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     そこにバアァァン、と大きな音を立てて扉が開いた。全員が力なく顔を上げて扉を見た。

「わかりましたぞ!」

 入ってきたのは魔法省の長官、ゲルリーである。

「スティラート公爵は悪魔の術を使ったと思われます」

 悪魔の術、と聞き全員が身を乗り出した。

「祖父の蔵書の中からこの術について見つけました。生贄になる人間に下級悪魔の魂を入れるのです。生贄になった人間は顔つきや性格も変わります。おそらく集められた使用人は下級悪魔を入れられたのでしょう」

 陛下の顔が歪む。

「なんて恐ろしい・・・」
「そんな術を使うなんて」
「公爵は悪魔そのものだ」

 室内がざわめきだした。

「おそらく悪魔の力が強く結界が破れたのでしょう。彼らは人間を意のままに操ることができるのです」

「なんと!」

 陛下は苦悶の表情のまま立ち上がった。年配の大臣の何人かは震えが止まらず倒れそうになっている。

「どうしたらいいのだ?」

    陛下の問いにゲルリーは胸を張る。

「祖父の蔵書の中に答えがありました。聖なる力を得て立ち向かうのです」
「聖なる力?」
「はい!」

    ゲルリーは元気よく答えた。彼の家は先祖代々魔法省の幹部を務めている。魔法使いとして優秀な家系ではあるが、どこか現実離れをしている。

「聖なる力とは何なのか?」
「分かりません!」

   案の定、ゲルリーは場をわきまえずに答えた。陛下のこめかみに怒りのマークが見えた気がする。

「例えば、聖女の力とか?」

   ゲルリーは明るくハキハキと答える。聖女と聞いて、室内はざわめき始めた。

    父親が悪魔の術を使ったというのに、娘のジュリアは聖女なのか?父親の罪を娘がどうにかするというのか?

「でも今は聖女はいませんしね」

   あっけらかんとした様子でゲルリーは答えた。ハハハ、と笑いながら前髪をかきあげている。

「知らないのか?聖女が現れたことを」
「え?そうなんですか?で、誰が聖女ですって?」

 キョトンとした顔でゲルリーが言う。彼は知らなかったようだ。

「ジュリア嬢が聖女として覚醒したそうだ」
「あ、そうですか。それならいいじゃないですか」

 報告を聞いてもゲルリーは表情を変えることはな
い。

「聖女は国の保護とするのだろう。あのジュリア嬢を保護するなど、国が崩壊する」

 大臣の誰かがそんなことを言う。国民の1人でもあるジュリアに対してその言い方はよくない。問題発言と取られても仕方がないのだが、やはり誰もそんなことは言わない。それだけジュリアの心証が悪いのだ。

「皆様、聖女について知識はどのくらいあるのですか」

 ゲイリーが冷ややかな目で見ている。どこか爬虫類の目を思い出させる目つきで、彼は室内を見渡した。

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