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第3話 インタビューと約束
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「須川さんは今回入選した詩をどのように思い付いたのですか?」
頭を取材モードに切り換えて口調も丁寧にする。
「私は普段から詩を書いているのですが……今回の詩は先日読んだ小説に影響された部分もあるかしら。
……人の道、曖昧だけど必要不可欠なものを表現に込めるのが好きね」
最後、ほんの少しだけ笑みを浮かべて話してくれた彼女。写真を撮るスキルが私にあったら、今の瞬間は確実にシャッターチャンスだった。脳裏によぎった後悔を頭から追い出して取材を続ける。
「なるほど、奥深いテーマですね。今回の詩に影響した小説の作家さんとはどなたなのですか?」
文芸部と言えばこれまでにも何人か取材してきたけれど、本格的に小説を書いているという人は少なめで、どちらかと言えば彼女のように賞も多い詩や俳句・短歌といった韻文をメインにしている人ばかりだった。
「今回は少し暗いお話を読んだの。作家さんはたしか黒渕素実ね。普段は……若い男女の群像劇を読むことが多いかしら。恋愛には発展せず感情を深く掘り下げていくような感じで。影響された作家さんだと……そうね、横戸美智彦や松本洋太郎かしら。詩人であれば……大畑章雄や四倉三代も好きね」
……知らない名前だ。取材する上で幅広い知識が必要になるのね。小説も読もう、うん。作家さんの話しをする彼女は最初に感じた取っつきづらさは薄らいで、年相応の可愛らしい女の子に思えた。
「詩よりも世界が膨らんだ時は小説にするわ。普段読んでいる作品は恋愛未満な関係を描くことが多いから私は恋愛小説を書くようにしているわ」
須川さんの書く恋愛小説……どんな作風なのかしら。恋愛小説は書き手との距離感って人によるって以前聞いたことがあるからなぁ。
「では小説についても質問させてもらいますね。恋愛小説とのことですが、舞台はどちらですか?」
「……学校ですね。あの、私は詩をメインに書いているので小説の話は必要ないんじゃ……?」
あはは……言われてみればそうかも。でもまぁ、個人的にも気になるし。なんて理由は言わないけれど。
「取材するにあたって須川さんの詩は全て拝読しました。その中に少ないですがとても女の子らしい恋愛をテーマにした詩もありましたので、そちらに関しても気になるのですよ」
「上っ面っぽい理由ですね……。まぁいいですけど」
うぅん……鋭いなぁ。まぁ、聞かせてくれるみたいだからいいか。女の子だもんね、恋愛について知りたい語りたいってあるだろうし。
「須川さんは百合ってどう思います?」
「……はぁ? いきなり花の話ですか?」
なるほど。知らないんだ。まぁ……そういう人もいるよね。周りへの関心も高くなさそうだし……。美人さんだからなぁ。ファンクラブとかありそうなのに。ちなみに、叶美にもファンクラブがある。立ち上げたのは私だが。他にも生徒会元会長、元副会長、現会長、あと剣道部の太刀花さんや私のルームメイトの恵にもファンクラブが存在する。っと、ファンクラブのことはどうでもよくて。
「あぁえっと、花の話ではなくてですね、星花にいると女の子同士のカップルを目にすることが時折あるかと思いますが、そういう恋愛のあり方をどう思いますか? ということです」
私が説明を終えると須川さんは少しだけ考えてから口を開いた。
「私自身、恋愛経験はありませんので一般論のように聞こえそうですが、一度相手を好きになってしまえば相手の年齢、性別、国籍、宗教……その他諸々、どうでもいいと感じるのではないかしら」
「なかなか情熱的な考えですね」
「……そうかしら? もっとも私は、誰かに好かれるようなタイプには思えませんけどね。……ふぅ、もういいかしら? 人と話すのは不慣れなので疲れました」
どこかで言葉をしくじったかも……なんだか表情が暗くなってきちゃった。潮時だろうね。ここで引き下がっても相手にしてもらえなさそうだし。
「はい、取材協力ありがとうございました。夏休み明けに配布される増刊号にて記事が載りますので楽しみにしていてくださいね。では、お疲れ様でした」
そう言って私が部屋を立ち去ろうとすると……
「……西先輩」
「ん?」
須川さんに後ろから声をかけられた。
「……また、お話ししてくれますか?」
「もちろん。貴女が望むなら、ね。Adios」
須川美海、彼女をより深く知りたいと思ったのは新聞部あるいは放送部に所属しているからか……はたまた私自身が理由なのか。不思議な充足感を抱きながら私は菊花寮を後にした。
頭を取材モードに切り換えて口調も丁寧にする。
「私は普段から詩を書いているのですが……今回の詩は先日読んだ小説に影響された部分もあるかしら。
……人の道、曖昧だけど必要不可欠なものを表現に込めるのが好きね」
最後、ほんの少しだけ笑みを浮かべて話してくれた彼女。写真を撮るスキルが私にあったら、今の瞬間は確実にシャッターチャンスだった。脳裏によぎった後悔を頭から追い出して取材を続ける。
「なるほど、奥深いテーマですね。今回の詩に影響した小説の作家さんとはどなたなのですか?」
文芸部と言えばこれまでにも何人か取材してきたけれど、本格的に小説を書いているという人は少なめで、どちらかと言えば彼女のように賞も多い詩や俳句・短歌といった韻文をメインにしている人ばかりだった。
「今回は少し暗いお話を読んだの。作家さんはたしか黒渕素実ね。普段は……若い男女の群像劇を読むことが多いかしら。恋愛には発展せず感情を深く掘り下げていくような感じで。影響された作家さんだと……そうね、横戸美智彦や松本洋太郎かしら。詩人であれば……大畑章雄や四倉三代も好きね」
……知らない名前だ。取材する上で幅広い知識が必要になるのね。小説も読もう、うん。作家さんの話しをする彼女は最初に感じた取っつきづらさは薄らいで、年相応の可愛らしい女の子に思えた。
「詩よりも世界が膨らんだ時は小説にするわ。普段読んでいる作品は恋愛未満な関係を描くことが多いから私は恋愛小説を書くようにしているわ」
須川さんの書く恋愛小説……どんな作風なのかしら。恋愛小説は書き手との距離感って人によるって以前聞いたことがあるからなぁ。
「では小説についても質問させてもらいますね。恋愛小説とのことですが、舞台はどちらですか?」
「……学校ですね。あの、私は詩をメインに書いているので小説の話は必要ないんじゃ……?」
あはは……言われてみればそうかも。でもまぁ、個人的にも気になるし。なんて理由は言わないけれど。
「取材するにあたって須川さんの詩は全て拝読しました。その中に少ないですがとても女の子らしい恋愛をテーマにした詩もありましたので、そちらに関しても気になるのですよ」
「上っ面っぽい理由ですね……。まぁいいですけど」
うぅん……鋭いなぁ。まぁ、聞かせてくれるみたいだからいいか。女の子だもんね、恋愛について知りたい語りたいってあるだろうし。
「須川さんは百合ってどう思います?」
「……はぁ? いきなり花の話ですか?」
なるほど。知らないんだ。まぁ……そういう人もいるよね。周りへの関心も高くなさそうだし……。美人さんだからなぁ。ファンクラブとかありそうなのに。ちなみに、叶美にもファンクラブがある。立ち上げたのは私だが。他にも生徒会元会長、元副会長、現会長、あと剣道部の太刀花さんや私のルームメイトの恵にもファンクラブが存在する。っと、ファンクラブのことはどうでもよくて。
「あぁえっと、花の話ではなくてですね、星花にいると女の子同士のカップルを目にすることが時折あるかと思いますが、そういう恋愛のあり方をどう思いますか? ということです」
私が説明を終えると須川さんは少しだけ考えてから口を開いた。
「私自身、恋愛経験はありませんので一般論のように聞こえそうですが、一度相手を好きになってしまえば相手の年齢、性別、国籍、宗教……その他諸々、どうでもいいと感じるのではないかしら」
「なかなか情熱的な考えですね」
「……そうかしら? もっとも私は、誰かに好かれるようなタイプには思えませんけどね。……ふぅ、もういいかしら? 人と話すのは不慣れなので疲れました」
どこかで言葉をしくじったかも……なんだか表情が暗くなってきちゃった。潮時だろうね。ここで引き下がっても相手にしてもらえなさそうだし。
「はい、取材協力ありがとうございました。夏休み明けに配布される増刊号にて記事が載りますので楽しみにしていてくださいね。では、お疲れ様でした」
そう言って私が部屋を立ち去ろうとすると……
「……西先輩」
「ん?」
須川さんに後ろから声をかけられた。
「……また、お話ししてくれますか?」
「もちろん。貴女が望むなら、ね。Adios」
須川美海、彼女をより深く知りたいと思ったのは新聞部あるいは放送部に所属しているからか……はたまた私自身が理由なのか。不思議な充足感を抱きながら私は菊花寮を後にした。
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