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しおりを挟むようやくお父様、お兄様が出かける準備に入った。私はキッチンに入り、作っておいたサンドイッチ(シャンドウイッチ、チャンドルリッチ、サン・ドーイチ もうどうでもいい)を取り出した。それからパウンドケーキとクッキーを包む。
馬にブラッシングをかけていた、御者のフレデリックとウィリアムにケーキとクッキーを渡す。
「え?今朝は朝食も頂きましたのに?」
「私どもにまでもったいない。」
2人は恐縮している。しかし、お父様とお兄様の命を預かってくれているのだ。お腹が空いて油断して事故を起こした、なんてことになったら困る。
「今日は特別な仕事を頼むから」
笑いながら私は馬にも人参を与えた。馬も喜んで食べている。
一度お城に戻ったら、2人がエイアール家の人を乗せてこちらに戻ってくる事になっている。エイアール家では馬車も馬もなくなってしまったのだ。荷物もあまりないと言うから、本当に命からがら避難したのだろう。
そんな人たちに対して、と思うとスティラート家の人々は酷すぎる。思いやりの気持ちはないのか。
怒り出したらキリがないので、私は気持ちを切り替える。料理について考えれば、スティラート家のこともジュリアのことも一時忘れられるのだ。
人数が増えるが、料理をすることに対しては問題ないように思う。食材も大量にあるし、作りたい気持ちが湧いてくる。それにどういうことかよくわからないのだが、大量に作っているのにあまり時間が進んでいないように思える。
もしかしたらだが、キッチンの中は外に比べて時間のたち方が違うのではないだろうか。この世界には魔法がある。食材や料理があっという間に違う場所に移動したり、バスケットや袋は無限大に物が入るし時間も経過しない。そんなことができるのだから、この部屋の中だけ外と違う時間の進みかたになってもおかしくない。
考えてもわからないし、わかったとしてもどうでもいい。とにかく今は料理を大量に作り、この世界の人を救おう。
「お嬢様、この御恩は忘れません」
涙ぐむベルナルト様に私はサンドイッチを手渡した。
「これを皆様で召し上がってください」
ベルナルト様の目から涙が溢れ出す。
「こんなに?母や弟だけでなく、使用人の分まで・・・?」
「使用人でも一人一人の人間です。雇用する側には彼らにきちんと働いてもらうように生活を整える義務があります」
つい調子に乗ってそんなことを言っていたら、周りから拍手が起こった。お父様もお兄様も大きくうなづいている。
「マリアンヌ様、万歳!」
「マリアンヌ様は女神様だ!」
大袈裟な。私はとにかく早く出かけるよう促した。全員やることが大量にあるはずである。ここで遊んでいる暇はないのだ。
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