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A.T.gεmのDaisukeとすとらびのサブリーダー緋雨

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   炎の魔法が連続で敵めがけて乱射されていくのを
A.T.gεmのDaisukeは、頼もしいなと口元が緩む。

    すとらび、か。

   と、音楽の人気オリコンチャートで名前が被ることがあって知ってはいたが、同じ声の魔法使いとは。


   「雷弾サンダーバレット!」


  負けてられないと、雷系の弾速や威力をコントロールできる術を発動する。新月緋雨のソロ曲「ナイト」を口ずさんだあと詠唱をし、


 「バーン・フレイム!」


   交互に、炎と雷の術が炸裂し、その煙の向こうから
聞き覚えのある声がした。


 「Daisukeくんに新月緋雨くん。悪いが、こんなにいま元気だと困るんだよ」


 「えっ……織木せん……」


  すとらびサブリーダーの新月 緋雨くんが、その人をみた瞳孔が開く。それは、そうだ。

   目の前に立ちはだかるのは、闇の流星群に、依頼してきた
本屋大賞作家の織木 真々なのだから。


 「緋雨くん、あぶない!雷壁サンダーウォール!」




「しぶといなっ!同じ雷系かよ、めんとくさ」

織木の背後から、まひるが片足立ちのフラミンゴのようなポーズで右手で頭を掻きながら、だるそうに言葉を発する。


「境界線の彼方へ、以来だね。Daisukeさん」


まひるが術を再度かけようとするのを、織木は右手で制止し、
  身体の向きをDaisukeへむける。


「館花琴音を連れてきてくれて、ありがとうございます。」


Daisukeの瞳孔も開く。

「織木先生。正気か?!良心も消えたのか?」


「いまは、悪魔となった私と戦うべきじゃないと。いま少しだけ戦ってわかったんじゃないのかな?私に牙を剥くなら容赦なく潰す」


「織木先生!最初から館花琴音先生を生け贄にするつもりだったんですか?!」


緋雨は、魔法詠唱を止めると、泣きそうな表情で織木をみつめている。


「·····そうだ。それしか、ないからだ。」


「俺の姉さんマシロの転生である館花琴音が、記憶を取り戻さない限り、このまま生け贄になる。マシロは魔界の守り石、ブラックステラでもある。意識のないブラックステラは、魔界や天界だけじゃない。人間界も滅ぼす。魔王が生け贄にして食べるか、姉が意識を取り戻すかしないと、ここは滅ぶんだ」


「……は?」 


予想もしない解答に、緋雨は、間抜けな声を出してしまう。


「ブラック、ステラが、館花琴音?って聴こえた」


「そうだ。人間が好きな悪魔、マシロ。私の姉の転生した姿だ」


「Qoonoskeが探していた宝石、ジェム。ブラックステラが、人間の姿になっているとは、我々A.T.gεmがいくら探してもみつからないわけだ」



  A.T.gεmは、境界線の彼方へのあと、芸能界関係者が、ひとつの漆黒の色の宝石、ジェムをみると、病んでいく、流行病のように生気を吸い取られ、老化していくという事件を追っていた。


   館花琴音や織木真々と別行動になり、個人活動の増えA.T.gεmは、それぞれの得意分野を個人で活動しつつ、全員が揃うことが少なくなり、解散の危機までマスコミは噂していた。




    もともとの「本体」が、バレそうになるのを、隠すために



  
「人間を好きな悪魔、か。館花先生も、そうだったか」



「なんだ……おまえたち……まさか」


 まひるは、詠唱の手を緩めた。


「そうだ。A.T.gεmは人間の俳優ユニットじゃない。悪魔の俳優ユニットだ。この芸能界が、売れているほとんどが人間じゃない。悪魔たちだ」

 A.T.gεmをみたあと、織木のほうを一瞥してから、緋雨の方へ向き直す。

「そう、姉もそうだが人間を好きな悪魔が、芸能界で俳優やアイドルグループになるんだ」



 「すとらびは、天界の声の魔法を使う、天使だろ?」


 織木が、緋雨をみて、目を背けたのを確認した。


「そうだ……俺たちは天使だ。闇に包まれていく人間界を守るために神に遣わされた」


「闇の流星群と、まるで悪魔側と思わせて、悪魔を仕掛けるためによくやるよ」



まひるは、Daisukeをゆっくりと床に座らせた。

 「どうしてこうなった?悪魔は人間と馴れ合っては行けない。だが随分いるよな、芸能界に」



 「A.T.gεmはジェム、宝石という意味も込めている。探してきた。魔界の守り石を。人間界を滅ぼすかもしれない宝石を。ブラックステラ。……人になっていたとはしかも。去年からずっと一緒にいたとは」

 Daisukeは、ポケットから出したスマートフォンについた、A.T.gεmのスマートフォンジャックをみて、館花琴音の笑顔を思い出す。


   ーDaisuke、大好きっ!酔ってんのか、たちばなことね!までがキャッチコピーだよねーといって笑っている館花琴音を。



  「館花琴音は、自覚がないだろう。なぜ人間を助け続けているのかわからないだろう。自分の宿命を無自覚で無意識で察して動いている。時期がきたら大好きな人間を、自分が滅ぼすことも分かるんだろう」



  織木も、胸元に刺さった万年筆を触る。

  館花琴音と出逢った受賞のレセプションパーティー。爆発事件や境界線の彼方へでの数々の事件と。


 喧嘩三昧の毎日と、頬を膨らませながら、仕方ないなぁといって結局、助けてくれる、そんな記憶が、映画のムービーのように脳裏に流れる。



 「Qoonoskeのところに、いるんだろ。おまえの相棒、あさとが。」


 「そうだね。メンバーの中でチェスで言う、歌い手のKINGのQoonoskeと白夜楓。まずいよね、悪魔と天使でデュエットでもされたらね」


  

まひるは、うんざりと織木とアイコンタクトをとると

 「あさとが、負ける事があれば、ここにいるメンバーでタチバナコトネに一斉攻撃することになるの、理解してる?」   


 「そうだ。ブラックステラが開花すると、館花琴音は、闇落ちして魔女になる。ただ世界を壊すだけの、悪魔の魔女になる。止める方法は、魔王が生け贄として開花する前に食べるか、開花したら戦って一か八か賭けるか」



  「館花先生!そんなの、Qoonoskeだけじゃない!ケンちゃんだって……出来ないぞ」


 Daisukeは、震える手を反対の手で捕まえて、落ち着かせる。

  A.T.gεmのひとり、俳優のケンちゃんは


 館花琴音が「神推しSuper」といって、推しとしても応援しているひとりだ。そういう縁があって、ケンちゃんから涼くんを紹介された。

   だが、その数年前に、まだ売れ始めたばかりの館花琴音と、涼は出版社で会っている。編集者に原稿用紙を顔に叩きつけられたのをみて、涼が原稿用紙を集めて渡すのだ。


   いくつも運命の糸が絡み合い、いま一つの糸に繋がろうとしている。


  「Qoonoske、白夜楓・・・・・・・頼むぞ」

   Daisukeは、A.T.gεmのスマートフォンジャックを握りしめた。




 まひるは、両肩を上げ下げして、深い深呼吸をすると

  「みてくる」


  といって煙の中に消えていった。










 







 








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