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第9章 世界での新たな展開

9.2 日本新世紀会創立3周年2

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 続いて、インフラの高度化の進展について藤水宏議員から説明があった。
「まず、インフラの目玉であった、時速800㎞のリニア新幹線の九州、北海道への進展の件ですが、これについては重力エンジン駆動の航空機の開発によって、見直すべきという議論がありました。しかしながら、都市の中心部にある駅から他の都市の駅を結ぶ利便性は無視すべきでないという結論になりました。
 そこで、超電導状態を作り出すためにエネルギー消費の大きいリニアは見直して、駆動力は重力エンジン駆動とすることになりました。この場合のメリットは、もはやレールが必要ないわけですので、要は重力エンジンで駆動される列車が通る空間があればよいということになります」

 藤水の言うように、新幹線計画は大幅に見直され、新幹線として完成した路線はそのまま用いるが、他は在来線の路線を走ることになった。このニュートレインシステム(NTS)の列車は、風切り対策ができていて、そのまま時速800㎞の走行が可能なリニア路線では問題なかった。

 しかし在来線では、風切りによる騒音・気流などの周辺への影響を考えると、時速300㎞が限度であった。これについては、旅客機に使われている、音速を超える場合のショックを和らげるため、機体をフレキシブルな力の膜で覆う技術が活用された。このことで、時速600㎞までは周囲に大きな影響なく速度を上げることができた。

 その結果、リニア新幹線の路線の建設は結局東京~大阪間のみの建設で終わり、他は在来線の路線を使うことになった。急ぐ場合は、大幅に増便される重力エンジン旅客機を使えばよいのだ。在来線の路線を使う場合、新型の重力エンジン駆動の列車と、既存の列車ではあまりにスピードが違いすぎて、同じ路線で運用することは不効率であるため、既存の列車のスピードアップが計られた。

 この方法は既存の機関車の動力部を重力エンジン駆動に代えて、さらには各車両には重力エンジン式の浮遊装置を取り付けることで、大幅に重量を減らし抵抗を少なくすることで時速400㎞を実現している。この既存列車の改修と並行して、新型の重力エンジン駆動のNTS方式列車も現在大車輪で製造中であり、1年後には改修列車と、新型列車が混合した状態での一応の暫定システムが完成の見込みである。
 最終的にすべての列車がNTS方式になるのは6年後とされている。

 藤水は次に海運システムの説明に移る。
「我が国の輸送に占める海運の割合は、四方を海に囲まれていることもあって、国際的にみると例外的に高く30%を越えます。船舶については、先ほど木俣議員の話にあった通り、一部のクルーズ客船を除けばほとんどのものが、重力エンジン推進に換装されたか、予定されています。また、木俣君から話のあった航空貨物機は現在大増産中ですが、これらは大部分が海外との輸出入に使われております」

 藤水の話の通り、内航船は当面多くが既存船舶の機関部を重力エンジン駆動に換装したもので運航しようとしている。しかし、木俣から話のあった貨物機では内航船としては大きすぎるため、中小造船所によって、最小200トン積みから様々なサイズの航空船が作られて、すでに老朽化した船舶の代替として運用され始めている。船については、全部が航空タイプに入れ替わるのは10年を要すると考えられている。

「このように、近い将来、わが国の輸送の大部分を担う、自動車、列車、船舶がすべてAEバッテリーによるモーターまたは重力エンジン方式に代わってしまいます。そのため、交通インフラは大きく様変わりすることになります。地上を走る自動車については、現在では重力エンジンを積めば飛ぶことも可能です。
 しかし、空を飛ぶ航空機を操る技術は2次元にしか動けない自動車とは大いに異なりますし、お互いの衝突、または様々な構造物や人との衝突事故を防ぐためには、その飛ぶ区域を制限する必要があります。したがって、当分の間は、道路はそのまま利用されることになりますし、そこから直接空に飛びあがることはできません。

 但し、重力中和の技術を用いて車輪のない地上走行機はすでに完成していまして、これは徐々にタイヤを使った車から代替していっています。また、これに飛ぶ機能を付けることは容易でありますが、現状では実用機としては許されていません。
 しかし近い将来には、そうした機も作られるようになり、例えば道路に一定間隔で離陸、着陸スペースを持つようになるでしょう。また、鉄道は重力エンジンを使っても、同じように駅を使って乗り降りしますが、飛行機と船舶の運用が大いに変わってきます」

 藤水が言う通りで、港については既存の船舶を回収したものは、現状の形の港を運用するしかない。しかし、こうした船型の改修機がすべて新型の航空輸送機に変わったら、実質的に従来の港と空港は同じ機能を果たすことになる。重力エンジン駆動の航空機は滑走を必要とせず、目的地の上空についたら鉛直に上下向することが可能であり、その速度のコントロールも自由自在なので機体の倍程度のスペースがあれば、離陸はむろん降りることもできる。

 したがって、現在の空港の滑走路は必要がなく、機の離陸、着陸にはエプロン程度の面積があれば十分である。ただし、それは旅客機の場合のことであり、貨物機においてはそのサイズからして現在の空港の荷役システムでは到底対応できない。

 さらには、空港からの交通システムも急激に増加する貨物を運ぶようになっておらず、逆に港からは貨物の輸送を前提に交通システムが作られている。したがって、既存のシステムの有効利用の観点から、旅客機は基本的に既存の空港、貨物機は既存の港をターミナルとするように計画された。
 ただし、空港は従来の航空機の長い滑走距離、騒音等の制約から都市から非常に遠い場所に建設されたものが多かった。これについては、都市近郊に旅客機のターミナルを建設するものも多く建設されている。

 次に保健・医療について、医者であるすらりとした長身のイケメン、浅見健太郎議員から発表された。
「私は主として魔法の処方及びその影響について述べたいと思います。わが会が発足したときに掲げた政策は、中高年の人々への魔法の処方の手法の確立とその実施であります。このことについては、すでに木俣議員の発表にもあったように、重力エンジンンの技術による斥力の応用によってすでに実用されており、現在鋭意処方が進んでおります。
 しかしながら、我が国の人口はすでに40歳以上の方が多く、そのためその完了までにはなお、3年以上を要すると考えられております。また、この処方の対象者については、どのようにするかの議論があったわけでありますが、すでに説明されたように、すべての希望者には行うということで実施されています。

 これは処方によって、高年の方々の活力が増して労働力として参画した結果、経済が極めて活発化している我が国において、その人手不足を補っております。さらに、自ら体のケアをするようになった結果、処方を受けた人々の医療費が劇的に下がっており、その相乗効果によって、重荷になるといわれていた中高年の人々の増加による国の経済への負担は極めて小さなものになっています」

 さらに、医療については知力の増した医療関係者の努力で、従来の難病と言われていた様々な病気である、がんについてはすでに完全な治療法が開発されており、様々な臓器の再生医療もほとんど完成したため、手足の再生は無理ではあるが、目や四肢の機能の喪失が完全に治せるようになっている。

 さらに財務に関して、西村みずほ議員、中背やせ型の公認会計士が説明した。
「財務についてのわが会の政策は、一つは産業の多角化と国費の効率的な投入を通じた、雇用の増加によるGDPの継続的な増加、年率8%を目指すというものでした。また、もう一つは日銀保有の国債の国庫納入を実施するといものです。
 一つ目については、結果的に言えば、年率GDPの成長率は過去3年の平均は8.2%ですし、今後数年のオーダーでは悪化する要素は見えていませんので、目標は達成できていると言えます。これはその前の5年の傾向が続いているということです。しかし、3年前の時点で少なくとも雇用の面では危険な兆候が見えていました」

 これは彼女が言う通りであり、人々の知力が増し魔力が使えるようになった結果、IT機器を魔力で扱えるようになったほかAI技術が急激に進んだ。このことで、実用化された技術として以下のようなものがある。
1) 自動化:人型ロボットの開発、法規の整理による自動応答、車両の自動運転、重力エンジン航空機の自動操縦、土木重機の自動運転、会計処理の自動化等、測量など、
2) 助言(手法の考案、誤りの指摘)のためのAI:政策、医療、経営、各種設計など、
3) 魔力によるIT機器の操作

 これらの開発された技術をすべて実用化すれば、結果として、産業界の効率は大幅にあがり、コストは下がる。しかし、一方で極めて多数の失業が生まれることは明らかであった。3年前は、産業界がその大きな動きをする前夜であった。

 これらを実用化した結果は、失業による収入に低下と購買力の喪失につながり、トータルとしてGDPの低下として現れることは明らかであった。それは、すでに開発されていた陽子電子頭脳の診断によっても検証され、解決策として、政府でとりわけ人手を減らすようなロボット化及びAI活用は制限をかけることになった。

 この点で、日本新世紀会のメンバーは政策決定の大きな役割を果たしている。とりわけ、商店・レストラン等の接客業に、ロボットを使うことは厳しく制限されたが、一方で力仕事、介護、土建現場での人力土工、農業の耕作、林業の伐採など、さらに危険な仕事のロボット利用は奨励された。

 それでも、効率の向上によって、自分の仕事を失う人は数多く出たが、全体としての経済の活況の中で他の仕事を見つけることができている。なお、日本のGDPはすで千兆円を超え、粉飾を取り去った750兆円余りとなって長く停滞しているの中国を越えて世界2位になっている。

 この段階で、日本では政府が強力に労働分配率こだわり、GDPの伸びを特定階級に吸い取られないようにした結果、労働者の収入は大きく伸びている。その結果、女性がパートなどで低賃金で働く必要はなくなったため、このことも失業率が上がってこない一因になっている。

 なお、日本国債の日銀保有分約600兆円は、日銀が政府の子会社である以上、意味がないので国庫返納という提言をしたが、抵抗も大きく実害はないのでそのままということになった。なお、この時点での日本政府の国債は1250兆円であるが、日銀の保有600兆円、アメリカ国債100兆円、国の関連機関への出資金400兆円、海外への貸付200兆円で、すでにマイナスにはなっていない。
 また、現在は政府の予算規模は190兆円であるが、好況のなか税収も順調で収支は均衡しているので、国としての財政に問題はない。

 次いで、安全保障について、小柄だが鋭い目つきのいかにも軍人風の瀬崎圭吾が説明した。
「安全保障については、ご存知のようにすでに陸上イージス・システム2基によって、日本は少なくとも弾道ミサイルからは守られています。さらに、自衛隊の兵器体系は全面変更の最中でありますが、防衛の主役の一つである“しでん”戦闘機については第1期整備計画の500機はすでに完成して配備済ですので、少々の問題があってもこれで基本的な対応はできると考えています。さて、まず陸上自衛隊ですが、すべての車両は駆動をAEシステムに換装済みであり、戦車は重力エンジン駆動としてキャタピラーは取り外しました」

 瀬崎の説明は続く。戦車については重力エンジン換装により時速300㎞で飛べるようになったが、空中で主砲は打てず中途半端な存在である。そこで、陸自向けとして、装甲を厚くして、レールガンを2基備えた戦闘空中機“らいでん”が次期主力兵器として配備されつつある。

 これは時速500㎞で飛べる長さ8m幅3m高さ2.5mの小判型の重力エンジン機で戦車と戦闘ヘリの機能を兼ね備えている。陸自は1機20億円のこれを500機装備するとして、現状ですでに200機配備している。また、兵員が50名乗れる中型空中輸送機をこれもすでに100機配備している。

 航空自衛隊と海上自衛隊は一体化が進みつつあり、AEバッテリー励起の機能を備えた巨大な空中空母機4機(長さ200m×幅25m×高さ15m、“しでん”30機収納)の配備を計画しているが、現状では2機が就航している。基本的に既存の機体、艦体は重力エンジン駆動に換装して改修しているが、潜水艦はそのまま魚雷の代わりにミサイルを設置し、レールガンを設置して第1線の戦闘機として使えることになる。

 さらには、新型の重力エンジン駆動の戦闘機として、民間の旅客機及び貨物機の大きさで装甲を施したものを数多く製造中であり、すでに配備されたものも多い。
 今のところ、自衛隊の装備改変は途上であるが、米軍相手では荷が重いとしても、中国軍相手であれば、問題なく完勝できるレベルになっている。

 なお、中国軍の誇りであった空母南海覇王と東海覇王は、3年前に謎の大爆発を起して前者は訓練航海中であった南シナ海で沈没し、後者は母港で着底した。たまたま、そのときハヤトがタイに行くために、南シナ海上空をしらとり01で飛行中であったが、むろん偶然である。
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