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あきもいぬめり
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先輩と二人で商店街を歩く。なかなかない経験だ。こんな時だからこそ何か、聞いておきたいことは……。そう、将来のこと。
「ロゼ先輩って、将来の夢とかあるんですか?」
先輩はもう高校二年生で、もうじき三年生だ。きっと、大学とか将来のことについて色々考えているはず。
「うーん、Fuzzyなものでよければ。日本の文化をもっともおっと世界中の人に知って欲しいわ! きっとそういうことは、私みたいなハーフの人の方が伝えやすいと思うのよ。だって日本の人たちって自分の文化を外部に発信するの、苦手でしょう?」
最近のネットワーク社会ではそれも多少は緩和されている気はするけれど、日本人は自分の意見を外部に発信しないなんてことは確かに言われている。私自身が自分の意見をはっきり言うのを苦手としているからかもしれないけれど。
「紅凪ちゃんは、何か将来の夢とか目標はあるの?」
先輩に問われて、答えがパッと思い付かなかった。将来の夢って、なんだか難しい。小さい頃のものを思い出そうとしても、なんだか靄が掛かったように思い出せなくなっているのだ。幼稚園や小学校の低学年で、きっと発表とかもしているのだろうに。
けれど、口にするのは少し恥ずかしいけれど確かに言えることが一つだけある。ロゼ先輩のことだから、きっと笑いはしないだろう。
「……素敵な恋を、してみたいです」
「それはいいことね。私もまだ恋愛はよく分からないの。だってみんな素敵で、特別で、そんな人たちが家族と同じくらい、それか家族以上に特別な存在になるだなんて、ちょっと想像がつかないじゃない?」
「……みんな特別? 私も?」
「えぇそうよ。ほら、Hugしよう?」
往来の真ん中だというのもお構いなしで、ロゼ先輩にぎゅっと抱きしめられる。私より小柄なのに、無性に包み込まれているような感覚になった。きっとこの感覚を愛情と呼ぶのかも知れない。そんな風に感じた。
「ほら、悩む必要なんてないでしょう?」
「……そうかも、しれないですね」
「うん! じゃあ、永木庵に行こっか」
と言っても、本当にもう目と鼻の先と言えるほど近くまでやってきた。お店に入ると、クラスメイトの木代万和が店番をしていた。
「あ、紅凪ちゃん。いらっしゃい」
そういえば万和も将来についてけっこう悩んでいたはず。ロゼ先輩の手前、悩む必要なんてないのかもしれないと言ってはみたが、気になる分には変わらない。お菓子を選ぶロゼ先輩から少し距離を取って、こっそり聞いてみる。
「万和は将来の夢、決まった?」
前に聞いた時は、お店の手伝いを続ける、ハーブの研究をする、薬剤師になるの三つで悩んでいたはず。
「薬剤師を目指そうかなって。だって、一番難しそうじゃん? 悩んだら、難しいものに挑戦した方がいいんだってさ」
世音経由で聞いた情報だけど、万和にも年上のしかもけっこう変人な恋人が出来たらしい。ちょっと大人っぽい答えを示してきたのも、きっと何か関係があるのだろうか。
「紅凪ちゃーん、これ美味しそうだよ」
ロゼ先輩に呼ばれ、私も万和もそっちへ向かう。先輩が指差していたのは、晩秋と名付けられた栗まんじゅうだった。黒糖まんじゅうの上に小粒の栗が乗っかっていて、秋の終わりを感じさせる商品だった。
「そちら今月のオススメですよ」
万和が店員モードになる。そんな万和の勧めもあって、私も先輩もその晩秋を買うことにした。
「店内でお召し上がりですか?」
「そう……しよっか」
店内のイートインスペースでゆっくりお茶を飲みながら、今年の秋も終わりだねなんて話をして過ごすのだった。
「ロゼ先輩って、将来の夢とかあるんですか?」
先輩はもう高校二年生で、もうじき三年生だ。きっと、大学とか将来のことについて色々考えているはず。
「うーん、Fuzzyなものでよければ。日本の文化をもっともおっと世界中の人に知って欲しいわ! きっとそういうことは、私みたいなハーフの人の方が伝えやすいと思うのよ。だって日本の人たちって自分の文化を外部に発信するの、苦手でしょう?」
最近のネットワーク社会ではそれも多少は緩和されている気はするけれど、日本人は自分の意見を外部に発信しないなんてことは確かに言われている。私自身が自分の意見をはっきり言うのを苦手としているからかもしれないけれど。
「紅凪ちゃんは、何か将来の夢とか目標はあるの?」
先輩に問われて、答えがパッと思い付かなかった。将来の夢って、なんだか難しい。小さい頃のものを思い出そうとしても、なんだか靄が掛かったように思い出せなくなっているのだ。幼稚園や小学校の低学年で、きっと発表とかもしているのだろうに。
けれど、口にするのは少し恥ずかしいけれど確かに言えることが一つだけある。ロゼ先輩のことだから、きっと笑いはしないだろう。
「……素敵な恋を、してみたいです」
「それはいいことね。私もまだ恋愛はよく分からないの。だってみんな素敵で、特別で、そんな人たちが家族と同じくらい、それか家族以上に特別な存在になるだなんて、ちょっと想像がつかないじゃない?」
「……みんな特別? 私も?」
「えぇそうよ。ほら、Hugしよう?」
往来の真ん中だというのもお構いなしで、ロゼ先輩にぎゅっと抱きしめられる。私より小柄なのに、無性に包み込まれているような感覚になった。きっとこの感覚を愛情と呼ぶのかも知れない。そんな風に感じた。
「ほら、悩む必要なんてないでしょう?」
「……そうかも、しれないですね」
「うん! じゃあ、永木庵に行こっか」
と言っても、本当にもう目と鼻の先と言えるほど近くまでやってきた。お店に入ると、クラスメイトの木代万和が店番をしていた。
「あ、紅凪ちゃん。いらっしゃい」
そういえば万和も将来についてけっこう悩んでいたはず。ロゼ先輩の手前、悩む必要なんてないのかもしれないと言ってはみたが、気になる分には変わらない。お菓子を選ぶロゼ先輩から少し距離を取って、こっそり聞いてみる。
「万和は将来の夢、決まった?」
前に聞いた時は、お店の手伝いを続ける、ハーブの研究をする、薬剤師になるの三つで悩んでいたはず。
「薬剤師を目指そうかなって。だって、一番難しそうじゃん? 悩んだら、難しいものに挑戦した方がいいんだってさ」
世音経由で聞いた情報だけど、万和にも年上のしかもけっこう変人な恋人が出来たらしい。ちょっと大人っぽい答えを示してきたのも、きっと何か関係があるのだろうか。
「紅凪ちゃーん、これ美味しそうだよ」
ロゼ先輩に呼ばれ、私も万和もそっちへ向かう。先輩が指差していたのは、晩秋と名付けられた栗まんじゅうだった。黒糖まんじゅうの上に小粒の栗が乗っかっていて、秋の終わりを感じさせる商品だった。
「そちら今月のオススメですよ」
万和が店員モードになる。そんな万和の勧めもあって、私も先輩もその晩秋を買うことにした。
「店内でお召し上がりですか?」
「そう……しよっか」
店内のイートインスペースでゆっくりお茶を飲みながら、今年の秋も終わりだねなんて話をして過ごすのだった。
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