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潜入捜査
潜入捜査
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「ヒントになるかどうかは判んないけど・・・」
透が前置きする。
「気になる事があるなら何でも言ってみて。」
わたしは極力彼の感じる重圧を取り下げる様に話し掛けた。
透が続ける。
「誰かは言ってなかったけど、前に一緒に絵を描いてる人がいるって言ってた。」
「絵を?」
そういえば、茉都香は中学時代は美術部だったっけ。高校では、一年生のうちに辞めてしまったと聞いていた。もしかしたら、その辺のところに何か特別な理由があるのかも知れない。
透の一言によって、一歩前進する光明が見えてきた。
わたしは、おばさんから聞き出した茉都香の周辺の人物リストを広げた。
この中に怪しむべき人物がいるだろうか?
そのうちに、彼女たちから聴き出した話の内容を基にして、全員の相関図を作らなければならない。目に見えない関係性が浮かび上がるかも知れない。
「ねぇ透くん。この中に茉都香の口から聴いたことのある名前の人はいない?」
「ゴメン。名前までは聞き憶えがないや。」
しばらく眺めた後、残念そうに首を横に振って透が謝る。
「いいのよ、謝る必要は全然ないわ。今度、学校に行ったら茉都香の周りで絵を描いている人を捜してみるわね。」
どうやらリストアップすべき人物が増えそうだ。
「そうだね。それとぼく…栞ちゃんにまだ言ってなかった事があるんだ。」
ここにきて、随分言い辛そうにして顔をしかめている。
「なあに?」
「さっき栞ちゃんが言ったよね?必要な時には、言わなきゃならない場合もあるってさ。」
“なんだろう?気になる言い回しね。”
「そうだね。」
わたしは内心不安が芽生えた。
「今がぼくにとってその時なんだ。」
「どういう事?」
“どういう事?”
「あのね、ぼく、この間学校の友だちと沼に釣りに行ったんだ。」
「うん、それで?」
「その時、ぼくは赤ん坊の死体を釣り上げたんだよ。」
「へぇー凄いじゃない。よかった……エェーッ!?」
”赤ん坊の死体って言ったいま!?”
「針に引っ掛かったビニール袋の中に死んでる赤ちゃんが入ってたんだ。」
「なんだってまたそんな事に……まさかエェーー嘘でしょう!?」
わたしは動揺を隠せない。言われている事にしても頭が混乱してどうにもよく理解出来ない。
「そうなんだ。ぼくはあれは、あの赤ん坊は茉都香ちゃんの赤ちゃんだと思う。……多分。」
そう言い淀むと、透は涙をこらえて唇を噛みしめると俯いた。
でももし茉都香が赤ちゃんを産み落としたにしては、時期が早過ぎる。
ということは、茉都香のお腹の中に赤ちゃんがいたという事実を、人に知られる事を恐れた人物が……となると、茉都香はもう・・・?
「茉都香……」
わたしは突然のショックで金縛りにあったみたいに口が利けなくなった。。
「なかなか言えなくてゴメンなさい。」
透が涙を浮かべて小さく頭を下げた。この子も今までたった一人で悩んできたに違いない。わたしは止めどなく滴り落ちる涙を拭い、懸命に鼻水をすすりながら、彼の頭をごしごしと撫でてやった。
同じく堰が切れた様に泣きじゃくり始めた少年の頭をぎゅっと抱き寄せると、しばらくの間、ふたりして号泣し続けた。
透が前置きする。
「気になる事があるなら何でも言ってみて。」
わたしは極力彼の感じる重圧を取り下げる様に話し掛けた。
透が続ける。
「誰かは言ってなかったけど、前に一緒に絵を描いてる人がいるって言ってた。」
「絵を?」
そういえば、茉都香は中学時代は美術部だったっけ。高校では、一年生のうちに辞めてしまったと聞いていた。もしかしたら、その辺のところに何か特別な理由があるのかも知れない。
透の一言によって、一歩前進する光明が見えてきた。
わたしは、おばさんから聞き出した茉都香の周辺の人物リストを広げた。
この中に怪しむべき人物がいるだろうか?
そのうちに、彼女たちから聴き出した話の内容を基にして、全員の相関図を作らなければならない。目に見えない関係性が浮かび上がるかも知れない。
「ねぇ透くん。この中に茉都香の口から聴いたことのある名前の人はいない?」
「ゴメン。名前までは聞き憶えがないや。」
しばらく眺めた後、残念そうに首を横に振って透が謝る。
「いいのよ、謝る必要は全然ないわ。今度、学校に行ったら茉都香の周りで絵を描いている人を捜してみるわね。」
どうやらリストアップすべき人物が増えそうだ。
「そうだね。それとぼく…栞ちゃんにまだ言ってなかった事があるんだ。」
ここにきて、随分言い辛そうにして顔をしかめている。
「なあに?」
「さっき栞ちゃんが言ったよね?必要な時には、言わなきゃならない場合もあるってさ。」
“なんだろう?気になる言い回しね。”
「そうだね。」
わたしは内心不安が芽生えた。
「今がぼくにとってその時なんだ。」
「どういう事?」
“どういう事?”
「あのね、ぼく、この間学校の友だちと沼に釣りに行ったんだ。」
「うん、それで?」
「その時、ぼくは赤ん坊の死体を釣り上げたんだよ。」
「へぇー凄いじゃない。よかった……エェーッ!?」
”赤ん坊の死体って言ったいま!?”
「針に引っ掛かったビニール袋の中に死んでる赤ちゃんが入ってたんだ。」
「なんだってまたそんな事に……まさかエェーー嘘でしょう!?」
わたしは動揺を隠せない。言われている事にしても頭が混乱してどうにもよく理解出来ない。
「そうなんだ。ぼくはあれは、あの赤ん坊は茉都香ちゃんの赤ちゃんだと思う。……多分。」
そう言い淀むと、透は涙をこらえて唇を噛みしめると俯いた。
でももし茉都香が赤ちゃんを産み落としたにしては、時期が早過ぎる。
ということは、茉都香のお腹の中に赤ちゃんがいたという事実を、人に知られる事を恐れた人物が……となると、茉都香はもう・・・?
「茉都香……」
わたしは突然のショックで金縛りにあったみたいに口が利けなくなった。。
「なかなか言えなくてゴメンなさい。」
透が涙を浮かべて小さく頭を下げた。この子も今までたった一人で悩んできたに違いない。わたしは止めどなく滴り落ちる涙を拭い、懸命に鼻水をすすりながら、彼の頭をごしごしと撫でてやった。
同じく堰が切れた様に泣きじゃくり始めた少年の頭をぎゅっと抱き寄せると、しばらくの間、ふたりして号泣し続けた。
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