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「兄様!」
騎士団の群れの中に一際目立つイケメン。レオポール兄様を見つけた。
「お怪我はありませんか?」
「大丈夫、数は多かったけど大した奴らじゃなかったよ」
レオポール兄様は笑顔だった。確かに周りの騎士の人たちも笑顔で談笑している。
「牛丼、用意しますね」
作り置いていた牛丼はすでにお腹の中に入ったようなので、すぐに作りに向かう。
「マリ、走ったらダメだよ」
「はぁい」
フランツ兄様の注意に呑気に答え、私は大量の牛丼をコピーする。そして半熟卵とキムチを用意。
「うわぁ、これこれ」
「はぁ~、騎士になってよかった」
「討伐もうまくいったし、ギュウドンは美味しいし」
あちこちから安堵した声や感嘆の声が上がる。大した奴らではない、と言ってもやはり戦ってきたのだから、お疲れ様と言いたい。
「マリアンヌ嬢、相変わらず美味しいですね」
おにぎりを頬張っているのは魔法省のゲルリーだ。
「大量に送ってくださるので大変助かります」
モグモグしながらも次のおにぎりを手にしている。こうやって食べていくならすぐになくなるのは理解できた。
「実は陛下にもご報告することがございます」
陛下にご報告ならおにぎりを飲み込んだ後ですべきだろうし、そもそもおにぎりを手放すべきだと思う。だがゲルリーはおにぎりを両手に持ち、おにぎりを食べながら話しだす。とてもお行儀が悪い。しかしどうしてだか不快感を感じないし、誰も注意しない。
「実はですね。うわっ」
突然ゲルリーが大声を出した。驚いたように動きが止まる。全員が彼に注目をした。
「こ、これ。中身が違うんですか?」
片手に持ったおにぎりを見つめながら、ゲルリーが私に向かって言った。
「はい、今日は5種類あります」
中身はおかか、昆布、しゃけ、たらこ、梅干しである。1列ずつ並べて置いたが、特に誰にも聞かれなかった。食べるまで中身はわからないのがおにぎりの楽しいところだと思う。
「どっ、どうして・・・。どうして教えてくれなかったんですかっ!」
ゲルリーはこの世の終わりみたいに嘆き、全部平らげてやるとがっつき出した。
「ゲルリー、おにぎりはいいから報告を続けよ」
「は、はい」
ゲルリーはモグモグしながら、これは昆布だとつぶやいた。なぜこの横暴が許されるのかよくわからないのだが、誰もが彼の発言を静かに待っている。
「スティラート公爵と彼が集めて魅了の術を使われた元使用人たちが脱走しました」
え?彼らは確か魔法省の管轄の牢に入っていたはず。魔法で厳重に監視されて裁判を待つ身と聞いていた。
「それは一大事ではないか!」
「あいつらが逃げたから魔物が発生したのではないか」
「今すぐ包囲網を!」
部屋中が大騒ぎになった。が、ゲルリーは全く動じることもなくおにぎりを食べすすめている。
「何か秘策があるのか?」
聞かれてもゲルリーは答えない。ただひたすらおにぎりを静かに食べている。この落ち着きっぷり。きっと問題ないのだろう。私はそう思ったが。
「いや、特に何も」
え?それならやばいんじゃないの?落ち着いてていいの?
「でも魔力もないただの人間ですよ。大した問題はないでしょう」
いや、問題ありでしょう。犯罪に関わった人たちだよね。結構な凶悪犯だよ。私の感覚がおかしいのか。この世界はこれでいいのか。ゲルリーはおにぎりをまだまだ食べるつもりのようである。大丈夫なのだろうか。色々。
騎士団の群れの中に一際目立つイケメン。レオポール兄様を見つけた。
「お怪我はありませんか?」
「大丈夫、数は多かったけど大した奴らじゃなかったよ」
レオポール兄様は笑顔だった。確かに周りの騎士の人たちも笑顔で談笑している。
「牛丼、用意しますね」
作り置いていた牛丼はすでにお腹の中に入ったようなので、すぐに作りに向かう。
「マリ、走ったらダメだよ」
「はぁい」
フランツ兄様の注意に呑気に答え、私は大量の牛丼をコピーする。そして半熟卵とキムチを用意。
「うわぁ、これこれ」
「はぁ~、騎士になってよかった」
「討伐もうまくいったし、ギュウドンは美味しいし」
あちこちから安堵した声や感嘆の声が上がる。大した奴らではない、と言ってもやはり戦ってきたのだから、お疲れ様と言いたい。
「マリアンヌ嬢、相変わらず美味しいですね」
おにぎりを頬張っているのは魔法省のゲルリーだ。
「大量に送ってくださるので大変助かります」
モグモグしながらも次のおにぎりを手にしている。こうやって食べていくならすぐになくなるのは理解できた。
「実は陛下にもご報告することがございます」
陛下にご報告ならおにぎりを飲み込んだ後ですべきだろうし、そもそもおにぎりを手放すべきだと思う。だがゲルリーはおにぎりを両手に持ち、おにぎりを食べながら話しだす。とてもお行儀が悪い。しかしどうしてだか不快感を感じないし、誰も注意しない。
「実はですね。うわっ」
突然ゲルリーが大声を出した。驚いたように動きが止まる。全員が彼に注目をした。
「こ、これ。中身が違うんですか?」
片手に持ったおにぎりを見つめながら、ゲルリーが私に向かって言った。
「はい、今日は5種類あります」
中身はおかか、昆布、しゃけ、たらこ、梅干しである。1列ずつ並べて置いたが、特に誰にも聞かれなかった。食べるまで中身はわからないのがおにぎりの楽しいところだと思う。
「どっ、どうして・・・。どうして教えてくれなかったんですかっ!」
ゲルリーはこの世の終わりみたいに嘆き、全部平らげてやるとがっつき出した。
「ゲルリー、おにぎりはいいから報告を続けよ」
「は、はい」
ゲルリーはモグモグしながら、これは昆布だとつぶやいた。なぜこの横暴が許されるのかよくわからないのだが、誰もが彼の発言を静かに待っている。
「スティラート公爵と彼が集めて魅了の術を使われた元使用人たちが脱走しました」
え?彼らは確か魔法省の管轄の牢に入っていたはず。魔法で厳重に監視されて裁判を待つ身と聞いていた。
「それは一大事ではないか!」
「あいつらが逃げたから魔物が発生したのではないか」
「今すぐ包囲網を!」
部屋中が大騒ぎになった。が、ゲルリーは全く動じることもなくおにぎりを食べすすめている。
「何か秘策があるのか?」
聞かれてもゲルリーは答えない。ただひたすらおにぎりを静かに食べている。この落ち着きっぷり。きっと問題ないのだろう。私はそう思ったが。
「いや、特に何も」
え?それならやばいんじゃないの?落ち着いてていいの?
「でも魔力もないただの人間ですよ。大した問題はないでしょう」
いや、問題ありでしょう。犯罪に関わった人たちだよね。結構な凶悪犯だよ。私の感覚がおかしいのか。この世界はこれでいいのか。ゲルリーはおにぎりをまだまだ食べるつもりのようである。大丈夫なのだろうか。色々。
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