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『アリスの魔力、凄いよ。俺、気に入っちゃった。いい子にしてるから、また貰える?』

 ラビさんはすっかりご機嫌になって、私に擦り寄ってきました。お尻には長い尻尾が2本あって、その尻尾がグルングルンと揺れています。その度にエディ様とグレン様に当たりかけて、お二人はそれを避けるのに必死でした。

「これも運動になるな」
「そうですね、魔獣にはいろいろいますからね」

 何だか平和な感じになって、私はラビさんを撫でながらくつろいだ気分でいました。すると、遠くの方から何やらズドドドドド、という音が響いてきました。顔を上げると、大きなオオカミのような魔獣がこちらに走ってきます。

「緊急通報、緊急通報。ウルフ型魔獣が1頭脱出。全員持ち場に着け」

 何やら大変です。緊急通報が発令されました。脱出したオオカミ魔獣は真っ直ぐこちらに向かっていると思われます。

「アリス、あれはうちで1番ヤバい魔獣だ」

 エディ様が魔力を溜めているのがわかります。グレン様が剣を抜いて構えました。私は言われている通り、グレン様の側に行きます。

「ラビさん、あの魔獣さんは?」

 お仲間ならわかるだろうと私はラビさんに聞きました。ラビさんは気持ち良さそうにあくびをしています。

『フフル様だよ。フフル様はここで1番偉いんだ。人間なんか、鼻息で飛ばしちゃうよ』

 え?鼻息で飛ばす?それじゃ、勝てないのではないでしょうか。でもそれなら何故この練習場にいるのでしょうか。ラビさんとエディ様たちは話ができませんでした。話ができないのに何故契約して練習台になったのか、いろいろ疑問になってきます。

『フフル様もアリスの魔力を食べたいんだよ。だって美味しいもん』

 え?と思っているうちにそのフフル様が近づいてきました。エディ様とグレン様が私の前に立ち、私を守ってくださいます。しかし、フフル様はその前で止まると大人しくお座りのポーズを取りました。

「え?」
「お座り?」

 エディ様、グレン様がフフル様を前に呆然としています。他の騎士の方々も追いついたのですが、同じく呆然としたまま動けません。

『お主は誰だ?』

 フフル様に言われ、私はフフル様の前に立ちました。

「アリス、ダメだよ」
「危ないから、下がって」

 エディ様、グレン様に言われ、エディ様が私の手を握ります。

「大丈夫です。私bの名前はアリスです。フフル様ですね。ラビさんに聞いています。よろしくお願いします」

『ラビール。この者の魔力を浴びて成長したな』

 成長したのですか?大きくなったようには見えませんが。

『見た目は変わらないが、一段階上がったのだ』

 段階があるのですか?魔獣さんはよくわからないですね。

『わ~い、俺、成長しちゃった。フフル様も成長する?』
『我はもう成長しない。最終段階まで上がっているのだ』

 最終段階?余計にわからなくなりましたが、とりあえずフフル様にも魔力をお流ししましょう。

 私はエディ様の制止も振り切りフフル様にも魔力を流しました。

「ダメだよ、アリス」

 エディ様が咄嗟に私の手を取りました。片手はエディ様、もう片手はフフル様の背中に当てている状態です。その瞬間、エディ様、フフル様が同時に白く光りました。

『おぉ!』
「うわぁ!」

 何が起きたかよくわからないのですが、私にも何かが流れ込んでくる感じがします。こんな体験が初めてで、私はどうしたらいいかわからず、でも魔力は流れていくのでした。


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