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ファイル14 た……竹? 4月18日月曜日
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不動産屋さんには日々いろんな電話がかかってくる。その日も私は電話対応でかかってきた電話と取るのだが……。
「はい、リリィエステート有働が承ります」
「えーと、竹下借家に住んでいる大畑と言いますが、和室の畳が浮いてきまして、どうにも……若竹というかタケノコが生えているようで」
……え、タケノコ?
「少々お待ちください」
いったん保留を押して、三咲ちゃんに代ろうとした矢先に三咲ちゃんが別の電話を取ってしまったから社長に聞いてみる。
「社長すみません、竹下借家の大畑様から、和室の下にタケノコが生えたみたいだって」
「なにそれ面白そう。現地見に行こうよ」
「えっと、じゃあそう伝えますね」
保留を解除して大畑さんに、現地へ向かう旨を伝える。
「では、お待ちしております」
「はい、すぐ伺います」
電話を切ると社長はもう準備万端でルーテシアの鍵を持って待機している。
「行くよ!」
私はまだ行ったことない物件だが、社長の運転ということで会社から北西へ十五分ほど走って到着した。
借家と聞いていたから、前に見た土井借家のように何棟か並んでいる平屋タイプと思ったが、平屋は平屋でも古民家のような風情と風格のある大きな一軒家だった。
「でっかいおうちですね……」
「相続人が何人もいて揉めそうだからって前の所有者さんが売ることにして、買った方から管理を依頼されてるの」
お住まいの大畑様は四十代くらいの夫婦と三人の子供、そして奥様のお母さんでお住まいとのこと。今日は月曜日なので、今は奥様とお母さんしかいない。
「和室は基本的に仏間兼私の寝室なのだが、どうにも畳が変だなあと思って、昨日信也くんに畳を持ち上げてもらったのよ」
「あ、信也は私の夫です。で、畳を持ち上げたら下の板を竹が突き破ってたってこと」
竹の生命力はすごいし、この物件の裏庭は竹林。なんなら元の所有者さんは竹下さんだもんね。そりゃ、こういうこともあるか……いや、あるか!? 困惑する私をよそに、社長は竹をつんつんし始めた。
「うーん、取り敢えず切って対処するしかないですね。竹は除草剤の効果が見込めませんし、無理に薬品を使うと裏庭の竹にも影響しちゃいますから」
「そうよねぇ。裏庭のタケノコは契約で採っていいことになっていて、メンマを手作りしているので大事にしたいです」
「メンマ手作りされるんですね。すごい」
なんでもコンクリで固めてもいずれは竹が勝ってしまうらしい。取り敢えず毎年きちんと切って取り除くしかないらしい。……竹、強いなぁ。
「分かりました。毎年ここにはタケノコが生えるって覚えておくようにします。そうだ、よろしかったらメンマ、少し持って行ってください」
というわけで、メンマのおすそ分けをもらうのだった。
「はい、リリィエステート有働が承ります」
「えーと、竹下借家に住んでいる大畑と言いますが、和室の畳が浮いてきまして、どうにも……若竹というかタケノコが生えているようで」
……え、タケノコ?
「少々お待ちください」
いったん保留を押して、三咲ちゃんに代ろうとした矢先に三咲ちゃんが別の電話を取ってしまったから社長に聞いてみる。
「社長すみません、竹下借家の大畑様から、和室の下にタケノコが生えたみたいだって」
「なにそれ面白そう。現地見に行こうよ」
「えっと、じゃあそう伝えますね」
保留を解除して大畑さんに、現地へ向かう旨を伝える。
「では、お待ちしております」
「はい、すぐ伺います」
電話を切ると社長はもう準備万端でルーテシアの鍵を持って待機している。
「行くよ!」
私はまだ行ったことない物件だが、社長の運転ということで会社から北西へ十五分ほど走って到着した。
借家と聞いていたから、前に見た土井借家のように何棟か並んでいる平屋タイプと思ったが、平屋は平屋でも古民家のような風情と風格のある大きな一軒家だった。
「でっかいおうちですね……」
「相続人が何人もいて揉めそうだからって前の所有者さんが売ることにして、買った方から管理を依頼されてるの」
お住まいの大畑様は四十代くらいの夫婦と三人の子供、そして奥様のお母さんでお住まいとのこと。今日は月曜日なので、今は奥様とお母さんしかいない。
「和室は基本的に仏間兼私の寝室なのだが、どうにも畳が変だなあと思って、昨日信也くんに畳を持ち上げてもらったのよ」
「あ、信也は私の夫です。で、畳を持ち上げたら下の板を竹が突き破ってたってこと」
竹の生命力はすごいし、この物件の裏庭は竹林。なんなら元の所有者さんは竹下さんだもんね。そりゃ、こういうこともあるか……いや、あるか!? 困惑する私をよそに、社長は竹をつんつんし始めた。
「うーん、取り敢えず切って対処するしかないですね。竹は除草剤の効果が見込めませんし、無理に薬品を使うと裏庭の竹にも影響しちゃいますから」
「そうよねぇ。裏庭のタケノコは契約で採っていいことになっていて、メンマを手作りしているので大事にしたいです」
「メンマ手作りされるんですね。すごい」
なんでもコンクリで固めてもいずれは竹が勝ってしまうらしい。取り敢えず毎年きちんと切って取り除くしかないらしい。……竹、強いなぁ。
「分かりました。毎年ここにはタケノコが生えるって覚えておくようにします。そうだ、よろしかったらメンマ、少し持って行ってください」
というわけで、メンマのおすそ分けをもらうのだった。
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