上 下
6 / 24

オフの日01 旧交を温めよう 4月5日火曜日

しおりを挟む
 金曜日からの勤務がひと段落して火曜日、お休みということで高校時代の同級生たちと集まることになった。夕方からということで、午前中はひたすら寝ることに専念した。身体を動かす仕事ではないが、やはり労働は疲れがたまる。

「じゃあ、再会を祝して」
「「「かんぱ~い!!」」」

 ジンジャエールをくぅっと喉に流し込む。お酒はあまり得意ではないのでソフトドリンクの方が楽しめる。
 場所は高校時代にもよく通ったファミレス。ドリンクバーだから種類こそ多くはないが飲み放題だ。大人になったからといって別に集まるのは居酒屋じゃなくちゃダメなんてことはないのだ。

「ごめんね、綾香ちゃん。学校の先生忙しいでしょ?」
「新学期自体は明後日からだから大丈夫だよ。藍ちゃんはお店平気なの?」
「うちは火曜定休だし。だから七瀬と三咲とはこれからも遊びやすいね」
「そんなぁ。私だけ蚊帳の外じゃん」

 集まったのは私と三咲ちゃん、そして高校時代の同級生、出水綾香いづみあやかちゃんと下条藍しもじょうらんちゃん。綾香ちゃんは私たちの母校、星花女子学園で教師をしている。一方の藍ちゃんはというと、

「藍ちゃんはバイト先に就職したって聞いてるけど、何のバイトしてたかしら?」

 三咲ちゃんが首をかしげながら聞く。三咲ちゃんは東京の大学に、私は県内だけど公立の大学に、そして藍ちゃんと綾香ちゃんは星花の系列大学へ進学したのだけれど、大学在学中ずっと藍ちゃんはバイト先のことを秘密にしていた。

「一応……飲食メインでアパレルが副業みたいな感じ?」
「だ、大丈夫? なんか夜のお店とかだったりしない?」

 藍ちゃんは私たちの中ではサバサバ寄りで秘密とかそんなにないのに、バイト先だけはずっと秘密にしてるから、結構心配だ。三咲ちゃんも同じ気持ちだろう。

「うちは昼しか営業してない健全なお店だよ。三咲こそ、東京でいかがわしいスカウトされなかった?」
「ちゃ、ちゃんと断ったもん!」
「……声はかけられてるんだ」

 三咲ちゃん、顔は清楚系なのに体つきがグラマラスで煽情的なのだ。ほんとにそういうビデオ業界に入ったら爆売れしそうだ。してほしくないけど。
 というか、藍ちゃんも綾香ちゃんも平均以上にボリューミーなお胸をしているので、需要がないのは私だけなのだ……。

「綾香ちゃんは先生二年目だよね。去年一年やってみてどうだった?」
「そうねぇ。私が生徒だった時の先生たちまだまだいるから気を抜くとすぐ学生気分になっちゃう。ミスも多くて……」

 三咲ちゃんの質問に綾香ちゃんが溜息交じりに答える。

「私なんてやっと働き始めたんだから、綾香ちゃんは偉いよ。そうだ、坂上先生は元気?」

 高3の時に副担任をしてくれた先生の名前を出す。あの頃の先生が二十五歳か二十六歳くらいだから、今の私たちとほぼ変わらない。私たちが高1の時に赴任して、一緒に学年を上がっていった年の近い先生ということで、よく覚えている。

「驚かないでよ、坂上先生はもう結婚して今は依田先生なんだよ」
「あぁやっぱりあの人ノンケだったかぁ! そんな気はしてたんだよ」
「藍ちゃん言い方が……」

 星花女子学園は女子校ということもあって、女の子同士の距離感が近くて……恋仲に発展することも多々あった。実際私も……。

「七瀬ちゃん?」
「どうかした?」

 綾香ちゃんと三咲ちゃんを順にみていたら、二人から首を傾げられてしまった。

「あ、いや……そろそろ何か食べ物もと思って」
「じゃあドリア頼もう、あと生ハム!」
「藍ちゃん、サラダも食べるんだよ?」
「三咲はそういうとこほんとママだよな。七瀬もそう思うら?」
「え、あぁ、まぁ確かに」

 私は三咲ちゃんがずっと好きで、だから綾香ちゃんからの告白を断った。その時もちょうどこのお店でだったっけ。私は三咲ちゃんに想いを告げられずにいたけど……何の因果か今は同じ職場で働いている。いつか伝えられたらいいな……。

「七瀬ちゃん、ピザ四等分して食べようと思うんだけどマルゲリータとマヨコーンどっちが頼む?」
「マルゲリータでいいんじゃないかな?」

 でも今は、あの頃みたいに夢中で話に花を咲かせたいから、くすぶっている恋心からは目を背けることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

憧れの先輩とイケナイ状況に!?

暗黒神ゼブラ
恋愛
今日私は憧れの先輩とご飯を食べに行くことになっちゃった!?

君の瞳のその奥に

楠富 つかさ
恋愛
地方都市、空の宮市に位置する中高一貫の女子校『星花女子学園』で繰り広げられる恋模様。それは時に甘く……時に苦い。 失恋を引き摺ったまま誰かに好意を寄せられたとき、その瞳に映るのは誰ですか? 片想いの相手に彼女が出来た。その事実にうちひしがれながらも日常を送る主人公、西恵玲奈。彼女は新聞部の活動で高等部一年の須川美海と出会う。人の温もりを欲する二人が出会い……新たな恋が芽吹く。

久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃった件

楠富 つかさ
恋愛
久しぶりに帰省したら私のことが大好きな従妹と姫はじめしちゃうし、なんなら恋人にもなるし、果てには彼女のために職場まで変える。まぁ、愛の力って偉大だよね。 ※この物語はフィクションであり実在の地名は登場しますが、人物・団体とは関係ありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

夜空に咲くは百合の花

楠富 つかさ
恋愛
地方都市、空の宮市に位置する中高一貫の女子校『星花女子学園』で繰り広げられる恋模様。 親友と恋人になって一年、高校二年生になった私たちは先輩達を見送り後輩達を指導する激動の一年を迎えた。 忙しいけど彼女と一緒なら大丈夫、あまあまでラブラブな生徒会での日常系百合色ストーリー

処理中です...