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20話~39話
22:「弁当」 秋の大運動会
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「紅組、白組の応援団のみなさんお疲れさまでした。これよりお昼となります。うがいと手洗いをしてからご飯を食べて下さい。次の競技は玉入れです。出場する選手は午後十二時五十分になかよし門に集合してください」
「あー・・・父兄の皆様、体育館は開放してありますのでお昼ご飯の場としてお使いください。なお、一階の教室は児童用に開放していますので父兄のご利用はお控えください」
放送係の後、先生からの放送があった。
今年はどこで食べよう・・・、なんとなく去年と同じ教室、なんとなく去年と同じ場所に座っていた。そして周りには、なんとなく見覚えのある姿。
「俺の場所空いてる?」
上級生だ。学校の前にあるコンビニの弁当とジュースを持っている。みんな少しずつ詰めると一人分の場所が出来た。
「あれ? 去年も見た奴ばかりだな。じゃ、今年も弁当格付けだな。『一斉のせ』で弁当の蓋を開ける事」
上級生がニンマリしている横で、お弁当の蓋と格闘している二年生がいる。
「では・・・、一斉のせ」
どよめきが起きると、教室中から視線が集まっていた。
「格付けの前に、お母さんお父さんが弁当を作った人、手を上げて下さい」
元気よく手を上げる子、恐る恐る手を上げる子・・・、
「やっぱりなァ。その弁当、おまえの手作りだろ」
上級生が、僕の弁当を指さしている。
「形の良いおにぎり、完璧な焼き色の卵焼き。おまえの料理の腕を物語っている。でも、ゴマを目にした蛸さんウインナー、何を考えて作ったの?」
「え・・・、いや、その、えーっと・・・去年優勝したからその・・・、今年もお・・」
「審査副委員長は、五年生ね」
みんな、拍手している・・・・。
「では、端から審査します。三年生のそのお弁当、不味そうだから最後。となりの一年生のお弁当からいきます」
しばらくの沈黙、張り詰める空気。その横で三年生が泣いている。
「ご飯六点、おかず三点、盛り付け四点、合計十三点。ご飯の粒が割れていて艶がないのは、研ぐ時に力を入れ過ぎているけど、不十分だから」
「次の五年生は、一年生と姉弟だね。そのおかずは真心スーパーの総菜、『とっても美味しい拘り男爵イモのポテトサラダ』と『みんなニコニコ究極デリシャスハンバーグ』を詰めているだけだね」
五年生の姉は六年生の目利きに驚き。一年生の弟は真実に驚いていた。
「次は、六年生のお弁当、ご飯二点、おかず二点、盛り付け二点・・・
既に弁当の主は笑っている。
合計六点。コンビニトーサンの『ガテンも合点、ギガ盛とんかつ唐揚弁当』を弁当箱に詰め替えただけ。ご飯に付いている漬物の色でもバレバレだね」
六年生の目利きの前にみんな笑うしかなかった。共働きやシングルで運動会に父兄が来られない児童の集まりだから。母さんが朝までチャットしていて弁当代が貰えてラッキーって言っていた四年生もいた。
「忘れていました。三年生のお弁当は、ご飯三点、おかず二点、盛り付け二点、がんばり十点・・・
教室中の視線が集まった。
合計十七点。ご飯の研ぎ方も水の量もダメ。おかずのミニトマトは良いとしてもレタスは細かすぎ、卵焼きは黒く焦げているのに中は半生。盛り付けと言うより入れているだけ。だけど、去年はコンビニ弁当だったよな。お前の母さんよく頑張ったよ。だからプラス十点」
三年生は泣きながら頷いている。
「今年の優勝は、三年生のお弁当です」
みんな、拍手している。
みんなお弁当を食べ終わると、それぞれの場所に戻って行った。
「あの・・・、なんで母さんの手作りと分かったんですか?」
あれだけ不味そうだと、とうちゃんかもしれない。うちは作ってくれないけど。
「校門近くにいた時に、作業着姿のおばさんに頼まれたんだ。それが、あの三年生のお弁当だったんだよ。そして、預かった時に初めて知ったよ。お弁当って温かいんだ」
「あー・・・父兄の皆様、体育館は開放してありますのでお昼ご飯の場としてお使いください。なお、一階の教室は児童用に開放していますので父兄のご利用はお控えください」
放送係の後、先生からの放送があった。
今年はどこで食べよう・・・、なんとなく去年と同じ教室、なんとなく去年と同じ場所に座っていた。そして周りには、なんとなく見覚えのある姿。
「俺の場所空いてる?」
上級生だ。学校の前にあるコンビニの弁当とジュースを持っている。みんな少しずつ詰めると一人分の場所が出来た。
「あれ? 去年も見た奴ばかりだな。じゃ、今年も弁当格付けだな。『一斉のせ』で弁当の蓋を開ける事」
上級生がニンマリしている横で、お弁当の蓋と格闘している二年生がいる。
「では・・・、一斉のせ」
どよめきが起きると、教室中から視線が集まっていた。
「格付けの前に、お母さんお父さんが弁当を作った人、手を上げて下さい」
元気よく手を上げる子、恐る恐る手を上げる子・・・、
「やっぱりなァ。その弁当、おまえの手作りだろ」
上級生が、僕の弁当を指さしている。
「形の良いおにぎり、完璧な焼き色の卵焼き。おまえの料理の腕を物語っている。でも、ゴマを目にした蛸さんウインナー、何を考えて作ったの?」
「え・・・、いや、その、えーっと・・・去年優勝したからその・・・、今年もお・・」
「審査副委員長は、五年生ね」
みんな、拍手している・・・・。
「では、端から審査します。三年生のそのお弁当、不味そうだから最後。となりの一年生のお弁当からいきます」
しばらくの沈黙、張り詰める空気。その横で三年生が泣いている。
「ご飯六点、おかず三点、盛り付け四点、合計十三点。ご飯の粒が割れていて艶がないのは、研ぐ時に力を入れ過ぎているけど、不十分だから」
「次の五年生は、一年生と姉弟だね。そのおかずは真心スーパーの総菜、『とっても美味しい拘り男爵イモのポテトサラダ』と『みんなニコニコ究極デリシャスハンバーグ』を詰めているだけだね」
五年生の姉は六年生の目利きに驚き。一年生の弟は真実に驚いていた。
「次は、六年生のお弁当、ご飯二点、おかず二点、盛り付け二点・・・
既に弁当の主は笑っている。
合計六点。コンビニトーサンの『ガテンも合点、ギガ盛とんかつ唐揚弁当』を弁当箱に詰め替えただけ。ご飯に付いている漬物の色でもバレバレだね」
六年生の目利きの前にみんな笑うしかなかった。共働きやシングルで運動会に父兄が来られない児童の集まりだから。母さんが朝までチャットしていて弁当代が貰えてラッキーって言っていた四年生もいた。
「忘れていました。三年生のお弁当は、ご飯三点、おかず二点、盛り付け二点、がんばり十点・・・
教室中の視線が集まった。
合計十七点。ご飯の研ぎ方も水の量もダメ。おかずのミニトマトは良いとしてもレタスは細かすぎ、卵焼きは黒く焦げているのに中は半生。盛り付けと言うより入れているだけ。だけど、去年はコンビニ弁当だったよな。お前の母さんよく頑張ったよ。だからプラス十点」
三年生は泣きながら頷いている。
「今年の優勝は、三年生のお弁当です」
みんな、拍手している。
みんなお弁当を食べ終わると、それぞれの場所に戻って行った。
「あの・・・、なんで母さんの手作りと分かったんですか?」
あれだけ不味そうだと、とうちゃんかもしれない。うちは作ってくれないけど。
「校門近くにいた時に、作業着姿のおばさんに頼まれたんだ。それが、あの三年生のお弁当だったんだよ。そして、預かった時に初めて知ったよ。お弁当って温かいんだ」
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