54 / 192
第五十四話 クレープ
しおりを挟む「ケイン」
冷めた目をしたエネマが僕の前に立って道を塞いでいる。
「エネマ………どうしたの?」
その一言がエネマの冷めた目を、さらに冷たい物にしてしまう。
「………ケイン?学園に来たら真っ先に私のとこ来るよう言った。もう2週間経ってる……どうして?」
やっべ、忘れてた………
どうしよう……そういえばそんな事言ってたなぁ…
「えっと………ごめんなさい」
「だめ!許さない。今日は一緒に帰ってクレープ奢って!」
あ、それくらいで許してくれるのか……
エネマの事だからもうちょっとキツめの条件出してくると思ってた……
…………………………………………
……………………
…………
「………聞いてない。たかがクレープが銀貨2枚もするなんて……」
なんだよあのジャンボクレープ……
明らかに両手で持ち切れない大きさだっだんですけど……
「言ってないから。ん~美味しい!」
クッ、僕が高い金出したやつを目の前で食うとは………
というか本当に美味しそう。
エネマ……友情というのは結構簡単に壊れるみたいだぞ……
「ケインもちょっと食べて良い」
そう言ってジャンボクレープを渡してきた。
うん、エネマは出来る子だからそうしてくれるって信じてた!
……………………………………………
………………………
…………
エネマと帰っていると、何か視線を感じた。
気のせいだろうか………
「エネマ、なんか視線感じない?」
一応索敵能力の高いエネマに聞いてみた。
「……ん………んん?な、なんか5人くらいが私達の事つけてるみたい……」
「ええ……ストーカーってやつかな?エネマ心当たりある?」
だとすれば随分集団的なストーカーだと思うが……
「はっ!そういえば最近いつの間にか冷蔵庫の中身が減ってたり、無くしものしたり、財布の減りが早かったり……」
確定だな。そのつけてきてる5人というのは間違いなくストーカーだ。
許せん、花の女子学生をストーキングするとは……
「じゃあ1度路地裏に入ろう。入ったら全力で回り込んで、捕まえて騎士団に引き渡そう」
「了解」
僕の提案を受け入れたエネマが顔を強張らせた。
そりゃそうだ。
今まで自分の知らない所でつけられて家の中まで入られていたのだから……
路地裏に入った僕達はすぐに全力疾走をして、5人の背後をとった。
「は!?おい、あいつら消えたぞ」
「クソ!手分けして探せ、まだ遠くに入ってないはずだ」
「……どこに行った?見つけないと俺たちが…」
僕達を見失って焦っているようだった。
「で、あなた方がストーカーで間違いないですね?」
急に背後から話しかけられ5人の男達は情けなく声をあげる。
「ヌオッ!……フッ、流石だな、まさかあの位置で気付いていたとは。だが、わざわざ人気のない路地裏に来てくれるとは好都合だぜ。テメェら、やっちまえ!」
そういうと、5人の屈強な男達はケインに襲いかかってきた!
………………………………………
…………………
………
5分後、意外と良い運動になった。
狭い路地裏では動きが制限される上に、僕は相手を殺さないように手加減をしていたから……
ボロボロにされて床に正座させられている男達に問う。
「お前らが最近エネマのストーキーングをしていたんだな?」
それを聞くと1番大柄な奴が即座に否定した。
「違う違う。俺たちが用があったのはテメェのほうだ。ケイン」
……僕?
「お前ら僕のこと好きなの?」
「違う、そうじゃない。なんで女ってみんなすぐに恋愛やらなんやらに結びつけるんだ!」
じゃあなんなの……
「俺等は肉体改造部の主力メンバーだ!」
ああ、通りで筋肉があると思ったらそういうことだったのか。
「つまり、部長がコテンパンにされたから報復に来たって事?」
「……まぁそういう事だ」
「じゃあエネマの財布の減りが早かったのは……」
「エネマさん、毎日クレープ屋通ってるって学園でも有名だぜ。そりゃ毎日行ったら金も無くなるだろ……」
……ただの無駄遣いじゃん
「冷蔵庫の減りまで早かったのは……」
「この間エネマさんの友達が言ってたんだが、家でもクレープ沢山作ってみたから食べてって友達呼んだとか……」
……そりゃはやいよな、減るの。
「無くしものが多かったのは……」
「それは知らねぇけど、エネマさんってしょっちゅう学園でも『教科書無くした』って言ってたよな」
……………
「エネマ?」
「……許して」
可愛いポーズで言ってもダメだ。
この後僕はきっちりジャンボクレープを奢らせた。
1
お気に入りに追加
1,867
あなたにおすすめの小説
転生したので、とりあえず最強を目指してみることにしました。
和麻
ファンタジー
俺はある日、村を故郷を喪った。
家族を喪った。
もう二度と、大切なものを失わないためにも俺は、強くなることを決意する。
そのためには、努力を惜しまない!
まあ、面倒なことになりたくないから影の薄いモブでいたいけど。
なにげに最強キャラを目指そうぜ!
地球で生きていた頃の知識と、転生するときに神様から貰ったチートを生かし、最強を目指します。
主人公は、騎士団に入ったり、学園に入学したり、冒険者になったりします。
とにかく、気の向くままに、いきあたりばったりに書いてるので不定期更新です。
最初シリアスだったのにギャグ要素が濃くなって来ました。
というか登場人物たちが暴走しすぎて迷走中です、、、。
もはや、どうなっていくのか作者にも想像がつかない。
1月25日改稿しました!多少表現が追加されていますが、読まなくても問題ありません。
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
異世界チートはお手の物
スライド
ファンタジー
16歳の少年秋月悠斗は、ある日突然トラックにひかれてその人生を終えてしまう。しかし、エレナと名乗る女神にチート能力を与えられ、異世界『レイアード』へと転移するのだった。※この作品は「小説家になろう」でも投稿しています。
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
土岡太郎
ファンタジー
自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。
死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。
*10/17 第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。
*R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。
あと少しパロディもあります。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。
YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。
良ければ、視聴してみてください。
【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
https://youtu.be/cWCv2HSzbgU
それに伴って、プロローグから修正をはじめました。
ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる