目隠しは赤い糸

雪野 千夏

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一齢

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いくつものつむじを眺めていた。
さあ、これは何でしょう、といえば、子供たちは思い思いにしゃべりだす。

「えー、ゴマ?」
「種だよ、じいちゃんがこの間まいてたもん」

グループごとに机をくっつけ、その真ん中に置かれたシャーレの中の件の物体。子供たちは興味津々だ。確かに黒い粒は種子にしか見えない。これがあのうねうねの物体になるなんて私だってびっくりだ。

「でも、ゴマだと思う」

クラスで一番大人しい少女がそう言えば、他のグループでもゴマか何かの種だということで意見がまとまった。兄や姉のいる子供たちもいるが、彼らが家に持ち帰った幼虫と、目の前の物体とはイコールで繋がらなかったらしい。

「今日からこれを育てたいと思います」

じっとしていられない少年の瞳が輝いた。きっと外へ出て鉢に土をいれるという作業を思い描いているのだろう。残念だな。せいぜい皆にも驚いてもらおう。
黒板に向かう。

「カイコの育て方」

背中に刺さる視線が心地よい。わくわくとした視線が、一気に懐疑的な視線に変わったのがわかる。

「先生」
「はい」
「カイコって、これ?」

律儀に手を挙げたのはクラス一活発なカケルだ。

「そうです」

しれっと頷く。教師としては不親切であろうが、あのピルケースをあけた瞬間の驚きは分け合うべきだ。
とたんに教室中から悲鳴が上がる。この瞬間が教師でよかったと思える。リアルで素直な反応。

「今日から皆で蚕を育てたいと思います。大体一ヶ月ほどで蚕は繭を作り、成虫―蛾―になります」

蚕の育て方の本を各グループ一冊ずつ渡していく。

「一ヶ月って夏休みになってしまう」

面倒だからと昼休みも図書館で昼寝をしている隼人はこんな時ばかり計算が速い。

「そうですね。だから、途中までは皆で一緒に育てて、夏休みは自由研究にしたい人が持って帰って育てるようにしたいと思いますが、どうでしょう?」

以前と違い、各家庭の事情があり一律同じ対応をするというのは難しくなっていた。
賛成、声が上がる。さっそく子供たちは蚕当番はどうしようか、どれくらいで卵から孵るのかと話出す。

「いやです」
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