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第二十話 騎士団
しおりを挟む『雷神』の噂
誰でも一度くらいは聞いたことがある。
曰く、誰よりも速く、正確で、力強いと。
「え、あの人が噂の『雷神』ですか?」
「ああ、そうだよ。僕たち第6騎士団の隊長、そして、この国では3人しかいないAランク騎士さ」
騎士にも冒険者と同じようにランクが設けられている。
Aランクの騎士はこの国に3人、冒険者は2人いる。
「お疲れ様です!まさかものの10秒で、200の軍勢を倒すとは……流石です隊長」
「いや、そんなにいなかったぞ……多分100くらいかな」
「え、おかしいですね。冒険者ギルドで聞いた話と違いますが……」
「あっ!すみません、僕が100体ほど倒したからかと…」
「え、君が倒したのかい?100体も?Cランクの魔物もいたはずだが…」
「いえ、僕が倒したのはDランク以下の魔物です。ですからそんなに強くはなかったですよ」
「いやいや、だとしても凄いよ!見たところまだ若いし、その歳で魔物の軍勢を相手取れるとはね。何か優秀なスキルを持っているのかい?」
「あ、ははは。…あんまりいいスキルは無いですよ」
僕の答えにくそうな顔を見て、クウガさんは勘違いをした。
「そうだね……ごめんよ、詮索してしまって。冒険者にとって自分のスキルを語るのは好ましく無いからね」
とにかく納得してもらえたようだ。
僕は騎士団の人達に担いでもらい、一緒にギルドに戻った。
「後のことは、僕たち騎士団に任せてくれ」
帰る途中クウガさんが言った言葉が気になった。
ギルドに着いた。
するとギルド長が出てきて言った。
「いやぁ~すみませんねうちのクズがご迷惑をおかけしてしまい。本当スキルも碌に持っていないゴミでして、騎士団の方々がわざわざ助けて下さる必要など無かったのに……あ、心配しないでください。こいつにはそれなりの処分をしますので」
こいつ……僕のこと見捨てるつもりだったのか……
怒りというよりも、半分呆れていた。
すると、クウガさんの顔が急に真顔になった。
「貴方はギルド長なのに冒険者ギルドが定めるルールをご存知ないのですか?ケイン君の事を見殺しにしようと考えていたとは……」
冒険者ギルドは、いくつかのルールがある。
その中の一つに、『助けられる命は助ける』
というものがある。
だからといって、依頼を無償で受けてもらうとかは無い。
目の前で殺されそうな人、
命の危機があると知っている人は、自分の出来る限りの力で助けてやれというものだ。
だが、今回のギルド長の行動は明らかにそれを無視している。
破っても、特に罰があるわけではないがギルド長がギルドのルールを守らなかったとなると体裁は悪くなるだろう。
「いえ、今のは言葉の綾ですよ。やだなぁ。それに、この無能がギルドと騎士団に迷惑をかけたのも事実ですしね」
「無能?ケイン君が?貴方よりもよっぽど有能ですよ。無能なギルド長さん」
「私が無能だと?……何を勘違いしているか知りませんが冗談はよしていただきたい」
「貴方は森に異変があると知りながら調査を怠りましたね?本来異変が見られたら調査をするのはギルドの義務です。」
「そんな訳ないでしょう。たかがゴブリンの減少ごときで異変だなどと」
「ですが、実際あの森には魔王軍が潜んでいました。もっと早くに調査すれば迅速な対応が取れたはずです。それに、魔王軍を討伐しようとしたそうですね?国からは騎士団が来るまで足止めを、と言われていたはずなのに……」
「それは………」
「大方討伐して、実績を得ようとでも思っていたのでしょうが、訓練をしていない冒険者が、戦争などできる訳ないでしょう」
「ですが、私は戦力差を見て倒せると思ったから…」
「結局倒せず、多くの犠牲者が出ましたよね?」
ギルド長が返す言葉を無くしたのか黙り込んでしまった。
「貴方には一度王都のギルド本部に出向いてもらうことになります。他にも、報酬金の横領や部下に対するセクハラなんかの疑い出ているそうですね。どうやらこのギルド支部は意識改革が必要なようです」
「う、うるさい」
叫んだギルド長が、腰の剣を持ち、クウガさんに斬りかかろうとした。
しかし、その剣撃はいとも容易く受け止められてしまった。
そのまま殴られ気絶したギルド長を騎士団の人達が運んで行った。
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