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8話

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「えいや!!」

 和花ちゃんがゴブリンをバッサバッサっと切り捨てていく。私はゴブリンたちが持っていた小剣の中でも刃こぼれしてないものを拾って角を切り取っていった。

「この剣もボロボロになってきちゃったや。もともとが拾い物だから仕方ないけどさ」

 そう言えば最初に私たちを追いかけてきた国の騎士はアルル……なんだっけ。アルルイヤ王国がどうのこうの言ってったけ。でもインティスの街はサザンガルドっていう国の街だったはず。いつの間にか国境を越えてたんだなぁ。ひょっとしたら私たちが最初にいたあのあたりって国境の近くだったのかな。だとしたら、あんなに追われたのも多少は分かるような。

「お金もあることだし、街に帰ったら剣を買うのもいいかもね」
「確かに。防具もいるかな? まぁ、いざとなったら芽依が守ってくれるよね」

 和花ちゃんにそう言われて、私は頷いた。和花ちゃんを守れるように、私なりに頑張らなきゃね。
 取り敢えず日も高くなってきたし、和花ちゃんは闘いっぱなしだからそろそろ休憩してもらわないと。

「和花ちゃん、そろそろお昼にしない?」
「うん、そうだね」

 ゴブリンを斬りまくって満足したのか、和花ちゃんは剣を鞘に収める。戦闘でのダメージはないけど、返り血で少し服が汚れている。魔法で綺麗にできたらいいのにと思いつつ、魔法で水が出せるのでそれを和花ちゃんの服についた返り血の部分へ当てる。

「芽依?」
「ちょっとしたお洗濯みたいなことができないかなと思って」

 水球をコントロールして染みついた血を浮かせて、揉み洗いのように水を振動させる。

「すごい、そんな細かく魔法が使えるの?」

 赤黒くなった水を遠くに捨てて、火の魔法と風の魔法を組み合わせて温風を出す。

「すごい、温かい風が出せるんだ」

 和花ちゃんが褒めてくれるのが嬉しくて、より繊細にコントロールするよう集中する。服が乾いたことを確認してから気づく。これで髪を乾かすことも出来るし、料理にも応用できるかもしれない。

「芽依はすごいよ。私は魔法が全然使えそうにないから、頼りにしてるよ」
「うん。ありがと。さあ、ご飯にしようか」

 そうは言っても宿で買っておいたパンを食べるくらいなんだけど。もちろん、魔法で出した水で手を洗う。宿で買ったパンは固くてごわごわしたものだから、水を少しだけかけてふやかして食べる。パン造りの技術が未熟なのか、携行食糧としてのパンだからこんなに固いのか、それはちょっと分からないけど。

「ゴブリン以外の魔物も少しいたけど、それらはいいの?」
「うーん、あの犬みたいな魔物はすばしっこくて追いかけるのが大変そうだし、あの鳥みたいな魔物は食べられそうだけど飛んでるからねぇ。芽依の魔法でなら倒せるんじゃない?」

 ……なるほどなあ。人型じゃない魔物はあんまり食指が動かないんだ。そうなら、私はちょっとは頑張らないとなのかな。確かに、ずっと守られているばかりじゃ和花ちゃんが大変だし。

「じゃあ、帰り道は私も頑張って戦うね」
「うん。よろしく!」
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