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016 お給料

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 8月10日は待ちに待った給料日だ。シルキストは月末に締めて翌月の10日に支払われる。なので7月の終わりごろから働き始めた私の最初のお給料は11時間分の9,900円だった。チップは現金でもらっているから、通帳に記載された金額よりももらってはいるのだが、こうしてアルバイト代が通帳に入るとなかなかに達成感というか満足感がある。

「なに買おうかな。服もいいけど……CDショップ行くのもいいよなあ」

 と言っても一人で行くのもなぁということで、今日は珍しくサラさんと一緒にいるのだ。昨日のシフト終わりに明日は給料日ですけど予定ありますかと聞いたところ、特にはないとの返事だったので、ちょっとデートに誘ってみたのだった。場所はスターパレスショッピングモール、一階の片隅にATMコーナーがあるので軍資金もばっちりだ。

「CDショップいいですね。わたし、最近これ買ったんですよ」

 そう言ってサラさんが取り出したのは携帯型音楽プレーヤーだ。3センチ角くらいのそれはわりと最近出たであろう第四世代型の音楽プレーヤーだ。パソコンに取り込んだ音楽を転送して聞けるのだが、サラさん普段から音楽聞いてるのかな? それこそこの前のカラオケだってあれだったのに。

「この前ランさんとカラオケに行ってから、まずはいろんな曲を聴いてみようと思って、これを買ったんです。思ったよりお安い金額でしたし、このピンクが可愛いんです」

 どうやらイヤホンは付属品の白い耳にひっかけるタイプのものを使っているようだ。ここはいっそいいイヤホンを選ぶのもいいかもしれない。取り敢えずCDショップへ向かう。

「パソコンのOSがこれと相性いいものだったので、これを選んだんですけど小型で持ち運びやすくていいですよね。マカさんたちから貰ったCDとか一枚でいろいろと聞けるCDを選んで取り込んでいたんですよ」

 サラさんがカラオケというか音楽にハマってくれたようでうれしい。というか、マカさんたちからCDもらってるんだ。うらやましいな。

「サラさんアニソンは聞きます?」
「あ……いえ、アニメを見ないので。でも曲だけ先に聞いて実はアニメソングだったってことはたまにありますね」
「確かに。ちょっと前のアニソンだとアニメの内容と全然関係なく曲としていい曲が揃ってますからね」

 そんな話をしつつ私は欲しかったガールズバンドの最新アルバムを手に取る。ついでに7月から始まったアニメの主題歌CDも一枚手に取る。

「これ、買ってこうかな」
「それは何のアニメなんですか?」
「うん? あぁ、アイドル系アニメだね」
「ランさん、バンド系だけじゃなくてアイドル系も聞くんですか?」
「そうだね。わりとこの辺りは雑食だよ。いい感じだったらサラさんにも貸しますよ」

 私がそう言うとサラさんは柔らかく微笑んだ。サラさん声優さんやっても上手そうだななんて、ふと思った。

「またサラさんの歌声、聴かせてくださいね」
「ふふ、少しは上達したかしら」

 休みの日までバイト先の人と一緒に過ごすなんてって高校生の頃なら思いそうだけど、けっこういいかなって今の私なら思える。そんな一日だった。
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