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しおりを挟む呑気にサンドイッチを楽しんでいたのだが、魔法省の人たちの反応がおかしなことになってきた。何かうなづき合ったり、手をじっと見つめたりする人たちが増えてきたのだ。
「いい加減にして!」
「そうだ!厳重に抗議するぞ!」
大きな声が聞こえ、見ると鑑定の間からジュリアとスティラート公爵が飛び出してきた。その後をゆっくりと出てきたのはゲルリーである。
そうだ、うっかり忘れていたが3人はまだ鑑定の間にいたのだった。何をしていたか知らないが、ジュリアはものすごく怒っているように見える。
「どうして聖女の私が西の塔で暮らさなくちゃいけないの?」
「そうだ、しかも日の出とともに起きて祈りを捧げて質素に暮らすなんて。聖女を馬鹿にしているのか?」
ゲルリーが聖女の生活を説明し、『聖女様』は納得いかずに怒りまくっているようである。娘が実は自分の母親の生まれ変わりで、しかも生前好き勝手にやらかしまくったおかげで聖女となったと知ったらどうなるのだろうか。聖女のカラクリを知らないので喜んでいたけど、知ってしまった私としては喜べるはずはない。
だが聖女は必要なのだろう。現に結界は剥がれたまま。今すぐにでもどうにかしてもらわないと、国がどうなるかわからない。
「昔から聖女の暮らしは変わりません」
ゲルリーはキッパリと言う。
「聖女は国に安寧をもたらすために祈りを捧げる存在なのです」
ジュリアを少しずつ魔法省の女性たちが近づいていく。
「ご安心ください」
「我々が聖女様を正しく導いて差し上げます」
「我らは一心同体」
じわりじわり、と彼女たちはジュリアに近づいていく。魔法省の女性たちは尋常ではない目つきでジュリアを見ている。狙った獲物は逃がさない、と言うようなハンターの目つきにも見える。
「い、いやよ。私。聖女なんて」
その言葉に全員の動きが止まった。
「聖女がいや?」
「まさか、そんなことをおっしゃるわけがございません」
「聞き間違えですわね」
魔法省の女性たちはうなづき合い、そしてまたジュリアに近づいていく。
「大丈夫です」
「怖くありませんわ」
「お任せください」
「いやって言ってるでしょ!」
叫ぶジュリアを魔法省の女性たちが押さえつけた。
「大丈夫です」
「住めば都と言いますから」
「きちんとお世話いたしますから」
魔法省の人たちの声などジュリアは聞こえていないだろう。しかし、大勢に囲まれてジュリアも動けなくなっていた。
「娘に何をするんだ!」
スティラート公爵は大声で叫んで抗議をしたが、誰も聞いてはいない。
「こうなったら、容赦しない!」
そう言ってスティラート公爵は胸元から何かを取り出した。大きな宝石のついたペンダントのようである。宝石は濃い紫色だが黒にも見えた。それを大きく上に掲げた。
「我の言うことを聞け!」
すると宝石が光り出した。
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