会選挙に出るよう薦められるがままに出ました。……でも、自分の意思がないと当選出来ないんですね。川藤さんすごいなぁ……。わたしより成績もいいし、足も速いそうですね」
自嘲するように呟く島さん。頼られることで生を感じるというのは何だか、朝にやってる魔法少女アニメの主人公みたいな気質だなぁとオタク的な感想を抱いてしまった。彼女に頼ってと言うことは難しいし、頼った方がいいのかな。
「親友から、恋人になれると思う?」
「姫宮さんは意外と酷な人ですね。親友がいないので分かりません」
思い切り頭を下げた。立場が逆ならボクは三日三晩引きこもりたくなるほどにいたたまれない気持ちになると思う。
「あ、頭を上げてください。すみません、冗談のつもりだったのですが……」
お互いにぺこぺこしていると、図書委員さんからすごく怪訝な目で見られてしまった。
「きっとその悩みは、友達から親友にステップアップする時の悩みなんでしょうね、わたしからすれば。親友から恋人、ですか。うーん、見えている目標を達成すると、今は見えない次の目標が現われますよね。きっとそれが不安なんですよ」
初対面から知り合いに、友達に、親友に。友情を育んでいく。男女なら、その先に恋人や夫婦がある。でも同性だから恋人になっていけないわけじゃない。今、ボクと麻琴は同性で、でもお互いに恋人になりたいと思っている。じゃあ、その先って何だろう?
「一人で悩んでも分からないなら、誰かを頼ればいいと思います。一緒に悩んでくれる人が、いるんじゃありませんか?」
なるほど、確かにそうだ。あぁ、麻琴に会いたい。恋人になったらどうなるかなんて、恋人になってから考えればいいじゃないか。もしかしたら麻琴はもうボクを恋人だって思ってくれているかもしれない。曖昧でうやむやにしていたのはボクだけ。真っ直ぐなのが麻琴の良さなんだから。
「ありがとう島さ――ううん、由花菜ちゃん」
「はい、迷ったら頼ってください。悠希ちゃん。友達、だもんね?」
ボクは頷いて、小さく手を振って図書室を後にした。何も特別な日じゃないけれど……伝えたい。全部、麻琴に。
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