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第18話 「花(文学上)」を知りたい。まずは『花が語る中国の心』から

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小説には植物の描写がつきものです。
中華ファンタジーでは、白河紺子さんの『後宮の烏』がお見事ですよね。

鷲生も拙作に登場させたいものの、もともとそんなに植物に詳しくない上に、中華世界にどんな植物を登場させていいのか困っておりました。
自分が知ってるからっつーてもチューリップやコスモスなんかでは中華な世界が台無しですからね……。

↑というような愚痴を以前この連載でこぼしておりました。
その時には『長安の春』という本を見つけて、これで春の植物の資料になるというお話をしました。
( 第13話  季節が変わる前に速報的にご紹介!『長安の春』
https://www.alphapolis.co.jp/novel/161111112/529799972/episode/8694112 )

愚痴というのは他人様にこぼしてみるものでw
上記の拙文に対し「植物でしたらこんな本がありますよ~」とコメントでお知らせ頂きました! ありがとうございます!

自分が書いていた中華ファンタジーは、ヒロインが西域から来て後宮の植物に詳しくないものですから植物の描写をしなくて済んだのですがw
それが完成したので、次回作に向けて、ご紹介いただいた本を読んでみました。

※ちなみに。完成して現在投稿中の西域からきたヒロインが活躍する中華ファンタジー「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」はコチラです→https://www.alphapolis.co.jp/novel/161111112/878803039

ご紹介いただいたのは中公新書の、王敏著『花が語る中国の心 美女・美酒・美食の饗宴』です。
1998年出版でISBN-10は4121014170。ISBN-13は978-4121014177です。

著書の王敏さんは、プロフィールを見ると、中国生まれの日本研究家でいらっしゃるようで、花にまつわるお話を筆の赴くままに書き綴っておられるご本です。

プロローグではいろんな切り口でまとめられた「花のリスト」が挙げられています。

十大名花は時代と地域によって異なるそうですが、ここでは1987年の全国投票の結果が書かれています。

「梅、牡丹、菊、蘭、月季(庚申バラ)、杜鵑(ツツジ)、山茶(山茶花)、蓮、桂花(金木犀)、水仙」

他にも以下のようなものも紹介されています。

「花中両絶……牡丹、芍薬《シャクヤク》」「園林三宝……木に銀杏、花に牡丹、草に蘭」「花草四雅……蘭、菊、水仙、菖蒲」「花中四君子……梅、蘭、竹、菊」「盆樹四大家……黄楊《ツゲ》、金雀《エニシダ》、迎春《レンギョウ》、絨針柏《ジュウシンハク》」など。

それから「友人を花にたとえて」まとめられた「花十友」、「客人、貴人にたとえた(中略)花十二客」も挙がっています(それぞれは本書をご覧ください)。

ここで挙がっている植物は中華ファンタジーに登場させてもいいのだと、とっかかりができた感じです。

第1話は「百花盛宴」と題され、以下のエピソードなどが紹介されます(14頁)。

「牡丹雪の降る冬の日、則天武后は(中略)『百花』に『斉放』を命令した。『百花仙子』は緊急会議を開く(中略)。牡丹仙子だけは武后の命令を断ろうと主張するが、他の花の仙子たちは武后に恐れを感じていたので、相次いで花を咲かせた」

そして武后が牡丹をどう遇したかが語られ、その他の「百花」の話題が続きます。

第2話は「桃美人の美容食」、第3話は「桜嬢の渡日」、第4話は「菊君子の隠逸」、第5話は「桂花夫人の色香」と題され、それぞれの植物に関して綴られています。

各々の花の、中国文化での含意が分かってこれらの花を登場させるときの参考になりそうです!

ただ、最初に鷲生が「筆の赴くままに書き綴って」と述べましたように、特にストーリーや結論がある内容ではなく、さまざまなエピソードが次々に登場するので、どのような内容だったかと要約するのは難しいです。

今回、この文章を書くのに某ネット書店を確認してみましたところ、コメントで「全体として散漫で主題がみえてこない」という文言がありました。
まー、本書は随想というかエッセイというかというスタイルなので、この点は「しゃーない」というか。
肩ひじ張らずに、花を眺めるように楽しむ本ではないかと思います。

今回、この『花が語る中国の心』を図書館で借りてくるにあたって、別の収穫もありました!

京都市立図書館でこの本をタイトルで検索すると、検索結果に「一般件名」として「花(文学上)」というものが掲載されていたのです。
そして、その文字列をクリックすると、文学に登場する花に関する本がずらずらとでてくるではありませんか!

鷲生は大学の文学部に2回も通ってるくせに物知らずでお恥ずかしいのですが、図書館学に詳しくなくて……。
ざっと「一般件名」の図書館における位置づけを調べて見ると、京都府立図書館の説明が出てきました。

ここでは下記のような説明があり、ある程度、各図書館に共通して使われるもののようです。

「『一般件名』として目録に記述することばには一定の約束があり、統一したことばを使います。このことばを五十音順に配列したものが『基本件名標目表』です。1956年に初版が刊行されて以来改訂が積み重ねられ、最新版は1997年刊行の第4版となっています。当館では現在、目録作業時にこの『基本件名標目表』を用い件名を与えることを基本としています」
(京都府立図書館「目録の小部屋」No.19 「件名」って何?? -一般件名のおはなし-
https://www.library.pref.kyoto.jp/?column=%EF%BD%A2%E4%BB%B6%E5%90%8D%EF%BD%A3%E3%81%A3%E3%81%A6%E4%BD%95%EF%BC%9F%EF%BC%9F%E3%80%80%EF%BC%8D%E4%B8%80%E8%88%AC%E4%BB%B6%E5%90%8D%E3%81%AE%E3%81%8A%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%97%EF%BC%8D )。

鷲生が小説に登場させようと植物を調べようとしても、Wikipediaなどでは植物学上の説明が長々と続くので、「いや、単子葉植物とかそういうんじゃなくて。小説とかでどういうイメージなのかをしりたいんだけど……」ともどかしく思っておりました。

今回の件で「一般件名」の「花(文学上)」で検索すればエエんや!……と鷲生は一つ賢くなりましたw
(ちなみに『漢詩花ごよみ 百花譜で綴る名詩鑑賞』という本が見つかったので読んでみたいと思っています)。

このようなきっかけにもなりましたから、鷲生に『花が語る中国の心』をご紹介くださいました方には、重ねてお礼申し上げたいと思います。

そうそう、この本の面白いところは花にまつわる料理が紹介されているところです。
グルメの国の中国だけあってひと手間かけたものが多く、ズボラな鷲生にはやや敷居が高いのですが、簡単そうなレシピを選んで作ってみたいです。

※鷲生は世界の料理を作るのが好きで、それをテーマにした小説も書いておりますよ~。ご興味がおありでしたらぜひどうぞ!

「俺と料理と彼女と家と」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/161111112/67875358

あ、最後に。もう1回 宣伝させてくださいw
「後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符」はコチラです→https://www.alphapolis.co.jp/novel/161111112/878803039
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