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#5 不審人物に遭遇する美少女(わたし)

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 お茶会を終えたわたしが同級生の飯島由梨と寮へ戻ろうと旧校舎の一室を後にした時、別の部屋を覗く不審な影に気が付いた。

「由梨……あれは」
「怪しいわね。着替えとか覗いているんじゃ?」

 不審者は平均より少し身長の高い華奢な女子生徒。教室を覗くのに夢中な彼女を、背後からわたしと由梨の二人がかりで取り押さえる。当然、騒がれないように口も塞ぐ。

「んぐも……!!」

 華奢で軽いせいか二人でなら引きずれる。んしょ、んしょっとさっきまでお茶会をしていた部屋に運び込む。部屋には林檎先輩が残っていた。

「おや? 二人とも……というか三人か」
「外で不審者がいたから引っ張ってきちゃって」

 黒髪のストレートロングで顔がちょっと隠れているが、磨けば光りそうな雰囲気がある。どんなに磨いたとしてもわたし程にはならないだろうけど。
 急な事態に緊張しているのか俯きっぱなしだ。

「キミさ、大宮陽奈だよね?」
「林檎先輩、知ってるんですか?」
「うん、同級生だよ。……ほら、永藤林檎だ。ここは果実会、ちょっとしたお茶会だよ」
「う、うん。分かるよ。こ、この二人は?」

 林檎先輩に促されて自己紹介する。

「川崎桃花ちゃんと飯島由梨ちゃんね。私は大宮陽奈。別に不審者じゃないんだけど……」
「じゃあ、なんで教室を覗いていたんですか?」
「えっと……あの教室に妹がいてさ。投資研究会っていう非公認部活やってるんだけど……」

 いきなりツッコミどころだなぁ。なに、投資研究会って。うちもそれなりに裕福だけど、投資には手を出してないわよ。

「妹さんって何年生なんですか?」

 若干、話が長くなりそうな気配を察してか由梨が質問をぶつける。

「中学3年よ」
「え、じゃあ同い年ですね」

 大宮なんて同級生……いたっけっかな。

「大宮……大宮……香奈ちゃん?」
「そう、大宮香奈は私の妹よ。ふふ、世界で一番可愛い愛しい我が妹……!!」

 なぜか恍惚とした表情でそう呟く大宮陽奈。その発言がわたしの地雷を踏みぬいた。

「世界で一番……? わたしより、わたしより可愛いっていうの?」

 そう言って大宮陽奈の制服を掴む。

「ちょ、な、なに……?」
「わたし、可愛いよね?」
「な、なに? 口裂け女?」
「わ・た・し・か・わ・い・い?」
「か……可愛いよ」

 知っている。当然だ。わたしは可愛い。

「大宮香奈……もしわたしより可愛いのなら要注目ね。……とはいえ、あなたの妹でしょう?」

 磨けば光るが所詮はその程度である彼女の妹、はたして本当にわたしに匹敵するレベルなんだろうか。
 期待はしてみてもいいが……。

「わ、私にとっては妹が一番なんだもん」

 まぁ、わたしもお姉ちゃんのことは好きだけど。姉妹で仲がいいのはいいことだ。

「取り敢えず、怪しいから妹を覗くのはやめた方がいいと思うわよ」
「……はい」

 取り敢えず不審者あらため大宮陽奈先輩は解放されたのだった。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

金木犀
2023.11.07 金木犀

凄く良くて続きが見たいですね

解除

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