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騎士の人たちを客用のダイニングに案内すると、私は豚汁と牛丼をよそっていった。マーサとメアリはエイアール家の人のお相手をしているので、私がやるしかない。気分は給食のオバチャンである。
「うんま~」
「なんだ、これ。こんなの食べたことないぞ」
「すげー、贅沢」
そんな声があちこちから聞こえる。あぁ、そうだ。牛丼はみんなの味方。半熟卵をトッピングしても美味しいよね。彼らを見ていると、食欲が凄まじい。騎士という仕事だし体力勝負。しかも彼らはまだ若い。おそらく高校生くらいの年齢かと思われる。そりゃ、食べる年頃だ。
お代わりするならぜひ半熟卵を。私は一旦キッチンに行くと半熟卵を手に戻ってきた。一応用意していたのだ。戻ってきた私は仰天した。騎士の人たちが全員跪いて剣を立てているのである。
騎士の礼。
この国の騎士が忠誠を誓う相手に対して行う儀式だ。騎士に任命された際、彼らは国王に対してこの儀式を行う。マリアンヌの記憶ではレオポール兄様が騎士に任命されたときに行っていた。大変厳かな儀式で、見ていたマリアンヌは感動のあまり泣き出した。それはそれは意味の深い儀式なのである。それは分かったのだが、何に対して忠誠を誓っているのだ?
「マリアンヌ嬢、我々は忠誠を誓う。騎士の名において」
一番前にいた男性が言うと、後ろに控えた騎士たちが言う。
「騎士の名において!」
わ、私に?私に忠誠?なんで?驚きのあまり声の出なくなった私にお兄様が言った。
「加護を受けたリリンには誰でも忠誠を誓う。それによく見てごらん」
へ?私は目の前の男性をよく見た。マリアンヌの記憶が流れ込んできて、私は反射的に叫んだ。
「ドミニク様!」
騎士団を率いる団長であり、現国王陛下の弟君。気がつけば、体はマリアンヌのせいか俊敏に動いて公爵令嬢らしくお辞儀をしていた。カーテシーというものであるはずだが、着ている服はシンプルなワンピースなのでサマにならないと思われる。が、今はそんなこと気にしてはいられない。何もしなければ不敬罪となってしまう。
でも庶民の味方の牛丼を王族に出しちゃったけど。こんな下賤なもの食べられぬ!とか言わないよね。あぁ、でも確かバクバクと頬張っていた気がする。パニックになっているせいか、訳のわからないことばかり頭に浮かぶ。
「マリアンヌ嬢、お顔を見せて」
ん?何かよからぬ雰囲気?おずおずと顔を上げると、目の前にはドミニク様の端正なお顔。またもやイケメンが現れた。ドミニク様は爽やかな笑顔で私を見ている。
「大きくなったねぇ。俺がオムツを変えてあげたこと忘れちゃった?」
は?王族にオムツを変えてもらった?そんな訳ないでしょ。事実だとしても覚えてる訳ない。
「ドミニク様、そんなことしていませんよね。リリンに嘘を言うのはやめてください」
お兄様の声に、やっぱりと心の中で呟く。
「ふふっ。でもマリアンヌ嬢が小さいときはよく抱っこしてあげたよ。俺だとぐずっててもすぐ泣き止んだよね」
「そんなことないですよっ」
「添い寝だってしてあげたよ」
「してませんよっ」
2人のやりとりを聞いていたら、仲の良さが伝わってきた。ドミニク様は王弟ではあるが、陛下とはお母様が違う。先王までは側妃を持つのが慣わしであり、ドミニク様と陛下は15以上歳が違うのだ。陛下とお父様はご学友という間柄でもあり、レオポール兄様とドミニク様は兄弟のように育った。今は騎士団の団長と副団長という関係である。
そんな2人の後ろには騎士の人たち。私は声をあげた。
「お代わり、いかがですか?」
うぉぉぉ~という雄叫びが響いた。ドミニク様もお兄様も無視だ。今はお代わりの方が重大なのだ。この世界、なんだかおかしいなと思うが考えても仕方ない。
「うんま~」
「なんだ、これ。こんなの食べたことないぞ」
「すげー、贅沢」
そんな声があちこちから聞こえる。あぁ、そうだ。牛丼はみんなの味方。半熟卵をトッピングしても美味しいよね。彼らを見ていると、食欲が凄まじい。騎士という仕事だし体力勝負。しかも彼らはまだ若い。おそらく高校生くらいの年齢かと思われる。そりゃ、食べる年頃だ。
お代わりするならぜひ半熟卵を。私は一旦キッチンに行くと半熟卵を手に戻ってきた。一応用意していたのだ。戻ってきた私は仰天した。騎士の人たちが全員跪いて剣を立てているのである。
騎士の礼。
この国の騎士が忠誠を誓う相手に対して行う儀式だ。騎士に任命された際、彼らは国王に対してこの儀式を行う。マリアンヌの記憶ではレオポール兄様が騎士に任命されたときに行っていた。大変厳かな儀式で、見ていたマリアンヌは感動のあまり泣き出した。それはそれは意味の深い儀式なのである。それは分かったのだが、何に対して忠誠を誓っているのだ?
「マリアンヌ嬢、我々は忠誠を誓う。騎士の名において」
一番前にいた男性が言うと、後ろに控えた騎士たちが言う。
「騎士の名において!」
わ、私に?私に忠誠?なんで?驚きのあまり声の出なくなった私にお兄様が言った。
「加護を受けたリリンには誰でも忠誠を誓う。それによく見てごらん」
へ?私は目の前の男性をよく見た。マリアンヌの記憶が流れ込んできて、私は反射的に叫んだ。
「ドミニク様!」
騎士団を率いる団長であり、現国王陛下の弟君。気がつけば、体はマリアンヌのせいか俊敏に動いて公爵令嬢らしくお辞儀をしていた。カーテシーというものであるはずだが、着ている服はシンプルなワンピースなのでサマにならないと思われる。が、今はそんなこと気にしてはいられない。何もしなければ不敬罪となってしまう。
でも庶民の味方の牛丼を王族に出しちゃったけど。こんな下賤なもの食べられぬ!とか言わないよね。あぁ、でも確かバクバクと頬張っていた気がする。パニックになっているせいか、訳のわからないことばかり頭に浮かぶ。
「マリアンヌ嬢、お顔を見せて」
ん?何かよからぬ雰囲気?おずおずと顔を上げると、目の前にはドミニク様の端正なお顔。またもやイケメンが現れた。ドミニク様は爽やかな笑顔で私を見ている。
「大きくなったねぇ。俺がオムツを変えてあげたこと忘れちゃった?」
は?王族にオムツを変えてもらった?そんな訳ないでしょ。事実だとしても覚えてる訳ない。
「ドミニク様、そんなことしていませんよね。リリンに嘘を言うのはやめてください」
お兄様の声に、やっぱりと心の中で呟く。
「ふふっ。でもマリアンヌ嬢が小さいときはよく抱っこしてあげたよ。俺だとぐずっててもすぐ泣き止んだよね」
「そんなことないですよっ」
「添い寝だってしてあげたよ」
「してませんよっ」
2人のやりとりを聞いていたら、仲の良さが伝わってきた。ドミニク様は王弟ではあるが、陛下とはお母様が違う。先王までは側妃を持つのが慣わしであり、ドミニク様と陛下は15以上歳が違うのだ。陛下とお父様はご学友という間柄でもあり、レオポール兄様とドミニク様は兄弟のように育った。今は騎士団の団長と副団長という関係である。
そんな2人の後ろには騎士の人たち。私は声をあげた。
「お代わり、いかがですか?」
うぉぉぉ~という雄叫びが響いた。ドミニク様もお兄様も無視だ。今はお代わりの方が重大なのだ。この世界、なんだかおかしいなと思うが考えても仕方ない。
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