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「そうだ、お前が悪いのだ」
レオポール兄様は私を蔑んだ目で見ている。私に刃を向けている。
「お前がいなければ」
フランツ兄様もそう言って私に背を向けた。私は目を瞑った。レオポール兄様が私を刺すのならそれは仕方がないことのように思えた。私は2人の愛する妹のマリアンヌではないのだ。ずっと騙して、さもマリアンヌの代わりに2人の愛を受けてきた。
私がいなければこんなことにはならなかったのだ。
涙がこぼれ落ちた。この世界でマリアンヌとして過ごせて幸せだった。美少女でお金持ちで素敵な家族に囲まれて。私はみんなのことが大好きだった。でも・・・。
この世界の人間ではないのだ。
本当は別の世界の人間。元の世界では仕事もなく恋人もなくお金もなく友人もいない孤独な生活。やりたいこともなく、それを見つけることもできずにただ日々を過ごしてきた。自分の存在は無に等しい。いなくなっても誰も何も思わない、そんな価値のない人間。
私は泣きながら、心の中で何度も呟く。私は価値のない人間。価値のない・・・。
え?本当にそう?
私の中で何かが弾けた。
「私はマリアンヌです。マリアンヌ・サーキス」
前を向いてハッキリと答える。ひとしきり泣いたせいか涙は止まった。気がつけば、目の前にレオポール兄様もフランツ兄様もいない。いるのは悪魔だけ。
悪魔に惑わされてはいけない。そんな言葉が聞こえた気がする。
「お前のせいでスティラート公爵が死んだんだ、お前の料理を食べて」
「死んだのは悪魔、つまりあなたのせいでしょう。あなたが魔物にしたから。でも魔物になったのは、公爵本人のせいです。悪魔と取引なんかしたから。だから私のせいではありません」
悪魔の目を見てはっきり言った。私のせいではない。私に責任はない。
「な、なに?」
悪魔が狼狽し出した。明らかに動揺している。
「で、でも。リリア・マロウはどうだ」
「彼女と私と何の関係が?」
私はジロっと悪魔を見た。悪魔の赤い瞳が蠢いている。でも無視して話し続ける。
「彼女が殿下と結婚したいと言うのはわかりました。でも私を恨むのは筋違いでは?」
「お前はそもそもこの世界の人間ではないだろう。お前が女神の加護を受けたせいで・・・」
「女神の加護は関係ないでしょう。そもそもマリアンヌは殿下の婚約者候補でしたし。リリアは候補ではありませんでした」
「い、いや、お、お前のせいだ」
「だから、私のせいではないでしょう」
言い合っても平行線だ。でも悪魔がだんだん小さい子どものように見えてきた。
「お、お前が全部悪いんだ!女神の加護を受けてるから!女神が悪いんだ!」
なんだか訳がわからないことを言い出した。悪魔は私が悪いとしか言わない。聞いているうちにむかついてきた。こいつ、何言ってるの?
「いい加減にしなさい!」
頭にきた私は悪魔を思わず平手打ちにしてしまった。
「い、痛い・・・。ぶったな」
悪魔は頬を手で押さえて涙目だ。プフッ。悪魔のくせに叩かれて泣いてやがんの。弱っちいな。と、私は何故だか愉快になった。
「お前、女神の加護を受けた人間のくせに優しくないぞ」
「あんたが性悪だからでしょ。女神が優しいなんて決めつけないで」
「俺を性悪なんて決めつけるな」
悪魔と言い合っていても仕方ない。悪魔を消すにはどうしたらいいのだろう。元に戻すことはできるのだろうか。
「スティラート公爵が何したか知らないけど、もう本人は死んだなら契約は終了したんでしょ。もう悪魔の国に帰れば?」
悪魔の国なんてあるのか知らないが、もう話をしたくないのでとりあえず提案してみた。悪魔は相変わらず、お前が悪いとぶつぶつ言っている。
「わかった。では、こうしよう」
悪魔の赤い瞳が光った気がした。
「お前が元の世界に戻り、マリアンヌがここに戻る。そうしたら俺も手を引こう」
悪魔がニヤリ、と笑った。
レオポール兄様は私を蔑んだ目で見ている。私に刃を向けている。
「お前がいなければ」
フランツ兄様もそう言って私に背を向けた。私は目を瞑った。レオポール兄様が私を刺すのならそれは仕方がないことのように思えた。私は2人の愛する妹のマリアンヌではないのだ。ずっと騙して、さもマリアンヌの代わりに2人の愛を受けてきた。
私がいなければこんなことにはならなかったのだ。
涙がこぼれ落ちた。この世界でマリアンヌとして過ごせて幸せだった。美少女でお金持ちで素敵な家族に囲まれて。私はみんなのことが大好きだった。でも・・・。
この世界の人間ではないのだ。
本当は別の世界の人間。元の世界では仕事もなく恋人もなくお金もなく友人もいない孤独な生活。やりたいこともなく、それを見つけることもできずにただ日々を過ごしてきた。自分の存在は無に等しい。いなくなっても誰も何も思わない、そんな価値のない人間。
私は泣きながら、心の中で何度も呟く。私は価値のない人間。価値のない・・・。
え?本当にそう?
私の中で何かが弾けた。
「私はマリアンヌです。マリアンヌ・サーキス」
前を向いてハッキリと答える。ひとしきり泣いたせいか涙は止まった。気がつけば、目の前にレオポール兄様もフランツ兄様もいない。いるのは悪魔だけ。
悪魔に惑わされてはいけない。そんな言葉が聞こえた気がする。
「お前のせいでスティラート公爵が死んだんだ、お前の料理を食べて」
「死んだのは悪魔、つまりあなたのせいでしょう。あなたが魔物にしたから。でも魔物になったのは、公爵本人のせいです。悪魔と取引なんかしたから。だから私のせいではありません」
悪魔の目を見てはっきり言った。私のせいではない。私に責任はない。
「な、なに?」
悪魔が狼狽し出した。明らかに動揺している。
「で、でも。リリア・マロウはどうだ」
「彼女と私と何の関係が?」
私はジロっと悪魔を見た。悪魔の赤い瞳が蠢いている。でも無視して話し続ける。
「彼女が殿下と結婚したいと言うのはわかりました。でも私を恨むのは筋違いでは?」
「お前はそもそもこの世界の人間ではないだろう。お前が女神の加護を受けたせいで・・・」
「女神の加護は関係ないでしょう。そもそもマリアンヌは殿下の婚約者候補でしたし。リリアは候補ではありませんでした」
「い、いや、お、お前のせいだ」
「だから、私のせいではないでしょう」
言い合っても平行線だ。でも悪魔がだんだん小さい子どものように見えてきた。
「お、お前が全部悪いんだ!女神の加護を受けてるから!女神が悪いんだ!」
なんだか訳がわからないことを言い出した。悪魔は私が悪いとしか言わない。聞いているうちにむかついてきた。こいつ、何言ってるの?
「いい加減にしなさい!」
頭にきた私は悪魔を思わず平手打ちにしてしまった。
「い、痛い・・・。ぶったな」
悪魔は頬を手で押さえて涙目だ。プフッ。悪魔のくせに叩かれて泣いてやがんの。弱っちいな。と、私は何故だか愉快になった。
「お前、女神の加護を受けた人間のくせに優しくないぞ」
「あんたが性悪だからでしょ。女神が優しいなんて決めつけないで」
「俺を性悪なんて決めつけるな」
悪魔と言い合っていても仕方ない。悪魔を消すにはどうしたらいいのだろう。元に戻すことはできるのだろうか。
「スティラート公爵が何したか知らないけど、もう本人は死んだなら契約は終了したんでしょ。もう悪魔の国に帰れば?」
悪魔の国なんてあるのか知らないが、もう話をしたくないのでとりあえず提案してみた。悪魔は相変わらず、お前が悪いとぶつぶつ言っている。
「わかった。では、こうしよう」
悪魔の赤い瞳が光った気がした。
「お前が元の世界に戻り、マリアンヌがここに戻る。そうしたら俺も手を引こう」
悪魔がニヤリ、と笑った。
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