上 下
127 / 192

番外編 エネマとパウロのクリスマス

しおりを挟む

「あのさ、……今日エネマに来てもらったのは……その……」

クリスマス、パウロはエネマを呼び出していた。
今日こそ……今日こそエネマに告白するんだ…と。
この日の為ににパウロは入念にプレゼントとサプライズを考えてきた。給料3ヶ月分の指輪を用意し、手作りのウエディングケーキ大のクリスマスケーキを作り、高級ホテルの最上階を確保した。
聖夜の夜は2人で夜景を見ながら、過ごすのだ。
勇気を振り絞ってパウロはエネマをホテル(いやらしい意味の方じゃないよ?)に誘おうとする。
……が、先にエネマが口を開く。

「遊びに行く……でしょ?早く行こ」

パウロはエネマについていくこととなってしまった。


………………………………
………………
……


「あ、あのクレープ屋……昨日オープンしたばかりみたい……食べよ」

街中を歩く2人は、まるで恋人同士のよう……でもなかった。
正直、エネマの方が意識していないのもあってか、男女2人だというのに友達感覚で接している。
というより、実際2人はただの友達な訳だが……
パウロは今日こそエネマに告白しようと思っていたが、この様子では仕方ない。
諦めるとするか………

「うん、食べよっか」

結局、パウロとエネマはそのまま食べ歩きをして、聖夜の夜を過ごしたのだった……

しかし、クリスマスがついに終わるという時、エネマがパウロに質問をした。

「ねえ、話があるんでしょ?」

「えっ!」

パウロにとって、突然のことすぎて戸惑ってしまった。
今日は完全に告白の事は意識しないようになってしまった為、今更する勇気も無いのだ。

「えーっと……その……」

「……ふぅ…無いなら良いよ。でも……あるなら聞いておきたいから……今のうちに」

「え、今のうちに?」

「うん。私来年は留学するの。たった一年だけど、外国に行っちゃう。……だからパウロが言いたい事……聞いておきたくて」

パウロは、ここで言わなきゃ男じゃ無いと思った。震える声を寒さのせいにしてゆっくりと顔を上げた。

「ついて…来てくれる?」

「うん」

パウロはエネマをホテル(そんな意味のホテルじゃないからね?)に誘った……
少し離れたホテルに辿り着き、部屋に入るとパウロがクリスマスケーキを見せた。

「……エネマ、クリスマス、おめでとう。その……これ僕が作ったんだ。ケーキ、一緒に食べよ……」

「……パウロ、ごめんちょっと重い」

「!?」

「…せっかく用意してくれたから食べるけど…クリスマス如きでこんな大層な仕掛け……」

「!!!???」

「……はぁ…まぁ良い。食べようか」

「あっ、えっと……その、まだクリスマスプレゼントがあるんだ」

「えっ!?ありがとう何何?」

「これ、……僕の気持ち、給料3ヶ月分の指輪さ。大事にして……欲しい」

「うん、重い…………というか、それって絶対クリスマスプレゼントじゃないよね?」

「えっと、その……」

「はぁっ……まったく……」

直前でチキったパウロを見てエネマがついに言った。

「じゃあ、私からもクリスマスプレゼント。私と付き合って?」

「は……え、えええええ!!」

「ダメ?」

「良いけど……」

「じゃ、私もこの指輪貰うね」

こうして、パウロにとって……否、エネマにとっても最高のクリスマスとなったのだった。




しおりを挟む
感想 116

あなたにおすすめの小説

転生したので、とりあえず最強を目指してみることにしました。

和麻
ファンタジー
俺はある日、村を故郷を喪った。 家族を喪った。 もう二度と、大切なものを失わないためにも俺は、強くなることを決意する。 そのためには、努力を惜しまない! まあ、面倒なことになりたくないから影の薄いモブでいたいけど。 なにげに最強キャラを目指そうぜ! 地球で生きていた頃の知識と、転生するときに神様から貰ったチートを生かし、最強を目指します。 主人公は、騎士団に入ったり、学園に入学したり、冒険者になったりします。 とにかく、気の向くままに、いきあたりばったりに書いてるので不定期更新です。 最初シリアスだったのにギャグ要素が濃くなって来ました。 というか登場人物たちが暴走しすぎて迷走中です、、、。 もはや、どうなっていくのか作者にも想像がつかない。 1月25日改稿しました!多少表現が追加されていますが、読まなくても問題ありません。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ

如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白? 「え~…大丈夫?」 …大丈夫じゃないです というかあなた誰? 「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」 …合…コン 私の死因…神様の合コン… …かない 「てことで…好きな所に転生していいよ!!」 好きな所…転生 じゃ異世界で 「異世界ってそんな子供みたいな…」 子供だし 小2 「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」 よろです 魔法使えるところがいいな 「更に注文!?」 …神様のせいで死んだのに… 「あぁ!!分かりました!!」 やたね 「君…結構策士だな」 そう? 作戦とかは楽しいけど… 「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」 …あそこ? 「…うん。君ならやれるよ。頑張って」 …んな他人事みたいな… 「あ。爵位は結構高めだからね」 しゃくい…? 「じゃ!!」 え? ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!

異世界チートはお手の物

スライド
ファンタジー
 16歳の少年秋月悠斗は、ある日突然トラックにひかれてその人生を終えてしまう。しかし、エレナと名乗る女神にチート能力を与えられ、異世界『レイアード』へと転移するのだった。※この作品は「小説家になろう」でも投稿しています。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎
ファンタジー
 自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。 死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。 *10/17  第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。 *R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。  あと少しパロディもあります。  小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。 YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。 良ければ、視聴してみてください。 【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮) https://youtu.be/cWCv2HSzbgU それに伴って、プロローグから修正をはじめました。 ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo

転移術士の成り上がり

名無し
ファンタジー
 ベテランの転移術士であるシギルは、自分のパーティーをダンジョンから地上に無事帰還させる日々に至上の喜びを得ていた。ところが、あることがきっかけでメンバーから無能の烙印を押され、脱退を迫られる形になる。それがのちに陰謀だと知ったシギルは激怒し、パーティーに対する復讐計画を練って実行に移すことになるのだった。

処理中です...