1 / 70
1 始まり 多分 遭難です
しおりを挟む
面倒なことになっている気がする。
ちょっと、いろいろ思い返してみる。
……やっぱり面倒なことになっている。
「今後の行方を左右する大事な選挙になりますね。無党派層の行方が気になります」
テレビから流れてくる声に、うまれて初めて選挙に行った。
決して、隣に住む坊やの「ハルちゃん選挙行った? ぼく、お母さんについていって、箱の中みたんだよ」というきらきらしたまなざしに罪悪感を抱いたからではない。
いつもと違うことをした。が、まだ普通だった。
そのあと、近所の野良ネコに尻尾を逆立てられて喧嘩を売られた。それも大したことではない。ご近所の生物ヒエラルキーの最下層に位置する自覚はある。ボス猫に怒られるのは当然の帰結である。
休日に外出などという一大イベントをこなして少々気が大きくなった。天気もよかった。雲ひとつない空。柄にもなくうきうきして、昼ごはんを作ってみようと思いたった。幸い財布と鍵だけもって出るのが面倒で、リュックごと背負って歩いていた。ノートと筆記具しか入れないリュックに食料を入れるなんてどこかに遠足に行くみたいだ。そうだ、いっそお弁当を買ってどこかにプチ遠足に行ってもいい。
日曜の昼前のスーパーは戦場だった。ヒエラルキー最上位の皆さまの熱気とお尻におののきながら、弁当と、一週間分の食料を買って、帰り道を惰性で歩いて近所の公園に向かった。
誓ってもいい。私は方向音痴で、ぼんやり歩くと家にたどり着けないということもない。徒歩五分の場所だ。
私は遭難した。そう思うことにする。多分それが一番心に優しい。
ちょっと、いろいろ思い返してみる。
……やっぱり面倒なことになっている。
「今後の行方を左右する大事な選挙になりますね。無党派層の行方が気になります」
テレビから流れてくる声に、うまれて初めて選挙に行った。
決して、隣に住む坊やの「ハルちゃん選挙行った? ぼく、お母さんについていって、箱の中みたんだよ」というきらきらしたまなざしに罪悪感を抱いたからではない。
いつもと違うことをした。が、まだ普通だった。
そのあと、近所の野良ネコに尻尾を逆立てられて喧嘩を売られた。それも大したことではない。ご近所の生物ヒエラルキーの最下層に位置する自覚はある。ボス猫に怒られるのは当然の帰結である。
休日に外出などという一大イベントをこなして少々気が大きくなった。天気もよかった。雲ひとつない空。柄にもなくうきうきして、昼ごはんを作ってみようと思いたった。幸い財布と鍵だけもって出るのが面倒で、リュックごと背負って歩いていた。ノートと筆記具しか入れないリュックに食料を入れるなんてどこかに遠足に行くみたいだ。そうだ、いっそお弁当を買ってどこかにプチ遠足に行ってもいい。
日曜の昼前のスーパーは戦場だった。ヒエラルキー最上位の皆さまの熱気とお尻におののきながら、弁当と、一週間分の食料を買って、帰り道を惰性で歩いて近所の公園に向かった。
誓ってもいい。私は方向音痴で、ぼんやり歩くと家にたどり着けないということもない。徒歩五分の場所だ。
私は遭難した。そう思うことにする。多分それが一番心に優しい。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
騎士団長の欲望に今日も犯される
シェルビビ
恋愛
ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。
就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。
ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。
しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。
無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。
文章を付け足しています。すいません
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
決めたのはあなたでしょう?
みおな
恋愛
ずっと好きだった人がいた。
だけど、その人は私の気持ちに応えてくれなかった。
どれだけ求めても手に入らないなら、とやっと全てを捨てる決心がつきました。
なのに、今さら好きなのは私だと?
捨てたのはあなたでしょう。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる