49 / 83
二学期といえば文化祭だよね
#49 大錠祭(2)
しおりを挟む
『いよいよ始まった第三審査!! ラブレターコンテスト!! 18個あったサンプルテキストから、この不肖佐藤美鈴がキャスティングし、お送りします』
最終審査ということで、制服に着替えてステージ裏で待機しているボクたち。
『さぁさぁスタートだ! 最初のシチュエーションは放課後、夕日の差し込む中、告白相手には自分とは別に意中の人がいる。でも我慢できずに言ってしまった。そんな感じの愛の告白! どうぞ!』
……この人、変態音響監督みたい。とか、思っちゃダメかな?
「あのね、私……ずっと君が好きなの! 君が私を見ていないことくらい分かってる。でもね、私じゃ……ダメなのかな? お願い、私と付き合ってください……」
『うぉぉ!! いいね! すごいいい! 言葉にできないから、次、いってみよう!』
そう言われて登場した芙蓉先輩。家庭科部の次期部長さんだ。4組ということで、理系女子な感じでのラブレターだった。
「わ、わたしと君の相性は科学的にみてもバッチリだ。むろん、科学がなかろうとそれは変わらない。そうだろ?」
あぁ、いいわ。突っ込みにまわるクールな先輩が、顔を真っ赤にして告白っぽいセリフ。3番目の人はちょっと強気な感じでの告白だった。そして、希名子ちゃんの出番。
『さぁお次は和菓子屋の娘さん。都会の大学へ行ってしまう幼馴染みへの告白というシチュでいってみよう!』
「待って! その……あなたが都会に行きたがっていたことは知っているわ。でもね、私は……あなたの帰る場所になりたい! だって、あなたが大好きだから!!」
『いいね! もう、なんか目覚めそうだよ! 諸君、今、幸せだろ? まだまだ続くぜ、この宴!!』
そんな感じでラブレターコンテストは続いていく。戻ってきた希名子ちゃんや先輩に緊張をほぐしてもらいつつ、いよいよ次がボクの出番。大丈夫、セリフは暗記した。短かったし、忘れていない。
「いってくるね」
『お次は第二審査で注目を集めた姫宮さん。究極のラブレターを読み上げます。どんなシチュエーションなのか!?』
おそらく実村先輩の案であろう短文。勢いよく声に出す。
「先輩! ボク、先輩のこと大好きなんです! どんな障害があっても、一緒にいたいんです! 側にいさせてください!!」
『ボクっ娘後輩いいですよね! たまらん』
「やぁ、いい感じだったよ。姫宮」
「先輩……。あはは、先輩のも期待してますね。……それから、その……。先輩はどうしてボクのことを……?」
告白された時に聞けなかったことを、尋ねてみる。答えてくれるだろうか。
「私は面食いでね。手紙にも書いただろうが、君の容姿にいたく惚れ込んでしまったのだよ」
「……そ、それだけなんですか!?」
「あぁそうさ。恋に理由を求めるんじゃない。私の持論だがね。そもそも、君はもっと己の容姿がいかに人を惹きつけるか考えた方が良い。少なくとも、この女子校という空間にいるうちにな。っと、そろそろ出番か」
そう言うと先輩は緊張も見せないまま待機位置に進んでいった。最後から二番目の人がこちら側に戻ってくると、先輩が颯爽と舞台へと歩みだした。
『さぁさぁ、このラブレターコンテストのとりであり、このミスコンのおおとり。我らが女傑、実村碧海の登場だ! シチュエーションは中世、敵国の王子を愛してしまった姫騎士。王子の首に剣をあてつつ、本心は殺したくない一心。さぁ、最後の交渉といこうじゃないか!!』
どんな設定だよ! 時代も国も変わっちゃったよ。でも、その設定カッコいいなぁ。
「いいか、一度しか言わない。命が欲しければ、黙って私のものになれ!!」
凄い……。演劇部顔負けの声量、毅然としたその姿はまさに高貴な姫であり、勇ましい騎士!
『カッコいい! 惚れる! まじ、最高ですよ、せんぱーい!!』
コンテストの結果は二日目のフィナーレに発表されるらしく、文化祭初日の午前を使い切ったミスコンは一時閉幕となった。更衣室で制服から部活用のメイド服に着替えていると、
「おや姫宮。水着のままか?」
と、先輩に尋ねられた。そう、下着代わりに水着を着たままなのだ。ちなみに、ラブレターコンテストのときは時間短縮のために水着から制服を着用するように指示された。
「ボクのメイド服はスカートがすごく短いので。水着の方がいいんです」
手短に返答しながら、急いでメイド服に着替える。時刻はそろそろお昼時。軽食もてがける家庭科部のメイド喫茶にお客が集中しているかもしれない。希名子ちゃんの宣伝も効果あるだろうし、指揮官ポジにいる芙蓉先輩もこっちにいるから、今頃は高須先輩が目を回しているかもしれない。
「では先輩、失礼します」
先輩に一礼してから、芙蓉先輩と希名子ちゃんと三人でメイド喫茶に向かう。
「模擬店の方にも行かせてもらうわ」
先輩の声を聞きながら、熱気の残る体育館をあとにした。
最終審査ということで、制服に着替えてステージ裏で待機しているボクたち。
『さぁさぁスタートだ! 最初のシチュエーションは放課後、夕日の差し込む中、告白相手には自分とは別に意中の人がいる。でも我慢できずに言ってしまった。そんな感じの愛の告白! どうぞ!』
……この人、変態音響監督みたい。とか、思っちゃダメかな?
「あのね、私……ずっと君が好きなの! 君が私を見ていないことくらい分かってる。でもね、私じゃ……ダメなのかな? お願い、私と付き合ってください……」
『うぉぉ!! いいね! すごいいい! 言葉にできないから、次、いってみよう!』
そう言われて登場した芙蓉先輩。家庭科部の次期部長さんだ。4組ということで、理系女子な感じでのラブレターだった。
「わ、わたしと君の相性は科学的にみてもバッチリだ。むろん、科学がなかろうとそれは変わらない。そうだろ?」
あぁ、いいわ。突っ込みにまわるクールな先輩が、顔を真っ赤にして告白っぽいセリフ。3番目の人はちょっと強気な感じでの告白だった。そして、希名子ちゃんの出番。
『さぁお次は和菓子屋の娘さん。都会の大学へ行ってしまう幼馴染みへの告白というシチュでいってみよう!』
「待って! その……あなたが都会に行きたがっていたことは知っているわ。でもね、私は……あなたの帰る場所になりたい! だって、あなたが大好きだから!!」
『いいね! もう、なんか目覚めそうだよ! 諸君、今、幸せだろ? まだまだ続くぜ、この宴!!』
そんな感じでラブレターコンテストは続いていく。戻ってきた希名子ちゃんや先輩に緊張をほぐしてもらいつつ、いよいよ次がボクの出番。大丈夫、セリフは暗記した。短かったし、忘れていない。
「いってくるね」
『お次は第二審査で注目を集めた姫宮さん。究極のラブレターを読み上げます。どんなシチュエーションなのか!?』
おそらく実村先輩の案であろう短文。勢いよく声に出す。
「先輩! ボク、先輩のこと大好きなんです! どんな障害があっても、一緒にいたいんです! 側にいさせてください!!」
『ボクっ娘後輩いいですよね! たまらん』
「やぁ、いい感じだったよ。姫宮」
「先輩……。あはは、先輩のも期待してますね。……それから、その……。先輩はどうしてボクのことを……?」
告白された時に聞けなかったことを、尋ねてみる。答えてくれるだろうか。
「私は面食いでね。手紙にも書いただろうが、君の容姿にいたく惚れ込んでしまったのだよ」
「……そ、それだけなんですか!?」
「あぁそうさ。恋に理由を求めるんじゃない。私の持論だがね。そもそも、君はもっと己の容姿がいかに人を惹きつけるか考えた方が良い。少なくとも、この女子校という空間にいるうちにな。っと、そろそろ出番か」
そう言うと先輩は緊張も見せないまま待機位置に進んでいった。最後から二番目の人がこちら側に戻ってくると、先輩が颯爽と舞台へと歩みだした。
『さぁさぁ、このラブレターコンテストのとりであり、このミスコンのおおとり。我らが女傑、実村碧海の登場だ! シチュエーションは中世、敵国の王子を愛してしまった姫騎士。王子の首に剣をあてつつ、本心は殺したくない一心。さぁ、最後の交渉といこうじゃないか!!』
どんな設定だよ! 時代も国も変わっちゃったよ。でも、その設定カッコいいなぁ。
「いいか、一度しか言わない。命が欲しければ、黙って私のものになれ!!」
凄い……。演劇部顔負けの声量、毅然としたその姿はまさに高貴な姫であり、勇ましい騎士!
『カッコいい! 惚れる! まじ、最高ですよ、せんぱーい!!』
コンテストの結果は二日目のフィナーレに発表されるらしく、文化祭初日の午前を使い切ったミスコンは一時閉幕となった。更衣室で制服から部活用のメイド服に着替えていると、
「おや姫宮。水着のままか?」
と、先輩に尋ねられた。そう、下着代わりに水着を着たままなのだ。ちなみに、ラブレターコンテストのときは時間短縮のために水着から制服を着用するように指示された。
「ボクのメイド服はスカートがすごく短いので。水着の方がいいんです」
手短に返答しながら、急いでメイド服に着替える。時刻はそろそろお昼時。軽食もてがける家庭科部のメイド喫茶にお客が集中しているかもしれない。希名子ちゃんの宣伝も効果あるだろうし、指揮官ポジにいる芙蓉先輩もこっちにいるから、今頃は高須先輩が目を回しているかもしれない。
「では先輩、失礼します」
先輩に一礼してから、芙蓉先輩と希名子ちゃんと三人でメイド喫茶に向かう。
「模擬店の方にも行かせてもらうわ」
先輩の声を聞きながら、熱気の残る体育館をあとにした。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る
電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。
女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。
「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」
純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。
「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる