24 / 24
ファイル20 大家さんへ電話 4月28日木曜日
しおりを挟む
休み明けということもあってメールチェックから始まった業務なのだが、そのあと社長に一枚の資料を手渡された。
「これ、一般物件のオーナーさんたちの物件名と電話番号なんだけど、今日はここに電話をかけまくって部屋に動きがあったか聞いてくれる?」
「あ、分かりました。全部で……三十人もいるんですね」
「まぁね。そこのリストにいるのは平日でも電話大丈夫な人たち。土日にしか繋がらない人は別表があるよ。そうそう、貸主さんの中には男の人もいるけど大丈夫?」
「あ、はい大丈夫です。そこまで箱入りじゃないです」
「りょーかい。じゃあ、私は管理のオーナーさんたちに報告のメールを送らなくっちゃ」
「管理の方たちにもやってるんですか?」
管理物件なんだから部屋の動きとかは全部こっちで分かっているはずなのにって思ったら、返ってきた内容はお部屋のことではなく――
「私が報告しているのは収支のことだね。詩織ちゃんが家賃の送金とか修繕費用の相殺とか全部処理してくれているから、それで使っているソフトから出した収支報告書みたいなのをメールに添付して一人一人へ送っているの。まぁ、売買と違ってこうした管理報告は義務じゃないんだけど、これがないと管理やっている意味もそんなにないからねぇ」
ちなみに売買で媒介を結んだ時、先任媒介や専属専任媒介で契約したらそれぞれ十四日に一度ないし七日に一度の報告義務が生じる。その報告は別に書面を交わさずとも口頭でもよいとされているけれど。
「じゃあ、頑張って電話しますか」
これも別にメールでいいんじゃないかなって思わなくもないのだけれど、一般物件の貸主さんとは入退去がないとなかなかお話する機会もないということなので、前々からこうしているらしい。もちろん、決まったり空いたりしたときに自発的に連絡をしてくれる貸主さんんもいるのだけれど、こちらから聞かねば教えてくれない方だっている。
物件情報をアップデートする上でこうした地道な努力は欠かせないのだろう。
実際、四月ということもありネットに掲載している物件の中にいくつか成約済みのものがあった。逆に、三月末に退去が完了し、そろそろ募集をしてほしいと言われるケースだってある。
初めて電話する貸主様には自己紹介から始まったこともあり、昼食休憩を挟んでなんだかんだ勤務時間の半分くらいを電話に費やしたかたちになった。
「情報がまとまったら三咲ちゃんに報告しておいて」
社長にそう言われたので募集を停止した物件と依頼された物件をそれぞれノートにまとめる。
「建原係長、報告します。伏見マンション102と303、メゾン土屋205、瀬尾ハイツ202がそれぞれ成約したとのことです。ルビーズマンション403、マロンハイツ105、スフレ・アンB棟は募集依頼されました。あとスカイレジデンス602号室が来月末退去とのことです」
「え、スカイレジデンス空くんだ。そっかぁ、7月から空の宮市に転勤で来るお医者様に紹介できるかも。ちょっと病院の担当者さんと話を詰めておかないと」
緊張するし口は乾くしで大変だったけど、三咲ちゃんのお役に立てたようでなによりだ。
さぁて、お家賃の変更とかもあったし頑張って登録しなくっちゃね!
「これ、一般物件のオーナーさんたちの物件名と電話番号なんだけど、今日はここに電話をかけまくって部屋に動きがあったか聞いてくれる?」
「あ、分かりました。全部で……三十人もいるんですね」
「まぁね。そこのリストにいるのは平日でも電話大丈夫な人たち。土日にしか繋がらない人は別表があるよ。そうそう、貸主さんの中には男の人もいるけど大丈夫?」
「あ、はい大丈夫です。そこまで箱入りじゃないです」
「りょーかい。じゃあ、私は管理のオーナーさんたちに報告のメールを送らなくっちゃ」
「管理の方たちにもやってるんですか?」
管理物件なんだから部屋の動きとかは全部こっちで分かっているはずなのにって思ったら、返ってきた内容はお部屋のことではなく――
「私が報告しているのは収支のことだね。詩織ちゃんが家賃の送金とか修繕費用の相殺とか全部処理してくれているから、それで使っているソフトから出した収支報告書みたいなのをメールに添付して一人一人へ送っているの。まぁ、売買と違ってこうした管理報告は義務じゃないんだけど、これがないと管理やっている意味もそんなにないからねぇ」
ちなみに売買で媒介を結んだ時、先任媒介や専属専任媒介で契約したらそれぞれ十四日に一度ないし七日に一度の報告義務が生じる。その報告は別に書面を交わさずとも口頭でもよいとされているけれど。
「じゃあ、頑張って電話しますか」
これも別にメールでいいんじゃないかなって思わなくもないのだけれど、一般物件の貸主さんとは入退去がないとなかなかお話する機会もないということなので、前々からこうしているらしい。もちろん、決まったり空いたりしたときに自発的に連絡をしてくれる貸主さんんもいるのだけれど、こちらから聞かねば教えてくれない方だっている。
物件情報をアップデートする上でこうした地道な努力は欠かせないのだろう。
実際、四月ということもありネットに掲載している物件の中にいくつか成約済みのものがあった。逆に、三月末に退去が完了し、そろそろ募集をしてほしいと言われるケースだってある。
初めて電話する貸主様には自己紹介から始まったこともあり、昼食休憩を挟んでなんだかんだ勤務時間の半分くらいを電話に費やしたかたちになった。
「情報がまとまったら三咲ちゃんに報告しておいて」
社長にそう言われたので募集を停止した物件と依頼された物件をそれぞれノートにまとめる。
「建原係長、報告します。伏見マンション102と303、メゾン土屋205、瀬尾ハイツ202がそれぞれ成約したとのことです。ルビーズマンション403、マロンハイツ105、スフレ・アンB棟は募集依頼されました。あとスカイレジデンス602号室が来月末退去とのことです」
「え、スカイレジデンス空くんだ。そっかぁ、7月から空の宮市に転勤で来るお医者様に紹介できるかも。ちょっと病院の担当者さんと話を詰めておかないと」
緊張するし口は乾くしで大変だったけど、三咲ちゃんのお役に立てたようでなによりだ。
さぁて、お家賃の変更とかもあったし頑張って登録しなくっちゃね!
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
君の瞳のその奥に
楠富 つかさ
恋愛
地方都市、空の宮市に位置する中高一貫の女子校『星花女子学園』で繰り広げられる恋模様。それは時に甘く……時に苦い。
失恋を引き摺ったまま誰かに好意を寄せられたとき、その瞳に映るのは誰ですか?
片想いの相手に彼女が出来た。その事実にうちひしがれながらも日常を送る主人公、西恵玲奈。彼女は新聞部の活動で高等部一年の須川美海と出会う。人の温もりを欲する二人が出会い……新たな恋が芽吹く。
夜空に咲くは百合の花
楠富 つかさ
恋愛
地方都市、空の宮市に位置する中高一貫の女子校『星花女子学園』で繰り広げられる恋模様。
親友と恋人になって一年、高校二年生になった私たちは先輩達を見送り後輩達を指導する激動の一年を迎えた。
忙しいけど彼女と一緒なら大丈夫、あまあまでラブラブな生徒会での日常系百合色ストーリー
AV研は今日もハレンチ
楠富 つかさ
キャラ文芸
あなたが好きなAVはAudioVisual? それともAdultVideo?
AV研はオーディオヴィジュアル研究会の略称で、音楽や動画などメディア媒体の歴史を研究する集まり……というのは建前で、実はとんでもないものを研究していて――
薄暗い過去をちょっとショッキングなピンクで塗りつぶしていくネジの足りない群像劇、ここに開演!!
百合色雪月花は星空の下に
楠富 つかさ
青春
友達少ない系女子の星野ゆきは高校二年生に進級したものの、クラスに仲のいい子がほとんどいない状況に陥っていた。そんなゆきが人気の少ない場所でお昼を食べようとすると、そこには先客が。ひょんなことから出会った地味っ子と家庭的なギャルが送る青春百合恋愛ストーリー、開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる