33 / 220
33
しおりを挟む
「うまいっ」
陛下が一口頬張るとすぐに叫んだ。国王陛下としてその言動は品がないと思うが、ユエンは正直でよろしいと思った。素の彼が実は品がないことは、ユエンは長い付き合いで知っていた。王族として生まれた彼は人目がある時は取り繕った言動であるが、いざ素になった時は思い切り下品になるのだ。日頃の反動と思われる。
「こんなうまい料理、今まで食べたことがないぞ」
「ですよねぇ。だから騎士団は忠誠を誓いましたよ」
料理人に忠誠を誓う騎士って何だ?とユエンは冷静に考えたが、マリアンヌの料理だと思えばそれは致し方なかった。自分も宰相として忠誠を誓おうかと思ったくらいである。
「やはり、マリアンヌ嬢はアルバートに」
その話が来たか、とユエンは思った。どう考えても国内ではマリアンヌ以上の令嬢はいない。父親としては複雑な思いだが、宰相として客観的に考えたら王子の婚約者としてマリアンヌは最適である。
「結界についてはもうそろそろ何とかなるでしょう。魔道士たちが力を溜めてきてますからね」
「結界が張られたら、アルバートとのことも前向きに動いてもらいたい」
王族の一員となれば、色々と大変であろう。幸いなことに陛下も皇后陛下もいい人間であるし、マリアンヌも幼い頃からお会いしている。極端な嫌がらせなどもされないだろう。その点では安心している。
「しかし、マリアンヌ嬢。幼い頃から見ていましたが、あの子が来てくれるのなら俺も頑張らないとですね」
ドミニクがニコニコしながらエビフライを頬張っている。ナイフで一口大に切らずにフォークで刺して丸ごとかぶりついていた。マナー違反だが、それが正しい食べ方のような気がしてくる。
「頑張る?」
「そうですよ。継承権を放棄するつもりですが、アルバートが立派になるまで放棄しないほうがいいのでは?」
「え?」
「アルバートが国王に即位して本当に大丈夫ですか?頼りないことこの上ない。あれではマリアンヌ嬢を守ることなどできないではないですか。マリアンヌ嬢を守れないような国王が国を守れますか?」
「ふむ、確かにそうだな」
「でしょう?アルバートは甘いですからね。敷かれたレールをただ乗っかれば済むと思っている。それじゃあダメです。簡単に国王になれると思ってるようじゃ。試練を与えないといけません」
「なるほど」
「俺が王位を狙っていると思えばアルバートもやる気を出してくるでしょう。切磋琢磨して国王の座をもぎ取るのです。それくらいの根性見せないと、マリアンヌは俺が貰いますよ」
「何?」
「そうです。よく考えたら俺とマリアンヌは12歳違いです。そんな歳の差、大したことありません。腑抜けなアルバートより、俺の方がふさわしいです。ね、お義父さん」
「お義父さんじゃありません、お二人とも落ち着いてください」
「いや、ドミニク。なかなか名案と思う」
「そうでしょう?陛下」
2人は笑顔でエビフライを頬張っていた。その笑顔は異母兄弟ではあるが、よく似ていた。
「落ち着いていますよ」
「ああ、これ以上ないくらい落ち着いている」
2人がユエンに笑顔を向けた。
「いいえ、お二人が食べているのは私のエビフライです」
ユエンは顔中が痛くなるくらいに力を込めて睨みつけた。人のエビフライを食べるとは万死に値する。不敬罪と言われてもいい。そのくらいの勢いでユエンは2人を睨みつけていた。
陛下が一口頬張るとすぐに叫んだ。国王陛下としてその言動は品がないと思うが、ユエンは正直でよろしいと思った。素の彼が実は品がないことは、ユエンは長い付き合いで知っていた。王族として生まれた彼は人目がある時は取り繕った言動であるが、いざ素になった時は思い切り下品になるのだ。日頃の反動と思われる。
「こんなうまい料理、今まで食べたことがないぞ」
「ですよねぇ。だから騎士団は忠誠を誓いましたよ」
料理人に忠誠を誓う騎士って何だ?とユエンは冷静に考えたが、マリアンヌの料理だと思えばそれは致し方なかった。自分も宰相として忠誠を誓おうかと思ったくらいである。
「やはり、マリアンヌ嬢はアルバートに」
その話が来たか、とユエンは思った。どう考えても国内ではマリアンヌ以上の令嬢はいない。父親としては複雑な思いだが、宰相として客観的に考えたら王子の婚約者としてマリアンヌは最適である。
「結界についてはもうそろそろ何とかなるでしょう。魔道士たちが力を溜めてきてますからね」
「結界が張られたら、アルバートとのことも前向きに動いてもらいたい」
王族の一員となれば、色々と大変であろう。幸いなことに陛下も皇后陛下もいい人間であるし、マリアンヌも幼い頃からお会いしている。極端な嫌がらせなどもされないだろう。その点では安心している。
「しかし、マリアンヌ嬢。幼い頃から見ていましたが、あの子が来てくれるのなら俺も頑張らないとですね」
ドミニクがニコニコしながらエビフライを頬張っている。ナイフで一口大に切らずにフォークで刺して丸ごとかぶりついていた。マナー違反だが、それが正しい食べ方のような気がしてくる。
「頑張る?」
「そうですよ。継承権を放棄するつもりですが、アルバートが立派になるまで放棄しないほうがいいのでは?」
「え?」
「アルバートが国王に即位して本当に大丈夫ですか?頼りないことこの上ない。あれではマリアンヌ嬢を守ることなどできないではないですか。マリアンヌ嬢を守れないような国王が国を守れますか?」
「ふむ、確かにそうだな」
「でしょう?アルバートは甘いですからね。敷かれたレールをただ乗っかれば済むと思っている。それじゃあダメです。簡単に国王になれると思ってるようじゃ。試練を与えないといけません」
「なるほど」
「俺が王位を狙っていると思えばアルバートもやる気を出してくるでしょう。切磋琢磨して国王の座をもぎ取るのです。それくらいの根性見せないと、マリアンヌは俺が貰いますよ」
「何?」
「そうです。よく考えたら俺とマリアンヌは12歳違いです。そんな歳の差、大したことありません。腑抜けなアルバートより、俺の方がふさわしいです。ね、お義父さん」
「お義父さんじゃありません、お二人とも落ち着いてください」
「いや、ドミニク。なかなか名案と思う」
「そうでしょう?陛下」
2人は笑顔でエビフライを頬張っていた。その笑顔は異母兄弟ではあるが、よく似ていた。
「落ち着いていますよ」
「ああ、これ以上ないくらい落ち着いている」
2人がユエンに笑顔を向けた。
「いいえ、お二人が食べているのは私のエビフライです」
ユエンは顔中が痛くなるくらいに力を込めて睨みつけた。人のエビフライを食べるとは万死に値する。不敬罪と言われてもいい。そのくらいの勢いでユエンは2人を睨みつけていた。
55
お気に入りに追加
831
あなたにおすすめの小説
転生少女の異世界のんびり生活 ~飯屋の娘は、おいしいごはんを食べてほしい~
明里 和樹
ファンタジー
日本人として生きた記憶を持つ、とあるご飯屋さんの娘デリシャ。この中世ヨーロッパ風ファンタジーな異世界で、なんとかおいしいごはんを作ろうとがんばる、そんな彼女のほのぼのとした日常のお話。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
加工を極めし転生者、チート化した幼女たちとの自由気ままな冒険ライフ
犬社護
ファンタジー
交通事故で不慮の死を遂げてしまった僕-リョウトは、死後の世界で女神と出会い、異世界へ転生されることになった。事前に転生先の世界観について詳しく教えられ、その場でスキルやギフトを練習しても構わないと言われたので、僕は自分に与えられるギフトだけを極めるまで練習を重ねた。女神の目的は不明だけど、僕は全てを納得した上で、フランベル王国王都ベルンシュナイルに住む貴族の名門ヒライデン伯爵家の次男として転生すると、とある理由で魔法を一つも習得できないせいで、15年間軟禁生活を強いられ、15歳の誕生日に両親から追放処分を受けてしまう。ようやく自由を手に入れたけど、初日から幽霊に憑かれた幼女ルティナ、2日目には幽霊になってしまった幼女リノアと出会い、2人を仲間にしたことで、僕は様々な選択を迫られることになる。そしてその結果、子供たちが意図せず、どんどんチート化してしまう。
僕の夢は、自由気ままに世界中を冒険すること…なんだけど、いつの間にかチートな子供たちが主体となって、冒険が進んでいく。
僕の夢……どこいった?
【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~
Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。
そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。
「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」
※ご都合主義、ふんわり設定です
※小説家になろう様にも掲載しています
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる